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JOURNAL / 世界の食トレンド

America [New York]

本国に愛を込めて。イラン系女性起業家が造る個性派ビール

Jan 24, 2022

text by Akiko Katayama

クラフトビール人気が依然続く米国で個性的な商品が目立つ中、2021年10月に開いた醸造所「バック・ホーム・ビア(Back Home Beer)」が話題だ。

オーナーはイラン系米国人女性ザーラ・タバタバイ氏。イランはビール発祥の地とされ、5000年前から製造されていたといわれるが、1979年のイラン革命後は生産も消費も厳しい規制を受けている。氏は革命前に自家醸造を楽しんでいた祖父に感化され、ニューヨークの自宅で趣味として醸造を開始。やがてイラン独自の風味を伝えるビールを造りたいと感じ、起業に至った。

現在商品は2種。一つは旨味と酸味を併せ持つ果実スマックと、イランで人気の酸味のあるサクランボ、サワーチェリーを織り込んだ「スマック・ゴーゼ(Sumac Gose)」。スマックのフレッシュな味わいを目指したが、スパイス用に粉末加工される前の実を仕入れようとしたら、塩漬けのものしか現地から輸入できない。そこで氏は逆手に取り、原料に塩を使うビアスタイル、ゴーゼ(Gose)を採用。果実の甘味とバランスの取れた酸味、果皮のタンニンから生まれる苦い後味が、ほのかな塩味と相まってスパークリングワインのような新感覚のビールを生み出した。

もう一つは北イラン産の青みを帯びた塩を使った「ペルジアン・ラガー(Persian Lagar)」。「祖父の時代のイランでは、ビールにほんのり塩を加えて飲まれていました。苦味を抑え、バランスをとるためだったのかも知れません。それをヒントに使ってみると、キリッとした味わいに仕上がりました」と氏。

各品の評判は上々で、創業2カ月で60店の小売・レストランに販売。レンタル施設での製造・販売を含め全て氏が1人で賄っているが、モチベーションは高い。イランでは女性の地位の低さが深刻な問題。女性起業家としての仕事ぶりに刺激を受ける本国の反響も多く耳にするという。今後は新たな風味の商品開発を続け、自己所有の醸造所創設を目指す。

(写真)ペルシャ語の缶の絵柄は詩になっている。「私自身、詩をたくさん読んで自分を励まします。缶にも啓発につながるような詩を選んでいます」とタバタバイ氏。デザインは、氏がインスタグラムで見つけたイラン在住の若い女性デザイナーによるもの。価格は店により異なり、1缶5~10ドル。



*1ドル=113円(2021年12月時点)

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