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JOURNAL / 世界の食トレンド

China [Hong Kong]香港ガストロノミーに広がる代替肉

2023.04.17

香港ガストロノミーに広がる代替肉

text by Rie Suzuki

深刻な環境問題を背景に、香港でもプラントベースの代替肉が急速に広まっている。かねてより宗教上の理由や健康志向により、香港の精進料理店や菜食レストランは一定の常連客で賑わいを見せていたが、近年、代替肉の味わいや栄養価に注目が集まり、様々なレストランが取り入れるようになった。


ミシュラン三ツ星を15年間保持する「フォーシーズンズホテル香港」の広東料理店「龍景軒(ロンキンヒーン)」では、4年前から代替肉を提供している。世界中から訪れる客のプラントベース需要が高まるにつれ、メニューに加えていったという。

同店の代替肉の原材料には主に大豆、エンドウ豆、シイタケ、米などが使われている。香港の広東料理界を長年牽引する総料理長の陳恩徳(チャン・ヤン・タック)氏は、「代替肉は、ミンチ状のものであれば挽き肉に近い食感を出せるので、レシピや調理方法に大きな違いはない」と話す。

(写真)開店以来活躍している陳恩徳氏。アワビを丸ごとのせた点心「鮑パイ」など、数々の名物料理を生み出してきた。

(写真)開店以来活躍している陳恩徳氏。アワビを丸ごとのせた点心「鮑パイ」など、数々の名物料理を生み出してきた。

調味料ももちろん、ベジタリアン対応のものを活用する。「植物性の肉の良さを最大限に引き出すべく、適した方法で味付け、調理をしているが、代替肉に本物の肉と同じ味、旨味は求めていない」と陳氏。「代替肉を使用するという私たちの姿勢が大切なのではないか」と続ける。
「ベジタリアン、ヘルスコンシャス、そして何より多くの好奇心旺盛なゲストが、代替肉を使用した料理に挑戦し楽しんでいます。今まで否定的なコメントはありません」

サステナブルな社会を目指し、個々人の姿勢や生き方が問われている。多様な宗教観や価値観の土壌という理由だけでなく、今後、課題解決に寄与する代替肉が新しい美食の選択肢として日常に楽しまれていくと期待したい。

(写真トップ)「プラントベースの牛肉と野菜と松の実の炒めレタス包み」(240香港ドル)。現在は、メインまたは野菜料理として用意するが、今後は点心や前菜にも採用したいと陳氏。

(写真)「プラントベースの豚肉とレンコン炒め」(200香港ドル)。2023年春現在、2品のプラントベースのメニューを常時用意しており、1日当たり、3~4テーブルがオーダーする。

(写真)「プラントベースの豚肉とレンコン炒め」(200香港ドル)。2023年春現在、2品のプラントベースのメニューを常時用意しており、1日当たり、3~4テーブルがオーダーする。



◎Lung King Heen

◎Lung King Heen
Four Seasons Hotel Hong Kong
8 Finance Street, Central, Hong Kong
☎+852-3196-8882
https://www.fourseasons.com/hongkong/dining/restaurants/lung_king_heen

*1香港ドル=17円(2023年3月時点)

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