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PEOPLE / 食の世界のスペシャリスト

鈴木鉄平さん&山代徹さん「青果ミコト屋」

第4話「消費が未来を変える」(全5話)

2016.04.01

そして、東日本大震災が起きた

2011年、30軒への配送からスタートしたミコト屋が軌道に乗り始めようとしていた頃、東日本大震災が起きました。

「震災後は、1カ月くらい配送をやめました。政府からの発表は信用できないけれど、正直、どこの野菜がどう危険かもわからない。これは無責任に野菜を届けられないなと」 この休業が後々、お客さんから信用されるきっかけになったと言います。

配送を復活させるまでの1カ月は、仕事はもとより、自分たちがどう生きるかという岐路に立ち、考えた日々だったと振り返ります。

そして、結論として動かないという決断をしたのでした。

「こうなってしまった原因を考えると、僕は消費のあり方だと思った。消費の意識が世の中を作って








る。便利なものにお金を払ってきた結果の事故だったんだと」
「僕たちだけが安全と言われている西に行ったところで、世の中の何も変わらない。未来を変える生き方やお金の使い方を発信するには、圧倒的情報量があって伝わる速度も早い首都圏にいようと思いました。ましてやここは僕らが生まれ育った土地なんだし」

農家や八百屋に憧れられる未来を





第1回目で、ミコト屋のビジュアルブックを紹介しました。
独立した時から、ミコト屋には活動を動画とスチールで撮影をしているビジュアルディレクターがいます。スチールはパンフレットやコンセプトブックに、動画はプロモーション映像として使う予定だといいます。


photograph by Masahiro"Lai Arai"
どちらもミコト屋のWEBサイトに使われている写真。畑や野菜の風景が、ミコト屋を物語る。


「農家さんは3K…稼げない・汚い・かっこわるいってイメージをもたれています。八百屋も同じ。僕らはミコト屋のビジュアルで、その認識をひっくり返して、八百屋ってかっこいいね、楽しそうだねという視点も持ってもらいたかった。そしたら自然栽培などの農業に興味を持ってもらえるかもしれないし、頑張っている農家さんにも新しい価値観が生まれるかもしれないから」

ブランディングというと、「自社の商品に付加価値をつけて、高く売るための手法」と捉える向きもあります。でも、ふたりが一連のブランディングで目指すのは「“特別”な野菜を“スタンダード”に広げる活動」なのです。

「街で『この野菜は安心・安全なオーガニックです』という表記を見ると、とても不思議な気持ちになる。売っている食べものが安心で安全なものであるのは、本来当たり前のことなのに、なぜか特別なことみたいに書かれている。安心・安全が当たり前の世界に変えるために、僕らはもっと、自分の消費するものに意識的になりたいと思うんです。何を基準に選んでいるのか、意志をもって選択すれば、僕らの未来はきっとよくなると信じています」

八百屋が未来を変えていく。

そんな突飛に思えることを信じる気になれるのも、彼らの自由な発想と、しなやかな行動力の賜物でしょう。
(次の記事へ)
text by Reiko Kakimoto


鈴木鉄平さん&山代徹さん(野菜の宅配・移動販売ユニット)
共に1979年神奈川県横浜市青葉区生まれ。高校で出会い、部活もアルバイトも一緒に過ごす。大学卒業後、同じ会社で働くことになるが2006年に退職。二人でネパール・インドの旅に出る。帰国後、自然食品販売店での仕事、農家研修等を経て、2011年、旅する八百屋「青果ミコト屋」を立ち上げる。野菜の宅配、イベント出店、加工品の販売などを行う。



























































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