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JOURNAL / 世界の食トレンド

エプロンが吸収した CO2 を野菜の栽培に活用 アパレルとレストランのカーボンニュートラル

Sweden [Stockholm]

2024.02.15

text by Jin Sakiko / photographs by Daniel Tobar (写真)特別な処理を施された生地がレストラン内の二酸化炭素を捕捉するという、画期的なエプロン。 資源を枯渇させるのではなく、すべての地球環境にプラスの影響を与える“プラネット・ポジティブ”を目指すプロジェクトだ。

text by Jin Sakiko / photographs by Daniel Tobar
(写真)特別な処理を施された生地がレストラン内の二酸化炭素を捕捉するという、画期的なエプロン。
資源を枯渇させるのではなく、すべての地球環境にプラスの影響を与える“プラネット・ポジティブ”を目指すプロジェクトだ。

2010 年設立の「フォトグラフィスカ・ストックホルム(Fotografiska Stockholm)」は、国際的に有名な写真と視覚文化の博物館。館内の広大なレストラン施設では、地元で栽培された旬の食材――特に野菜に焦点を当て、残渣はコンポストにして畑の肥料にするなど早くから循環型キッチンに取り組み、数々のサステナ賞を獲得している。

今注目を集めているのが、ライブテストとして実際にレストランで行われている「カーボンルーパー・プロジェクト(Carbon Looper Project)」だ。カーボンルーパーとは二酸化炭素を捕捉する生地のこと。レストランの従業員全員が着けている特別な生地のエプロンが、空気中に排出される CO2 を捕捉して植物の栄養に変換し、レストランの地下にあるハイドロポニックス(養液栽培)の野菜に還元するのだ。

カーボンルーパー・プロジェクトは、アパレル企業 H&M の非営利財団「H&M ファウンデーション(H&M Foundation)」が、香港の繊維アパレル研究センター「HKRITA」と共同で取り組む研究「プラネット・ファースト(Planet First)」の一つ。CO2 排出量問題を解決するプロジェクトだ。

(写真)エプロンには「息を吸って、吐いて、地に花を咲かせよう」と記されている。

(写真)エプロンには「息を吸って、吐いて、地に花を咲かせよう」と記されている。

コットン製のエプロン生地を、化合物アミンを含む溶液で処理することにより生地の表面が二酸化炭素を取り込み、その生地を 30~40℃に加熱すると二酸化炭素が生地から放出される。加熱を温室など植物がある場所で行えば、光合成中に自然に植物がその二酸化炭素を吸収する仕組みだ。

同プロジェクトは、気候危機に関するゲストの認識を高めるだけでなく、アパレル・ファッション業界のカーボンニュートラルにも一石を投じそうだ。

(写真)ハイドロポニックスの前で。左からクリスティアン・ドルヴァ(プラネット・ポジティブ H&M財団戦略リーダー)、マーティン・ウォール(フォトグラフィスカ、エグゼクティブ・シェフ)、エドウィン・ケー(HKRITA CEO)。

(写真)ハイドロポニックスの前で。左からクリスティアン・ドルヴァ(プラネット・ポジティブ H&M財団戦略リーダー)、マーティン・ウォール(フォトグラフィスカ、エグゼクティブ・シェフ)、エドウィン・ケー(HKRITA CEO)。


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