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JOURNAL / 世界の食トレンド

不味い?それとも珍味?スウェーデン・マルメに世界の“不快な食べ物”が大集合

Sweden [Malmö]

2023.10.10

スウェーデン・マルメに世界の“不快な食べ物”が大集合

text & photographs by Sakiko Jin
(写真トップ)アイスランドの、毒をもつサメの発酵肉。展示物の何点かは臭いを嗅ぐことができるが、筆者にはこれが一番臭かった!

スウェーデン南部マルメ市にある「ディスガスティング・フード・ミュージアム(The disgusting food museum)」が話題だ。その名の通り、不快で気持ち悪い(disgust)とされる食べ物を展示する博物館だ。

世界中から集められた約80種に上る食べ物は、見た目に加えて、それらが放つ臭い(特に発酵臭)から忌み嫌われることが多いが、同時に、伝統食品としてそれぞれの国や地域で珍重されてきた食品でもある。創設者であるスウェーデン人、アメリカ人、フィリピン人の3人が、世界中を旅して食べ歩きをして、「見た目や固定観念で食べ物を判断しないでほしい!」と感じ、博物館の開設に漕ぎ着けたのだ。

(写真)展示品は北欧のリコリス(甘草の一種)製品や中国のピータンから、イタリア・サルデーニャのうじ虫チーズ「カス・マルツゥ」、メキシコの蟻の幼虫と卵、モンゴルの羊の目玉ジュースまで80品以上。アラスカでは、アザラシや魚、大角鹿などの動物油脂(写真)に氷とベリーを混ぜてアイスクリームもどきを作るそうだ。

(写真)展示品は北欧のリコリス(甘草の一種)製品や中国のピータンから、イタリア・サルデーニャのうじ虫チーズ「カス・マルツゥ」、メキシコの蟻の幼虫と卵、モンゴルの羊の目玉ジュースまで80品以上。アラスカでは、アザラシや魚、大角鹿などの動物油脂(写真)に氷とベリーを混ぜてアイスクリームもどきを作るそうだ。

同館は展示を通して、ビジターが抱く食に対する先入観について、今一度考える機会を与えようとしている。例えば近年、昆虫やラボ肉(培養肉)など代替タンパク源に注目が集まっているが、未来の食料危機に備えるためには、見た目や旨い不味いで判断するのではなく、なぜ食べる必要があるのかを考えたら、代替食品に対してもっとオープンになれるのではないか、といった具合だ。

常設展示の他に期間限定で、フグやシアン化合物を大量に含むインドネシアの木の実ケルアック(Keluak)の種など、「危険な食べ物」の展示もしている。それらのほとんどは、食糧がない時のサバイバルフードとして食されていたのが、今では珍しい食材として扱われるようになったという。他にも2008年、中国で起きたメラミン混入粉ミルク事件など、食にまつわる出来事なども取り上げている。

恐いもの見たさ、食べたさは、世界中どこでも同じなのだろうか。2018年の開館以来、年間2万人が訪れるこの博物館は、連日館内での列が途切れることはない。展示の終わりに試食コーナーがあるので、世界一臭いと言われる食べ物や乾燥昆虫を是非お試しあれ!


(写真)試食コーナーではいくつかの食品を実際に食べることができる。いくつか試食したが、とある甲虫は硬くて噛み切れず、食すのが難儀であった。

(写真)試食コーナーではいくつかの食品を実際に食べることができる。いくつか試食したが、とある甲虫は硬くて噛み切れず、食すのが難儀であった。

(写真)ショップで販売されているエビのスナック。日本ではポピュラーな菓子も、食べ慣れない国では嫌悪感を抱かれるのだろうか?

(写真)ショップで販売されているエビのスナック。日本ではポピュラーな菓子も、食べ慣れない国では嫌悪感を抱かれるのだろうか?

(写真)入場チケットは嘔吐袋も兼ねている。開館以来何人が嘔吐したか、また最後に嘔吐した人から何日経っているかを記した掲示板もある。

(写真)入場チケットは嘔吐袋も兼ねている。開館以来何人が嘔吐したか、また最後に嘔吐した人から何日経っているかを記した掲示板もある。


◎The Disgusting Food Museum
Södra Förstadsgatan 2. Malmö, Sweden 
入館料 220スウェーデンクローナ 
https://disgustingfoodmuseum.com

*1スウェーデンクローナ=13円(2023年9月時点)

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