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JOURNAL / 世界の食トレンド

世界が注目!食品廃棄物で造る古の発酵調味料“ガルム”

Italy [Bolzano]

2023.12.28

text by Sayaka Miyamoto
(写真)余剰食材から生まれたガルム。それぞれ250ml入りで、左から牛、鶏(以上各10ユーロ)、魚、野菜(以上各9ユーロ)、乳(8ユーロ)。現時点ではオンライン販売のみ、配送はヨーロッパ圏内に限っているが、将来的に増産を目指している。

古代ローマ時代、魚の内臓と塩を発酵させ造られていた魚醤の一種「ガルム」。様々なクオリティのものがあり、庶民から貴族まで愛用していたという。近年の発酵ブームの影響か、ガルムを現代に再現し、料理に利用するシェフたちが増える中、新しいガルムが誕生した。

2023年8月、トレンティーノ=アルト・アディジェ州のスタートアップ「ザ・ガルム・プロジェクト(The Garum Project)」が発表したのは、余剰食材に麹を加えて発酵させた現代版ガルム。牛、鶏、魚、野菜、乳(乳清)の5種類だ。

イタリア内外の高級店でシェフを務めた後、プロジェクトを立ち上げたマッティア・バローニ(Mattia Baroni)氏は、星の数や高い評価を追求する美しい料理、贅沢な料理ばかりを作るうちに、食材廃棄が多すぎることに疑問を持った。そして、その余剰食材を発酵食品として利用できないかと考えるようになる。今から10年ほど前、まだ発酵ブームが起きる前のことだという。


(写真)ザ・ガルム・プロジェクトの共同経営者で、開発を担うシェフのマッティア・バローニ氏。ボルツァーノにある「NOI Techpark」内の研究所で開発に勤しみながら、近郊のリゾートホテル「バッド・シュルガウ(Bad Schörgau)」の2つのレストラン、「ラ・フーガ(La Fu Ga)」と「アルペス(Alpes)」でガルムを使った料理を提供している。

様々な発酵食品がある中、なぜガルム?
「僕が知る限り、一番用途が広くて賞味期限がなく、なおかつ、使い方が簡単なのがガルムだと思ったんだ」とバローニ氏。

2018年から研究を重ね、2022年にはザ・ガルム・プロジェクトが正式に発足。鶏はアルト・アディジェ州自慢の平飼い鶏のみ、牛は牛肉生産の先進州であるピエモンテ牛のみを使うなど、原材料にとことんこだわり、日本から取り寄せた麹菌で発酵させた。麹の発酵作用で生まれる旨味を料理に加えることによって、味に幅や深みを簡単に与える――つまり調理時間の短縮につながることはもちろん、塩の量を減らせたり、デザートであれば少しの砂糖で甘味が強調されるなど、様々な利点があるという。

(写真)イタリア各地から集めた余剰食品を発酵させ、シェフ自らガルムをかき混ぜて、発酵具合を確かめる。麹を使うことで、本来のガルムの欠点とも言える腐敗に近い臭いは生まれず、発酵食品が苦手な人でも楽しめる香りのよいガルムが生まれる。

日本が世界に誇る麹と古代ローマの食文化が融合し、現代が抱える食の課題にポジティブな光を与える新しいガルム。2023年10月、ドイツ・ケルンで開催された世界最大の食の見本市「アヌーガ(Anuga)」では、参加食品の中の革新的製品10に選ばれている。

(写真)アルプス渓谷の清流に住むイワナの一種をガルムでマリネすることで、川魚のデリケートな味わいにコクを与えると同時に、皮目に火が通りやすくなり、カリッと焼きあがる。ソースはカリフラワーのピュレに、魚と乳の2種類のガルムを合わせたもの。



◎The Garum Project
https://garumproject.com

*1ユーロ=160円(2023年12月時点)

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