アジアへの注目が高まる中開催された、星付きシェフによる国境を越えた饗宴
Vietnam [Ho Chi Minh City]
2026.02.24
text by Rie Suzuki / photographs by WeAreFactory
ジョルジオ・ディアーナ氏がベトナム・フエの会場で披露した「鶏ムネ肉の真空調理、スモークしたナスのピューレ、発酵させたベビーキャロット、キャラメルレッドオニオン、ポルトバルサミコ酢ソース添え」。ベトナムでは放し飼いの鶏も流通しており、豚肉と並んで人気がある食材だ。
2025年11月、世界で活躍するシェフが集う「ディナー・インクレディブル(Dinner Incredible)」が、ベトナムの経済中心地であるホーチミンと、ベトナム最期の王朝があった古都フエで催された。
8回目の開催となる今回、イタリア、サウジアラビア、タイを経て、ベトナムが舞台となった背景には、豊富な食材と独自の食文化があるからだという。
「単なるイベントではなく、世界中から集まったシェフが、同じ情熱で結ばれた旅路」と語るのは、イベントのファウンダーであり、料理人でもあるジョルジオ・ディアーナ(Giorgio Diana)氏。今回の開催では、地元の環境を守り、伝統を尊重し、食を通してベトナムの文化を伝えることを目的としている。
イベントのモットーは、“グローバルに料理し、地元食材を食べる(Play global, eat local)”。ディアーナ氏はコロナ禍に、料理人として「今、何ができるのか」を自身に問い、同イベントの着想を得た。「コロナを経て、今まで以上に食、特に料理人は、国の境界線を越え、橋を架け、人々を結びつけ、人々の心に残る瞬間を生み出すことができると確信している」とディアーナ氏。
イベントでは、ミシュラン星付きシェフ計13人による13皿のコースを提供。鮮度が良く、香り豊かで色鮮やかな地元食材をふんだんに使い、シェフたちは自由に独自の料理を披露した。
たとえば、イタリア出身のディアーナ氏が手掛けた「キングトランペット(エリンギ)、カッペレッティ、イタリアンスタイルのチーズ、仔牛のジュ、赤シソ」は、イタリア伝統のパスタ料理を、すべてベトナムの食材で提供。チーズはイタリアと同じ技術で作られたもので、ディアーナ氏自身が現地でこのチーズを発見した時は、ベトナムとイタリアの食のつながりを深く感じたという。
「イタリアとベトナム料理には、素材への敬意やシンプルさなど共通の哲学がある。家族や記憶を映すイタリア、調和と新鮮さを宿すベトナム。2つの国が出会う時、新たな味の言語が生まれ、文化をつなぐ架け橋となるでしょう」
日本からは帝国ホテル東京・メインダイニング「レ セゾン(Les Saisons)」で2005年よりシェフを務めるティエリー・ヴォワザン(Thierry Voison)氏が参加した。フランス出身の氏が手掛けたのは「エビ、フェンネル、ソーテルヌソース」。「現在、質の高いベトナム産のエビが日本に輸入されている。今回は現地で料理し、皆と味わうサプライズを大変楽しみに参加した」と語った。
アジアには地元だけで消費されたり、伝統料理だけに用いられる食材がたくさんあるとディアーナ氏。こうした知られざる食材を、現代の食シーンにふさわしい在り方で料理し、食べ手と共有することは、伝統食材のおいしさの再発見につながるだろう。今後、より一層アジアに注目していくというディナー・インクレディブル。次の開催が待ち遠しい限りだ。
◎Dinner Incredible
https://www.dinnerincredible.com/
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