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JOURNAL / 世界の食トレンド

Germany [Berlin]足並みそろわず苦戦中?飲食店に義務付けられたデポジット制リユース容器

2023.03.23

Germany [Berlin]足並みそろわず苦戦中?飲食店に義務付けられたデポジット制リユース容器

text by Hideko Kawachi / photographs by RECUP(photo1,2)

2023年1月から、ドイツの飲食店ではテイクアウト時に、消費者がリユース容器を選べるように準備しておくことが義務付けられた。その背景にはロックダウンの際、テイクアウトが増えたことによる家庭ゴミの増加もある。しかしこの法令はあくまでも「選択肢の義務付け」のため、飲食店にはリユース容器を用意する義務があるが、消費者にはリユース容器を選ぶ義務はない。その実効性には疑問符がつく。

「ベルリンだけで、1日46万個ものテイクアウト用コーヒーカップが使い捨てられている」と憤るのは、ドイツホテル飲食業協会(DEHOGA)ベルリン支部長トーマス・レンクフェルダー氏だ。協会は3年前から、再利用が可能なコーヒーカップ「リカップ(RECUP)」をパートナーとして会員に推奨し、登録して3カ月は無料でサービスを使えるようにするなどして、使用を広めてきた。

飲食店の店頭で販売されているリボウル(右)とリカップ(左)

(写真)飲食店の店頭で販売されているリボウル(右)とリカップ(左)。デポジットはリボウルが5ユーロ、リカップが1ユーロ。

「リカップ」はドイツ発のデポジット制リユースカップ。パートナー店が増えるほど消費者は返却が楽になり、使いやすくなる。現在はドイツ全土で1万カ所以上の登録があり、大手ベーカリーチェーンなどでも導入している。

リカップ社はランチなどのテイクアウトに使えるデポジット制容器「リボウル」もスタート。しかし、飲食店の規模や提供する料理の内容や形状によっても最適なサービスが異なるため、一斉導入は難しいという。しかもスタッフ5名以下の小規模店舗ではリユース容器の選択肢義務がないため、使い捨て容器ゴミの増加には歯止めがかかっていないとレンクフェルダー氏は警鐘を鳴らす。
「ただ、小規模店舗でも、お客が容器を持参したら使用できることになりました」

飲食店側にはその準備がある。あとは消費者側の意識改革が、ゴミを減らす鍵となっていきそうだ。

(写真トップ)リカップと同じく、ポリプロピレン製のリボウル。製造元によれば500回再使用が可能だという。サイズは大(1100ml)、仕切り付きの中(590ml+320ml)、小(550ml)の3種類。コーヒーと違い、食事は店によってボリュームが異なるのが難点だという。

DEHOGAベルリン支部長トーマス・レンクフェルダー

(写真)DEHOGAベルリン支部長トーマス・レンクフェルダー。「ゴミを減らして循環型の社会にするには、生産する側だけでなく消費・廃棄する人の協力が不可欠。町全体で共通のサービスが導入されると飲食店側としては楽で、使う側も返却しやすくなるのですが」と率直に悩みを吐露してくれた。



◎RECUP/REBOWL
https://www.recup.de

*1ユーロ=144円(2023年2月時点)

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