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JOURNAL / JAPAN

農家との協力体制で育まれたオンリーワンの味 ソース

[埼玉]未来に届けたい日本の食材 #37

2024.02.08

text by Michiko Watanabe / photographs by Daisuke Nakajima

変わりゆく時代の中で、変わることなく次世代へ伝えたい日本の食材があります。手間を惜しまず、実直に向き合う生産者の手から生まれた個性豊かな食材を、学校法人 服部学園 服部栄養専門学校理事長・校長、服部幸應さんが案内します。

連載:未来に届けたい日本の食材

荒川と利根川に挟まれた埼玉県北部は肥沃な農業地帯。昔から無農薬有機栽培で野菜を作る農家が多いのが特徴です。この地で生まれたヘルスコンシャスなソースが、「タカハシソース」のカントリーハーヴェスト。特別栽培の野菜果実で誠実にソースを作る3代目高橋亮人社長を訪ねました。

「農家との協力体制なしでは、うちの味づくりは不可能です」と高橋亮人社長。

祖父の代は商店街の米屋でした。昔の米屋というのは、醤油や味噌、ソースも扱っていた。どこの地方も同じですが、調味料も地元メーカーのものが中心でした。親戚がソース屋をやっていることもあって、店の傍らでソース作りを始めたのが最初です。2代目の父・博志が後を継いだ 1970 年代は、合成甘味料全盛の時代でした。ところが、添加物の発ガン性が社会問題に。使用禁止になったため、製品回収にまで発展しました。当時、うちも痛い思いをしたんですね。

一方で、有吉佐和子の『複合汚染』や生協運動の影響で、消費者に環境汚染や健康への関心が一段と高まった時代でもありました。そこで父は、カラメルや添加物を一切使わない「純正ソース」を苦心の末作り出すのですが、自然の色ゆえ、通常のソースのように黒くない。また価格が高いこともあって、まったく売れなかった。それでもめげることはなかったようで、無農薬、有機栽培の農家の人たちの集会にたびたび顔を出し、勉強を重ね、そこでの出会いから、原材料の供給源を徐々に広げていきます。そして、ちょうど 30 年前から発売を開始したのが「カントリーハーヴェスト」です。

「カントリーハーヴェスト」の原材料は国産の厳選した特別栽培の野菜と果実がメインです。有機栽培の農家さんは小規模で、生食用を作るのが精一杯。しかも安定しない。加工品に回すものは後回しです。そこを、コミュニティの力を借りながら、少しずつ理解してもらい、契約農家を増やしていきました。

ソースの主原料はリンゴ。9〜12 月に長野で収穫したものを現地で1年分ピュレに。トマトは安曇野で特別栽培した糖度が高いものを1年〜1年半分、塩を加えずピュレに。砂糖はミネラル豊富な喜界島の粗糖と沖縄の黒糖を使っています。

ソースを広く知らしめるだけでなく、土をきれいにする運動などを通し、食品メーカーとして自然環境保持に何か貢献できることはないかと、常に考えています。その一環として始めたのが「有機ソース」です。日本には有機の認証をとった原料が少ないため、こちらは輸入の有機原料で作っています。ソース作りに欠かせない酢もアルゼンチンの有機ブドウ果汁を独自に取り寄せ、委託製造してもらったブドウ酢を使用しています。

あと 10 年もすれば、農業人口の減少で原料調達は益々深刻な時代に。これまで以上に農業にも関わりながら、原材料確保に努める必要があると感じています。

原料のうち、リンゴとトマトが6割を占める。ソース作りはまず、この2つを撹拌する作業(写真)から始まる。オートメーションではなく、作業員が一つひとつ、重い液体の缶を空け、手で加えていく。

(左写真)カラメル色素を使わない「カントリーハーヴェスト」は明るい茶色が特徴。
(右写真)リンゴのピュレは離乳食にそのまま使えるほどきれいな味わい。素材の質の高さがよくわかる。

(左写真)「安曇野トマトの会」は埼玉県小川町の有機栽培農家が技術指導している。
(右写真)カントリーハーヴェストの製品を作る圧力窯は気圧を下げ、低温で加熱ができるため、素材の風味が生きる。

(左写真)黒糖は「そのまま食べると止まらないほどのおいしさ」と社長。
(右写真)ウスターソースは加熱調合の後、約 10 日寝かせて濾過。

有機ソースは日本で有機 JAS 法が始まる以前から、アメリカの認定団体(QAI)の認定を取得して販売が始まった。


◎高橋ソース   
埼玉県本庄市下野堂 604-7
☎0495-24-1641
https://takahashisauce.com/

(雑誌『料理通信』2017 年6月号掲載)

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