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JOURNAL / 世界の食トレンド

国際非営利団体のお墨付き フードロス削減アップサイクル・アイスクリーム

America [Portland]

2023.08.14

国際非営利団体のお墨付き アップサイクル・アイスクリーム

text by Kuniko Yasutake photographs by Salt & Straw and Upcycled Food Association

オレゴン州ポートランドが本拠地の「ソルト&ストロー(Salt and Straw)」は、地域色が濃く、革新的なフレーバーを次々発表し続けるアイスクリーム店。2023年春、初お目見えの「アップサイクルド・フード・シリーズ(Upcycled Food Series)」では、まだ消費可能な食材を積極的に活用し、品質維持しやすい冷菓として5つの新商品を発表した。

実現の原動力となったのは、アイスクリーム生産者のクリエイティビティのみならず、食のサーキュラリティ(循環化)を担う地域団体のインフラ、消費者のリサイクル・マインドセット、そしてフードロス削減を目指す新進の国際非営利団体によるアップサイクル認定だ。

新商品の目玉となった食材とは、売れ残りのパン、カカオのパルプ(果肉)、ギリシャヨーグルト製造中に染み出た乳清(ホエー)、ビール製造後に生じた麦芽かす、おから。それぞれをチョコレートやレモン、キャラメルなどと組み合わせ、期間限定アイスクリーム/ジェラートとして生まれ変わらせた。

プロジェクト成功の背景には、廃棄寸前の食材確保と物流に精通した5つの地域団体がパートナーとなり、リサイクル実施実績が全米トップ3のオレゴン州に暮らす、アップサイクル・デザートを受け入れる消費者の精神的土壌がある。

さらに、19年の発足から世界20カ国で会員数を急速に増やしつつある第三者機関「アップサイクルド・フード・アソシエーション(Upcycled Food Association)」の後押しだ。彼らから、環境と経済にプラスの影響をもたらす食品に与えられる正式認証を受けたことも奏功した。

この認証を受ける以前より定期的にアップサイクルに取り組んできたソルト&ストローの例は、食のゼロ・ウェイスト化にはシェフや外食産業の個の努力は元より、問題解決の道筋を共に考える、地域ネットワークが不可欠であることを示している。

(写真トップ)「アップサイクルド・フード・シリーズ」は15ドル/1パイント(約500ml)。過去に話題となったフレーバーには、牛骨髄も! 全米グルメ誌も高評価のメニューには、全店舗共通商品に加え、支店エリアや季節限定品が並ぶ。オンラインショップを介して、ドライアイスとリサイクル可能な紙製の梱包材料を使い全米50州へ発送可。


(写真)オーナーのキム・マレクさん(左)とタイラー・マレクさんはいとこ同士。フランチャイズ展開せず、自社スタッフの手作り・小バッチ生産にこだわる。ディズニー・ランド/ワールド店を含む30を超す店舗は、今や5つの州にまたがり、俳優のドウェイン・ジョンソン氏も投資家として名を連ねる。

(写真)オーナーのキム・マレクさん(左)とタイラー・マレクさんはいとこ同士。フランチャイズ展開せず、自社スタッフの手作り・小バッチ生産にこだわる。ディズニー・ランド/ワールド店を含む30を超す店舗は、今や5つの州にまたがり、俳優のドウェイン・ジョンソン氏も投資家として名を連ねる。

(写真)2022年8月、米国市場にデビューしたアップサイクル認定マーク。アップサイクルとは素材をそのまま新商品の原材料として使用すること。廃棄物を資源に戻してから再生するリサイクルとは定義が異なる。現在、日本からは4団体がUFAメンバーとなっている。

(写真)2022年8月、米国市場にデビューしたアップサイクル認定マーク。アップサイクルとは素材をそのまま新商品の原材料として使用すること。廃棄物を資源に戻してから再生するリサイクルとは定義が異なる。現在、日本からは4団体がUFAメンバーとなっている。



◎Salt and Straw
https://saltandstraw.com/

*1ドル=138円(2023年7月時点)

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