自然の中で育つ畜産を実現。健やかな肉を味わう“アグリステリア(農家食堂)”
Italy [Firenze]
2025.08.04

text by Manami Ikeda
火おこしをするフラヴィオ氏。薪は敷地内の樫やオリーブの木を使っている。
フィレンツェから北へ20kmほど、トスコ・エミリアーノと呼ばれる丘陵地帯は、ワインで有名なキャンティ地区とは異なり、畜産やオリーブ栽培を主とする農家が森に隠れるように点在している。「ラ・ヴァッレ・デル・サッソ(La Valle del Sasso)」もそんな農園の一つだ。
オーナーのフラヴィオ・ジャンネッティはフィレンツェ大学の農学部で畜産学を学び、特に動物の健康に資する飼料の研究を専門としたことから、理想を実践すべく自らの畜産農場を立ち上げた。牛、羊、豚、鶏やウサギなどを半放牧で飼育し、サプリや抗生物質を使わず、厳選した干し草や穀物、野生の果物、畑で採れた野菜をバランス良く与えている。

こうして育てられた肉は、余分な脂がなく、適度な噛み応えと自然な旨みが身上。ごく小規模なため、肉の販売はウェブサイトでメール登録した会員への直販が基本で、希望者は予約の上、現地でピックアップするか、不定期に立つ直販スポットで購入するという仕組み。レストランなどには卸していない。


この健康な肉を楽しむにはグリルが一番。というわけで、セルフでBBQが楽しめるアグリステリア「ラ・リボッタ・デッラ・リスコッサ(La Ribotta della Riscossa)」を2025年6月からスタートさせた。“アグリステリア”とはアグリ(農家)+オステリア(食堂)という造語である。
客は電話で何を焼きたいかを予め伝え、当日、肉を受け取って農場の一角に設けられたグリラーでセルフBBQを楽しむ。ビステッカやサルシッチャ、ハンバーグ(肉100%)など、いずれも量り売り(ビステッカはサーロインで24ユーロ/kg)。パン、野菜、水のセットは1人12ユーロ、ワインは1本12ユーロ〜。肉が焼けるのを待つ間は、サラミや生の牛肉の腸詰「タルティッチャ」を前菜にオーダーすることもできる。

フラヴィオが樫の薪に火をつけ、それが炭火となった頃合いに肉を焼き始める。自然の中で健康な肉を焼くのは原始の喜びであり、生かされていることを楽しく実感できるひとときだ。


◎La Valle del Sasso
La Ribotta della Riscossaの営業は金曜夜・土曜、日曜の昼と夜
https://lavalledelsasso.it
*1ユーロ=170円(2025年7月時点)