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JOURNAL / 世界の食トレンド

1杯の“だし”でリラックス 疲れた体にボーンブロスが静かな人気

America [New York]

2026.02.26

1杯の“だし”でリラックス 疲れた体にボーンブロスが静かな人気

text by Kuniko Yasutake
マグカップに注いで電子レンジで1分。オーブン料理を思わせる旨みたっぷりの香りが、湯気と共に立ち上がる。「ブロド(Brodo)」は、ローストした “肉付きの” 鶏、七面鳥、牛の骨を使い、有機野菜や香辛料、ハーブと共に長時間煮込むことが特徴のひとつで、他のボーンブロス商品との差別化ポイントでもある。photograph by Kuniko Yasutake

ボーンブロスとは、鶏や牛、魚などの骨を香味野菜と共に時間をかけて煮出し、タンパク質やコラーゲンなどの栄養成分が溶け込んでいるだし汁のこと。米国では料理用ストックとして1ℓ前後の家庭用サイズで販売されているのが一般的だ。だが今、ニューヨーク発の「ブロド(Brodo)」が、調理せずに“そのまま飲めるホットドリンク”として1人前パウチ入りでリニューアル展開し、再評価されている。

英語圏では本来、スープなどの汁物は「食べる(eat)」ものとして認識される。一方で、ブロドはだし汁を「飲む(drink)」ものとして紹介している点が画期的だ。さらに、起きがけや仕事の合間、夜のひと時に、“コーヒーやアルコールの替わりに1杯”という提案も、アメリカ人消費者の目に新鮮に映っている。

このメッセージングの背景にあるのは、ネットやSNSに溢れる健康法に振り回され、心身がすり減ってしまう「ウェルネス疲れ」と近年の消費者動向の変化だ。情報過多やストレス、不安定な社会情勢といった日常の緊張の中で、サプリメントや飲酒に頼らず、日々の食事で神経を穏やかに整えたいという意識が、スーパーや小売店での食料品選びに表れ、その傾向は右肩上がりにある。

マルコ・カノーラ
ニューヨークのベスト・シェフとして受賞歴を持つマルコ・カノーラ氏が、ボーンブロスを初めて商品化したのは2014年。自身のレストラン「ハース(Hearth:囲炉裏の意)」にテイクアウト・ウィンドウを設け、紙カップで提供したのが話題に。調理に使わなかった骨を活用するフードロス対策として始まったが、ブロドを日常的に飲むことでシェフ自身が体調改善を実感した経験も、新パッケージ化を後押しした。photograph by Brodo.com

また近年、腸脳相関(gut-brain axis)という“内臓マップ”の研究が進み、腸内環境と情緒・神経機能のつながりについて、医療分野に限らず広く語られるようになった。ボーンブロスに含まれるグリシンなどのアミノ酸や、マグネシウムなどのミネラルは、腸の働きを助けるだけでなく、神経疲労の軽減や感情の安定、睡眠の質をサポートする可能性が示されている。

塩分を控え、糖類無添加。丁寧に灰汁を取りながら仕上げたクリーンな風味――手軽な「自然由来の機能性ドリンク」として、ブロドが静かに支持を広げている。

ブロド(Brodo)
「ニューロウェルネス(神経の健やかさ)」は、米国最新フードトレンドのキーワード。優れた栄養価のみならず、温かな一杯のブロドを“飲む行為”そのものが、日々の忙しいスケジュールにひと休みを促す点も見逃せない。即効性を約束するのではなく、心身を緩めるセルフケアの新習慣を提案している。photograph by Kuniko Yasutake
ブロド(Brodo)のバリエーション
基本の3種類は、「オーガニック・チキン」「グラスフェッド・ビーフ」「ハース(ビーフ+チキン+ターキー)」。リニューアルにあたり、ヴィーガンの「しいたけ&昆布」に加え、トウガラシやターメリック、シトラス、ココナッツミルクなどでアクセントをつけた欧風/アジア風フレーバー4種を新開発した。当初、冷凍食品として配送取り扱いを行っていたが、物流コストの課題を踏まえ、パウチで軽量化と梱包の簡略化を実現。現在ハワイとアラスカを除く米国48州への発送が可能となっている。photograph by Brodo.com

Brodo
各フレーバー33ドル/1USカップ(235g)6本パック 
チキンとビーフは3USカップ入りもあり
常温保存で消費期限は1年
https://www.brodo.com/

*1ドル=153円(2026年2月時点)

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