作って学ぶ!英国菓子が広げる カリフォルニアプルーンの魅力
2018.06.25
text by Noriko Horikoshi / photographs by Hide Urabe
ベイクの本場、英国の伝統菓子からカリフォルニア プルーンの新たな愉しみ方を学ぶMEETUPを5月29日(火)、東京・代々木の服部栄養専門学校にて開催。講師は大人気の英国菓子教室「モーニングトン・クレセント」主宰のステイシー・ウォードさんです!
プルーンは古くから英国菓子に欠かせない食材
生のフルーツにはない、ぎゅっと凝縮した甘味が持ち味のドライフルーツは、焼き菓子と抜群の相性。とりわけ、ベイキングの伝統を汲むイギリスの焼き菓子では、出番の多い食材のひとつです。
今回のMEETUPは、そんな英国菓子とカリフォルニア プルーンの出会いがテーマ。東麻布の英国菓子教室「モーニングトン・クレセント」を主宰するステイシー・ウォードさんが、よりイギリスらしいプルーンづかいのお菓子2種を提案。会場に集まった40人(全員女性!)のゲストとともに作って、味わって、その魅力を共有しようという趣向です。
いざ実践!のその前に、カリフォルニア プルーンについて簡単なおさらいを。そもそもプルーンとは、乾燥させたプラム(西洋スモモ)の総称。日本に流通しているプルーンの97%はカリフォルニア産で、そのほとんどが最高品種とされる南仏原産のダジャン種です。太陽の恵みをたっぷり受けて育ち、完熟した実だけを収穫するため、1粒1粒に天然の甘味がぎっしり。近年はミネラルやビタミンの栄養成分に加え、抗酸化値が高いポリフェノールや、バランス良く含まれた二種類の食物繊維による腸活効果でも、注目を集めているのです。
英国菓子とカリフォルニア産のプルーンは、意外な組み合わせのようにも思えますが、「ノープロブレム!」とステイシーさん。
「イギリスでも、中世の頃からお菓子作りにプルーンが盛んに使われてきました。ここにも、ちゃんとレシピが載っています!」
手にしているのは、14世紀にリチャード2世の料理人によって書かれたという料理本。自他ともに認める”歴女”のステイシーさんは、古書のコレクターでもあるのです! 中世まで遡らずとも、プルーン入りのブラウニーや、煮込んだピューレにカスタードをかけるデザートは、今でも家庭でよく作られるそう。
「カリフォルニア プルーンは、身がふっくらと柔らかくて、甘さと酸味と不思議なコクがあって。ホームメイドの焼き菓子には、とても使いやすい素材。“マイブーム”と言っていいほど、気に入っています」
カリフォルニア プルーンを英国菓子に
今回のMEETUPに登場するお菓子は、『料理通信』2018年5月号の誌面でも紹介された2品。英国菓子の定番ともいえるプディングとタルトを、プルーンと特に相性のよいチョコレートとカスタードとの組み合わせでアレンジしています。
● チョコレート スタウト プルーン プディング
ドーム型の形が可愛らしい漆黒のプディングは、イギリスに古くから伝わる「プリンス・アルバート・プディング」にヒントを得て完成させたステイシーさんオリジナル。黒ビールのスタウトに漬け込んだプルーンをふんだんに使い、ココアパウダー入りの生地に混ぜて、ふっくらと蒸し上げています。
「生地の上になる層には、漬け込んだプルーンをそのまま敷いて、存在感を出しました。漬け汁もソースの材料に使います」
レシピはこちら。
● 中世式プルーン&カスタードタルト
プルーンのフィリングとカスタードクリームが2層をなすタルトも、17世紀のレシピを紐解きながら、ステイシーさんが考案したレシピ。
