自由が利く働き方を求めて。ストックホルムで注目のマイクロベーカリー3軒
Sweden [Stockholm]
2026.02.19
text by Sakiko Jin
「シンプル・ベーカリー」で一番人気の「スペシャルボックス」。ハムとスモークベーコン入りのベネズエラのパン「カチート」(写真上)を含め4種で220スウェーデン・クローネ。
近年、特にストックホルムでは、マイクロベーカリーが流行している。コロナの影響により、自宅で料理やお菓子作りに勤しむ人が増え、趣味が高じてビジネスに達したケースもある。それぞれ目的や経緯は異なるが、人気の3軒をご紹介したい。
受注はオンライン、ピックアップ場所へ自らお届け
ベネズエラ出身のフレッディとペルー出身のカミラによる、ラテン系ペストリーを展開する「シンプル・ベーカリー(Symple Bakery)」は、オンラインで週の初めに注文を受けて、土曜日にストックホルム内の数カ所のピックアップ場所で、対面で商品を受け渡すスタイルだ。
2人ともプロのパン職人。いずれは、おいしい焼き菓子やパンはもちろんコーヒーも提供し、お客に楽しんでもらう路面店を出すことがゴールで、シンプル・ベーカリーはその初段階だ。「店舗がないと会社設立が楽で、利用しているECサービスはオーダーから決済までスムーズに行える。オンライン販売のメリットは大きい」と2人は語っている。
三ツ星レストランから週に一度のマイクロベーカリーの道へ
「バゲリーエット・ルーダグ(Bageriet lördag)」は、アメリカ出身のセシリアが、火曜日にオンラインで事前注文を受け付ける。メニューは、アメリカとスウェーデンからの影響を受けた4種の焼き菓子や菓子パン類。”土曜日ベーカリー”という名の通り、土曜日に自分のアパートの近くにある公園に取りに来てもらうシステムだ。
セシリアはストックホルムにあるミシュラン三ツ星レストラン「フランセン(Franzén)」で研修生として働いた後、デザート責任者まで上り詰めた強者。あまりにもハードな仕事がたたり、疲労困憊で鬱病になり、仕事ができなくなる状態に陥った。回復後はYouTubeでレシピを公開していたが、自分で作ったものを共有・提供したいと思うようになる。だが自分の店を持つのは、身体的にも経済的にも無理と判断。1週間に一度、自分の家でなら無理せず自由に焼けて、かつ自分の好きなことを仕事として続けられるのでは、と思い今に至った。
厨房の中に店がある?広さ25㎡の極小ベーカリー
「ボロス・ベーカリー(bollos bakery)」は、広さ25㎡で、そのうち80%は作業場というストックホルムで一番小さいベーカリーだ。トルコ出身のグルシャフがデザート担当の料理人としてスウェーデンに来たのが3年前。スウェーデンの南、スコーネ地方にある「エースタッド・ワイナリー(Ästad Vingård)」内のミシュラン一ツ星レストラン「エング(Äng)」で働いた後、自分のベーカリーをオープンしたいと思い、ストックホルムにて夢を叶えたのが1年前だ。狭小ながら、イートイン席も数席用意している。
オンラインでの事前注文は、ロスが出ないことや焼き立てを提供できることが利点。また、人件費が高いスウェーデンでも、自分たちだけなら税金をはじめ経費を抑えることができ、社員のスケジュール作成や管理などに煩わされることもない。様々な利点があるマイクロベーカリー形態だが、一番の魅力は、上記3軒のオーナーが挙げているように、なんといっても自由が利くということだろう。
◎Symple Bakery
https://symplebakery.com
*1スウェーデン・クローナ=17.4円(2026年2月時点)
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