日本の食 知る・楽しむ
小倉あんみつ「みつばち」 since 1909
連載 ― 世界に伝えたい日本の老舗 服部幸應
2016.05.01
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名物の小倉アイスがトッピングされた「小倉あんみつ」は600円。抹茶の求肥、寒天、甘く煮たアンズ、こしあんと一つひとつが丁寧でじっくり味わいたくなる。トロリと濃厚な黒蜜にもファンが多い。
text by Michiko Watanabe / photographs by Toshio Sugiura
連載:世界に伝えたい日本の老舗
「みつばち」は母と一緒に子供の頃から通っている甘味処です。僕が幼少の頃、新宿店は男子禁制でした。この店のしつこ過ぎず、後口のキレがいい黒蜜が今も大好きです。また、何ともいえないとろけるように滑らかな口当たりの小倉アイスは、この店から生まれた比類のないもの。4代目になる嶋田有子さんにお話を伺いました。
思い出の味をつなぐ丁寧な仕事
創業当初は「嶋田屋」というかき氷の店でした。現在も、夏場はかき氷が人気です。カレーのような器に山ほど氷を削り、崩れないように煮た小豆をたっぷり添えたもので、結構な量なのですが、みなさんペロリと完食してくださいます。
氷には蜜をかけず、小豆を混ぜながら食べる。甘過ぎず、後口もさっぱり。毎年、かき氷をお目当てにいらしてくださる夏だけの常連さんも多いんですよ。
この氷用の小豆から大正4年(1915年)、小倉アイスが誕生します。生みの親は曾祖父と曾祖母でした。その年は冷夏で涼しかったので、かき氷が売れず、小豆が大量に残ってしまった。捨てるには惜しいので、桶の周りに氷と塩を入れたままキンキンに冷やして保存しておいたところ、周りが少し凍って、食べてみるとおいしかった。それを、導入したばかりのアイスクリームマシンに入れて回してみたら、偶然にも「小倉アイス」が誕生したというわけです。
つまり、これは煮た小豆のみのアイス。材料は、大納言小豆、砂糖、塩、水だけ。乳脂肪は一滴も入っていないのです。滑らかで、少しねっとり。小豆だけだからこその味わいです。今も昔も製法は変わっていません。
「みつばち」という店名になったのは、2代目から。戦後、焼け野原に咲く黄色い野菊にミツバチが群がっているのを見て、お店にもあのミツバチのようにお客様が群がって来てくださったらいいな、という願いを込めてつけたそうです。
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店頭ではテイクアウトであんみつやアイスクリーム、ハニー焼きが買える。
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4 代目の嶋田有子さん。
人気は小倉あんみつやアンズあんみつ。あんみつ用のあんはこしあんで、これは、毎日工場で職人さんが手で形作っているもの。他の店より少し小ぶりで、量が少ないと思われるかもしれませんが、小豆の深みがぎゅっと濃縮した味になっていると思います。小豆好きの方は、小倉アイスに煮た小豆をかけた小倉鹿の子をよくご注文なさいますね。
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座敷は現在5室。古き良き日本の暮らしを想起させ、タイムスリップしたような気分に。
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大納言あずきをトッピングした「小倉鹿の子」530 円。夏場は、かき氷にこのあずきをたっぷり添えた「氷あずき」630 円を求めて訪れるお客さんが増える。
卓上に置いてある黒蜜は、お好きなだけお使いいただいていいんです。小倉アイスにちょこっと、安倍川餅にちょこっと、という風に、二つの味を皆さん楽しんでますよ。この黒蜜、沖縄産の黒砂糖に塩と砂糖を加えて銅釜で炊いたもの。お持ち帰りも可能です。
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通常、あんみつに添えられる黒蜜は小さな容器に1人分を入れて出す店が多いなか、みつばちではテーブルの上の急須にたっぷり用意されている。
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人気の黒蜜は販売もしている。500ml 入りで980 円。トーストに塗ったり、ヨーグルトに入れたりとハチミツと同様に楽しめる。包みもかわいく手土産に喜ばれそう。
何十年ぶりにおみえになるお客様も多いのですが、「昔と変わらず、おいしいね」と言っていただけるのが、何よりの喜びであり、誇りとなっています。
◎みつばち
東京都文京区湯島3-38-10
☎03-3831-3083
10:00~21:00(喫茶は10:30~20:00LO)
無休
東京メトロ湯島駅より徒歩1分