JOURNAL / 世界の食トレンド

Australia [Sydney] ミルクの風味を守る！“エクストラホット”人気にバリスタたちが苦肉の策

2023.02.13

text by Akiko Ganivet

健康志向のせいか、ラテやカプチーノをオーツミルクや豆乳にカスタマイズする人が増えているシドニーのカフェ。バリスタを悩ましているのは、“エクストラホット（熱々）”で、というリクエストだ。熱くしすぎるとミルクの風味が損なわれるからだ。

牛乳は60℃以上に加熱すると、きめ細やかなフォームができて甘味や風味が引き立つが、70℃を超えると牛乳の甘味成分は破壊され、焦げた風味がしてしまう。オーツミルクや豆乳などの代替ミルクも熱に弱く、エクストラホットにするとさらに味が損なわれるという。

イタリア系移民が多く独自のカフェ文化が根付くオーストラリアだが、その一方で、英国の影響か熱々の紅茶をじっくり飲むことが習慣化し、ぬるめのラテになじめない高齢者世代もいる。持ち帰る際、冷めるのを防ぎたいという人もいる。追加料金を払って代替ミルクへのカスタマイズが一般化する中、エクストラホットは無料なので、自分好みの“熱々の一杯”をオーダーすることへのハードルがなくなったように見える。

シドニーの老舗カフェ「ビルズ」のマネージャー、マクニール・ディーンさんによると、客の３割ほどがエクストラホットをオーダーするそうだ。バリスタは「コーヒーを注ぐ前にマグを温めたり、最後に熱湯を少量注いだり」して、ミルクの味を損なわずに提供する工夫をしている。コーヒーの好みは人それぞれだが、おいしい一杯のために、バリスタが心を砕いていることは覚えておきたい。

（写真トップ）代替ミルクへのカスタマイズは追加料金50セント程度。エクストラホットは追加料金不要なので気軽に頼める。