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JOURNAL / 世界の食トレンド

イタリア社会で生き抜くために。スローフード協会が移民青少年をサポート

Italy [Torino]

2023.08.21

イタリア社会で生き抜くために。スローフード協会が移民青少年をサポート

text by Sayaka Miyamoto / photographs by Slow Food Italia

2022年1月、イタリアのスローフード協会が立ち上げた「ユース&フード(Youth & Food)」プロジェクト。イタリアへ保護者なしにやって来る移民青少年たちに、イタリアで暮らし、働くための知識と技術を教えることで、イタリア社会へのインクルージョンを目指すものだ。23年1月にスタートした第2期生が6月にインターンシップを終了。トリノ市内のレストランで、一般の人々にディナーを振る舞った。

ここ数年、南イタリアの沿岸部には中東や北アフリカからの移民が増え続け、問題になっている。23年4月には、前年の約4倍の4万人を突破。中でも気になるのが、保護者の同伴なしでやってくる未成年者(18歳以下)の数が急増していることだ。21年12月31日付の労働省移民局のデータによれば、前年比73.5%増の1万2284人に上っており、23年は6月時点で6000人を超えたとユニセフが発表している。未成年たちは不法滞在や違法職業を斡旋する悪徳業者の手に落ちるなどの危険にさらされており、家族を祖国に残し、粗悪な船で命の危険を冒してイタリアへ入国しても、幸せな未来とは程遠い現実がある。


(写真)エジプト出身のカレムさんは、1年前にドバイ、ベイルート、イスタンブールを経由し、粗悪ゴムボートでイタリアに上陸した。プロジェクトを終了した今は、「イータリー・トリノ」の青果コーナーで仕事を学びながら、エジプトの家族に毎月200ユーロ送金できるようになった。

(写真)エジプト出身のカレムさんは、1年前にドバイ、ベイルート、イスタンブールを経由し、粗悪ゴムボートでイタリアに上陸した。プロジェクトを終了した今は、「イータリー・トリノ」の青果コーナーで仕事を学びながら、エジプトの家族に毎月200ユーロ送金できるようになった。

ユース&フード・プロジェクトでは社会に溶け込むためのイタリア語や労働者の権利、農業知識から料理技術までを教える。研修期間、インターンシップ期間終了後は、就職や住居の斡旋からスタートアップ企業創出の手助けまでと手厚い。「全ての人においしく、清潔で、搾取のない公平な食を保証することが目標なのです」とはスローフード・イタリア会長のバルバラ・ナッピーニさん。

3年間で60名を受け入れる予定のこの小さなプロジェクトから、差別や搾取のない世界、誰もが平和に暮らし、おいしいものが食べられる世界が広がっていくことを期待したい。

(写真トップ)「履歴書に書ける技術」を身に付けるため、イタリア料理を始めとするインターナショナルな料理を学ぶ。レシピの書き方、イタリア語の動詞の使い方、計量計算までカバー。

(写真)トリノ市内の人気レストラン、オステリア数軒が「ユース&フードのフレンド・レストラン」というコミュニティを形成し、移民青年たちを受け入れた。プロジェクト終了ディナー会では、一般客が彼らの作ったイタリア料理と出身地の郷土料理を味わった。

(写真)トリノ市内の人気レストラン、オステリア数軒が「ユース&フードのフレンド・レストラン」というコミュニティを形成し、移民青年たちを受け入れた。プロジェクト終了ディナー会では、一般客が彼らの作ったイタリア料理と出身地の郷土料理を味わった。



◎PERCORSI CON I BAMBINI/YOUTH & FOOD
https://percorsiconibambini.it/youthandfood/

*1ユーロ=155円(2023年7月時点)

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