「中世の料理本には、赤ワインとマルメロ(西洋カリン)をスパイスと一緒にピューレ状に煮込み、パイやタルトに仕立てるレシピがいっぱいあります。プルーンに代えて作ってみたら、想像以上においしかった! 火を通したプルーンのコクとチャーミングな酸味が、カスタードの甘さを引き立ててくれて」
伝統的なカスタードタルトが、キュートな表情のスイーツに生まれ変わりました。
レシピはこちら。
英国菓子ならではのプルーン使いを教わる
まずはステイシーさんのデモストレーションから。ステイシーさんによれば、ドライフルーツを黒ビールに漬け込むレシピは、イギリスでは無数にあるそう。今回はチョコレート麦芽のスタウトを使っています。
「ビール自体に甘味があるし、ブランデーやラム酒より風味が重くなりすぎない。プルーンの爽やかな甘酸っぱさともグッドバランス。おすすめです」
プルーンの生地に加えるバターの半量を、プルーンのピューレに代えているところがポイント。より、しっとり、もっちりした食感になるそうです。材料を合わせ、ハンドミキサーでペースト状になるまで混ぜたら、粗く刻んだプルーンを投入。
ここで、今回の実習用にステイシーさんがイギリスから取り寄せた、プラスチック製のプディング専用ボウルが登場!蓋が付いていて、湯煎方式で蒸す英国スタイルのプディングには使い勝手上々のスグレモノ。
「ゆっくり、じっくり火が入る“蒸し”の過程で、プルーンがふっくら、柔らかく戻されます。生の状態で、まず味見すると、後で、どう味が変わるか、よくわかりますよ」
続いて、カスタードタルトのフィリングの仕込みがスタート。シナモン、コリアンダー、ジンジャーなどのスパイスを、赤ワイン、プルーンとともに煮詰めていくにつれ、甘く香ばしい香りが広がります。
タルト生地の材料を、イギリス流にディナーナイフで混ぜるステイシーさん。「生地を伸ばす前に、麺棒でトントンたたきながら、波状に“ridging”すると、縮みが出にくいですよ」と、とっておきのコツも伝授されました。
自分で作って学びましょう!
MEETUP後半は、いよいよ実習編。今回の参加ゲストは、お菓子やパン作りのプロと趣味で楽しむ愛好家。2人1組になり、協力して2つのお菓子を仕上げます。
生地を練る。プルーンを刻む。ソースを作る。フィリングを煮る。タルト生地を型に敷き込む。初めて会ったゲスト同士も和気藹々、息もぴったりのチームワークで、手際よく作業を進めていきます。
「(プディングの生地は)ヘラですくって、もったりと落ちるくらいの柔らかさならOK」
「“空蒸し”にならないよう、鍋のお湯はこまめに足しましょう」
グループごとのテーブルを回りながら、細やかなアドバイスを送るステイシーさん。
全員無事に作り終えた後は、お待ちかねの試食タイムです。
蒸したて、ふわっふわのプディングには、「おいし~い!」の大合唱が。
「こんな複雑なコクが出るなんて」「プルーンの酸っぱいイメージが変わった」「ビールとの掛け合わせが面白い。懐の深さを感じる」など感想が飛び交います。
カスタードタルトについて、「フィリングのおいしさが衝撃的。フレンチトーストに添えたり、お肉のソースに使ってもおいしそう」「今まではノーマークだった、スパイスとプルーンの相性の良さ。スパイス好きなので、うれしい発見でした」という声も。
2種類のお菓子に共通して聞かれたのは、「プルーンって、こんな使い方ができたんだ!」という驚きの声。「プルーンmeets英国菓子」の体験を通して、新しい扉が開いたMEETUPでした。
◎ モーニングトン・クレセント
東京都港区東麻布2-14-3
カサド並木101
☎ 03-6441-0796
※営業日は不定期。ウェブサイトで要確認。
各線麻布十番駅より徒歩5分
http://mornington-crescent.co.jp/
◎カリフォルニア プルーン協会
☎ 03-3584-0866
http://www.prune.jp