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JOURNAL / 世界の食トレンド

ワイン離れの歯止めとなるか? ピエモンテの名ワイナリーが造るアルコール度数10%以下のワイン

Italy [Piemonte]

2024.02.19

ピエモンテの名ワイナリーが造るアルコール度数10%以下のワイン

text by Sayaka miyamoto
(写真)アルコール度数は一般的なワインの12~14%に比べ9.5%とかなり低いので、ブランチからディナーまで気軽に楽しめそうな「コルテガイア」。イタリア料理だけでなく、世界の様々な食文化との新しい組み合わせも期待できそうだ。日本でも2024年6月中旬以降に3600円で発売予定。

インフレや健康志向など、様々な要因が、先進国における脱アルコール化を加速させている。イタリアの三大新聞の一つ「ラ・レプッブリカ(La Repubblica)」の記事によると、2023年、世界のワイン輸入量の60%以上を占める国際市場で購入された、イタリアのスティルワインとセミスパークリングワインの量は8%減少したという。過去10年間、急成長を遂げてきたスプマンテなどのスパークリングワインも同様で、-9%という厳しい数字を記録した。

特にZ世代のアルコール離れは顕著であり、食事の度にワインを楽しむというイタリアの習慣は、今や古臭いものになりつつあるという。

そんな世界的傾向の中、ピエモンテ州を代表する白ワイン「ガヴィ(GAVI)」を100年以上前から生産してきたラ・スコルカ(LA SCOLCA)社が、低アルコールやノンアルコール飲料へと移行しているZ世代や健康志向の人々の要求に応えるべく、新しいワイン「コルテガイア(CORTEGAIA)」を開発した。収穫時期を通常よりも早めることでブドウの糖度を抑え、その結果、アルコール度数を低く抑えつつ、ブドウの持つ香りや旨味はそのままに、という逆転の発想から生まれた白ワインだ。逆転の発想とは、収穫時期をできるだけ遅らせ、ブドウの糖度を上げることで、高いアルコール度数と豊かな風味を追求してきたのが伝統的な高級ワインの製法だからだ。

アルコール度数が8%以下のものはワインと呼ぶことが認められず、また化学的な手法を用いてアルコールを除去することも禁じているイタリアのワイン法を遵守し、あくまでもワインであることにこだわったのは、イタリアのワイン文化とアイデンティティを守り、若い世代へ伝えていきたいという強い思いから。

海洋プラスチックを利用したコルクを使用するなど、環境に配慮する企業であるというメッセージ性もプラスし、新しい白ワイン・コルテガイアが誕生した。今後、イタリアワイン界を牽引する、新しい流れになっていくのだろうか。

(写真)ラ・スコルカ社4代目当主のキアラ・ソルダーティさん。「私が海洋プラスチックのコルクを使ったからと言って、環境の改善に直接貢献できるとは思っていません。でも消費者の皆さんに私たちの環境に対するメッセージを伝え、考えてもらうことがとても大切なのでは、と思っています」。ピエモンテの名ワイナリーとしての誇りと伝統を受け継ぎながら、時代と未来を見据えたワイン造りを目指す。

(写真)ラ・スコルカ社4代目当主のキアラ・ソルダーティさん。「私が海洋プラスチックのコルクを使ったからと言って、環境の改善に直接貢献できるとは思っていません。でも消費者の皆さんに私たちの環境に対するメッセージを伝え、考えてもらうことがとても大切なのでは、と思っています」。ピエモンテの名ワイナリーとしての誇りと伝統を受け継ぎながら、時代と未来を見据えたワイン造りを目指す。



◎LA SCOLCA CORTEGAIA 
https://www.lascolca.net/cortegaia/

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