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JOURNAL / 世界の食トレンド

“生命の木”バオバブの実から作るプラントベース食品に注目!

Sweden [Stockholm]

2025.02.13

“生命の木”バオバブの実から作るプラントベース食品に注目!

text by Sakiko Jin
アルワ社の「クリーミー・バオバブ・オリジナル」。バオバブの実は、一般的なフルーツの瑞々しい果肉とは違い、乾燥して白い粉状になっている。ディップとして、またパンに塗ったり、サラダのドレッシングや料理にかけるソースにするなど使い道は多岐多様だ。

故郷の味が恋しくなるというのは全世界共通の思いだろう。

スーダン系スウェーデン人の食品研究者である、アルワ・ムスタファが立ち上げたフードテック会社「アルワ(ARWA)」は、彼女のバオバブフルーツへの思慕がきっかけになった会社だ。

バオバブの木は、主にアフリカのサバンナ地帯を中心に自生し、地球上で最も大きいと言われている。幹がスポンジ状になっていて、10トンもの水分を蓄えることができるため、小動物が棲みついたり、人々の食料や水の貯蔵庫としても活用されている。

開発のきっかけはアルワがスーダンから持ってきたバオバブの実を、スウェーデンの友達たちがローズヒップの味を思わせると気に入ったことだった。

多くの栄養素を含むバオバブは「薬の木」とも呼ばれる。実は木にぶら下がったまま自ら乾燥していき、その過程で実のエキスが自然と凝縮されていく珍しいフルーツだ。
多くの栄養素を含むバオバブは「薬の木」とも呼ばれる。実は木にぶら下がったまま自ら乾燥していき、その過程で実のエキスが自然と凝縮されていく珍しいフルーツだ。

バオバブの実の固い殻の中には、白い粉状の乾燥した果肉がある。アルワの商品第1号は、この果肉を使ったソース「クリーミー・バオバブ・オリジナル(Creamy Baobab Original )」だ。レモンと同程度のビタミンC、牛乳の3倍のカルシウムを含み、食物繊維はゴボウの8.7倍。鉄分はホウレン草の3倍を有し、非常に高い抗酸化作用があり、病気の予防に役立つとされている。これら栄養価の高さも踏まえ、2008年にはEUがバオバブの実を新しい食品として認可し、スーパーフードとして人気も高まっている。

クリーミー・バオバブ・オリジナルは、バオバブの実が本来もつ酸味を特徴としていて、さっぱり感も併せ持つ。添加物は一切使用せず、汁気の多い料理に入れるととろみが増すため、ソースとして最適だ。

アルワでは小規模農家から直接バオバブの実を仕入れ、農家や労働者に公正な賃金を支払い、労働条件にも配慮している。また地元の関係者と共に、バオバブの葉・実・種・皮・根・幹のすべてを、食品や薬品、スキンケアなど新しい分野に発展していけるか研究中だ。

“生命の木”とも呼ばれるバオバブ。環境負荷の少ないプラントベース製品に新たな一石を投じるに違いない。


*1スウェーデン・クローナ=13.85円(2025年2月時点)

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