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JOURNAL / 世界の食トレンド

国を挙げて漁業の活性化を推進。ノルウェーでは女性漁師が増加中!

Norway [Oslo]

2023.11.24

text by Asaki Abumi / photoraph by Maria Pettersvik Arvnes/Norges Fiskarlag
(写真)北極圏に位置するロフォーテン諸島の冬、漁師をしているのはシシリエ・スカーゲン・ヨンセンさん。ノルウェー政府は女性漁師の誕生を積極的に後押ししている。

2023年10月14日、現地の大手タブロイド紙『VG』に「16歳の少女エミリエさんの夢は“漁師”」との大きな見出しが出た。34歳の女性のイーナさんは、子どもたちが保育園や学校にいる間、漁師として働き、年収は85万ノルウェー・クローネ(約1160万円)だ。ノルウェーでは、夏休みの漁師アルバイトは子どもたちの間で“稼げるバイト”というイメージが定着している。VG紙でもエミリエさんは、4週間で5万ノルウェー・クローネ(約68万円)を稼いだと報じている。


ノルウェーでは母親や女の子でも稼げる仕事として、「女性漁師のロールモデル」が何年も前から現地の大手メディアで掲載されてきた。その結果、2020年から2023年にかけて、ノルウェーの女性漁師の割合は、3.8%から4.9%に増加。しかし政府は満足せず、さらに多くの女性漁師の誕生を望んでおり、ジェンダー平等の観点から、漁業にはまだまだ課題が山積みだと考えている。

「漁業における女性の活躍の場を強化するためには、セクハラや男女差別的行動に対する意識づくりに取り組む必要があります。加えて、女性にも男性にも平等に成功の機会が与えられるよう、構造を適応させなければなりません。若い男女の地方海岸部への定住は、業界に大きな波及効果をもたらすからです」とは、ビョルナル・セルネス・シャーラン漁業・海洋政策大臣の発言だ。

「政府はこれまでに様々な対策を講じてきた」と同省の広報エミル・ブレムネス氏はいくつかの事例を挙げた。
① 意識改善と女性登用のための対策を支援。民間の個人、企業、団体が申請可能で、女性のためのネットワーク開発、リーダーシップ研修、若者のための情報活動など11の取り組みに分配される。
② 平等・反差別オンブズマン、ノルウェー海事局、および複数の漁業団体の間で協力協定を締結。この協力協定は、各当事者がハラスメントの防止に組織的に取り組むことを約束する。
③ 政府は12歳から25歳までの若者が漁業経験を積む機会を促進する自治体に、200万ノルウェー・クローネを支給。2023年は765人の若者が登録し、そのうちの35%に当たる270人が女性。
④ 政府は採用枠ボーナス制度を継続中。2023年は新規採用の若手漁師6人に採用枠ボーナスを割り当てることが可能。

大手メディアによる「若い漁師」「女性漁師」が増加中という記事は、「漁師は経済的に魅力ある職業」というイメージ定着につながり、業界活性化の成功の秘訣と言える。

高齢男性ばかりの漁業界に革命を起こすならば、政府の積極的な助成対策、メディア報道、女性や若者のロールモデルの増加が欠かせないというのが、ノルウェーが得た教訓だ。

(写真)2023年10月16日付内閣改造により1984年生まれのセシリエ・ミルセット漁業・海洋政策大臣が新たに就任した。若者や女性の漁師増加に女性大臣の貢献が期待される。photo by NFD / David Berg Tvetene



◎ノルウェー漁業・海洋政策省
https://www.regjeringen.no/no/dep/nfd/id709/

*1ノルウェー・クローネ=13.6円(2023年11月時点)

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