ガストロノミーはパリから郊外へ。広大な文化施設に誕生した新世代シェフの発信地
France [Paris]
2023.06.15
text by Sakurako Uozumi / photographs by Victoire Terrade pour Créa Agency(photo3, 4)
2023年3月、パリ南西、郊外の町ムドンに大型文化施設「アンガール・イグレック(Hangar Y)」が誕生した。9ヘクタールにおよぶ敷地には、3500㎡のアートの展示スペース、公園、池、プールがあり、カルチャーとレジャーを楽しめる空間だ。元は航空宇宙博物館として使用されていたが1981年に閉館。その後、グラン・パリ計画と呼ばれるパリの拡張計画の一環として大きく蘇ったのである。
併設のレストラン「ル・ペルショワール Y(Le Perchoir Y)」は、パリのルーフトップ人気のパイオニアともいえる「ル・ペルショワール」グループが手掛けた。元工場の最上階をお洒落なバーに変身させたり、ビルに屋上菜園を作ったり、若いパリジャンの心を捉えてきた企業だ。
同店の特筆すべき点は、3カ月ごとに異なるシェフが料理の監修をするシステムだ。栄えある1回目の招聘シェフは、パリ9区の一ツ星店「ネゾ(NE/SO)」を営むギヨーム・サンシェーズ。先鋭的なクリエイションとSDGsへの意識が高く、哲学的な思想で一目置かれる料理人だ。「食べることによって新しい視点を持ってほしい。それはアートに共通している」とギヨーム。
食材は全てフランス産に限定。魚の熟成や発酵技術を駆使し、食品ロス削減に心血を注ぐ。彼の料理は長年眠っていたこの場所に新しい命を吹き込む。パリに一極集中しがちなガストロノミーを、郊外や地方に目を向けようとする意図の高まりも感じられる。
(写真トップ)初代招聘シェフのギヨーム・サンシェーズは、1990年、仏ボルドー生まれ。パティシエ出身でラデュレ、フォション、ダロワイヨなどで修業を積んだ後、料理人に転向した。2018年「ネゾ」をオープン。アートにも造詣が深く、パリでも指折りのクリエイティブな料理人として頭角を表している。
◎Le Perchoir Y
9 avenue de Trivaux, 92190 Meudon
RER C線Meudon-Val-Fleury、289番バスCimetière de Trivaux駅で下車
前菜9〜15ユーロ、メイン26〜60ユーロ、デザート9〜11ユーロ
https://leperchoir.fr/location/le-perchoir-y-le-restaurant/#lerestaurant
*1ユーロ=148円(2023年5月時点)