元弁護士&エンジニアのカップルが挑む鮮魚店の流通革命。氷なしで鮮度を保つ秘密は?
France[Paris]
2024.04.15
text by Sakurako Uozumi
(写真)鮮魚店「ヴィオ」の冷蔵陳列ケース内は常にドライな状態。マイナス1〜1℃に設定され、魚は0℃の状態に保たれている。
2021年4月、サン・ジェルマン市場の一角にオープンした「ヴィオ(Viot)」は、新しいコンセプトで耳目を集める鮮魚店だ。鮮魚店といえば、氷を敷き詰めた台に魚を並べて販売するのが一般的な中、同店は冷蔵陳列ケースに、水気がない状態で魚が並べられている。
伝統的な鮮魚店とは一線を画す改革に乗り出したのは、アルチュール&マリー=ヴィクトワール・ヴィオ夫妻。夫は元保険専門の弁護士、妻はエンジニアという転職組だ。「シュノーケリングが趣味でしょっちゅう海に潜っていましたが、海中ではあれほど生き生きとしている魚が、市場では輝きを失うことを残念に思っていたのです」
2人は一念発起して鮮魚店に改革を起こそうと決意した。農学・微生物学者のブリュノ・グッソーの協力を得て、魚の適切な水分を保ちながら味と食感を変えることなく、質を保ち、ドライ保存できる冷蔵陳列ケースを開発した。二重ガラスの構造で、魚にとって最適な温度と湿度を保ち、換気もできる。
廃棄物の削減や資源を守るエシカルな視点から、熟成専用のケースも導入した。魚の捌き方や熟成のノウハウは、パリのミシュラン一ツ星すし店「SUSHI B」の初代シェフを務めた花田雅芳氏から徹底的に学んだ。
狙いは持続可能なコンセプトをフランス全土の魚屋に普及させることだ。今後、時代を見据えたヴィオ夫妻の改革がどのような広がりをみせるのか目が離せない。
◎Poissonnerie Viot
6 Rue Lobineau, 75006 Paris
8:00〜13:00、16:00〜20:00(土曜 8:00〜20:00、日曜 8:00〜13:00)
月曜休
https://poissonnerie-viot.com/
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