日本人にはどこか懐かしい味わい。米麹×オーツの新プラントミルク
America [Los Angeles]
2025.12.25
text by Kuniko Yasutake
「コージ(KOATJI)」は、有機オーツに米麹をかけ合わせた新しいプラントミルク。バリスタ利用で高い評価を得るオーツミルクに米麹を加えることで、ほの甘い自然な香り、深みのあるあと味と、なめらかな質感が際立つ。いわゆる和と洋、東と西の融合ではなく、カフェ文化にまったく新しい食材の可能性をもたらしている点がユニークだ。photograph by KOATJI
プラントベース食品市場が1兆円規模に成長し、すでに成熟期へと向かっている米国。小売店やカフェで選べる植物性ミルクの種類も年々増え、差別化が進む中、2024年“業界初”として登場したのが「コージ(KOATJI)」だ。主原料はその名の通り、オーツ(oat)ミルクと米麹(koji)。製造者は和食や発酵文化に親しんだ日系人かと思いきや、おいしい自然健康食品に深い関心を持つデンマーク出身の起業家である。
一般的なプラントミルクの多くは、乳のようなコクや乳化を再現するため、製造過程で食品添加物や甘味料が複数加えられる。しかしコージは、欧米の美食家たちの間でも広く認知されつつある米麹を使うことで、自然な香り・甘味・旨味に加え、オーツミルク本来のクリーミーさをいっそう引き出すことに成功した。
共同創業者の2人は、地元コペンハーゲンのミシュランシェフたちの協力を得ながら、3年間で約8000もの試作品を制作。その結晶とも言えるのが、彼らが“バリスタ・グレード”と呼ぶ仕上がりだ。米麹の酵素がオーツのデンプンを分解し、エスプレッソドリンクに欠かせない、シルキーで細やかな泡立ちを実現する。つまりフォームミルクとしての完成度が一段と高いのである。
ここ数年、SNSの影響でアメリカ人消費者の間では“食感ファースト(Texture First)”が台頭し、「バリバリ」「カリッ」とした“音のある歯応え”が人気を集めてきた。だが、2025年はその反動のように、音のしない「ふんわり」「とろり」としたなめらかさに注目が集まっている。菜食、食のグローバリゼーション、菌活、有機志向、フードテックなど、様々な価値観に響くコージの特性は、最新のテクスチャー・トレンドとも絶妙に呼応している。
◎KOATJI
9ドル/946ml
https://koatji.com/
*1ドル=155円(2025年12月時点)