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RECIPE

魚版の肉じゃが。カツオの新しい食べ方に出合うスペイン伝統料理「マルミタコ」

ブルーフード・レシピ

2023.06.15

魚版肉じゃが。カツオの新しい食べ方、スペイン「マルミタコ」

photographs by Masahiro Goda

連載:ブルーフード・レシピ

海に囲まれ、豊かな漁場を有する日本には魚食文化が根付いています。魚を食べるなかで培われ、受け継がれてきた知恵や知識を継承し、上手に食べることは、多様性豊かな海の保全につながります。日本周辺でとれる水産物(ブルーフード*)の魅力を再発見するレシピを人気店のシェフに教わります。今回はカツオ**で作るスペイン・バスクの伝統料理を紹介します。

*ブルーフードとは、淡水・海洋環境に由来する植物、動物、藻類など水生生物性食品のこと。食料危機や気候変動などの課題に対応し、健康的で持続可能な食料システム構築への貢献が期待されている。
**日本の漁獲量ランキング(農林水産省:令和3年漁業・養殖業生産統計)
1位マイワシ(21.1%)、2位サバ類(13.7%)、3位ホタテガイ(殻付き)(11.0%)、4位カツオ(7.6%)、5位スケトウダラ(5.4%)、6位カタクチイワシ(3.7%)、7位ブリ類(2.9%)、8位マアジ(2.8%)、9位マダラ(1.8%)、10位サケ類(1.8%)。

教えてくれたシェフ
東京・中野「イレーネ」数井理央(かずい・りお)さん

数井理央

スペイン料理店「イレーネ」オーナーシェフ。23 歳の時、2カ月のスペインの旅で偶然訪れたアリカンテでスペイン料理の道へ進むことを決意。帰国後、東京・四谷「ラ・タペリア(現在閉店)」オーナーのスペイン人シェフ、カルロス・ベロカル氏の下で修業し、29才で現店をオープン。2017年には店を半年間休業し、妻の故郷アリカンテで暮らした。


釣った魚を無駄にしないバスクの漁師飯

スペイン・バスク地方の郷土料理「マルミタコ」は、スペインで夏が旬の魚、ボニート(カツオ)で作られるため、昔は夏の料理だったが、今では通年作られるほどポピュラーに。ジャガイモに魚の旨味を含ませながら食べる。言わば、汁気多めの魚版肉じゃがだ。マグロバージョンもあるそうだ。

この料理、スペイン北部カンタブリア海でカツオやマグロ漁の合間に食べる漁師飯が発祥。長期にわたる漁の間、ジャガイモや乾燥パプリカなど長期保存できる食材と組み合わせて生まれたという説も。捕った魚を無駄にせず、シンプルな材料を組み合わせておいしく仕立てるスペイン漁師のレシピは、日本の食卓でも応用できそうだ。

「マルミタコ」材料と作り方

[材料](作りやすい分量)
カツオ・・・1柵
ジャガイモ・・・2個
ニンニク(みじん切り)・・・1片
タマネギ(スライス)・・・1/2個
ピーマン(スライス)・・・2個
トマト・・・1/4個
ピメントン(甘口の燻製タイプ)・・・適量
白ワイン・・・適量
ローリエ・・・1枚
E.V.オリーブ油、塩、小麦粉・・・各適量

[作り方]
[1]ニンニクの香りを出す
鍋にオリーブ油とニンニクを入れて弱火にかけ、香りが出てきたら、タマネギを透き通るまで炒める。

[2]野菜を加える
ピーマンを加えて軽く炒め、すりおろしたトマト、ピメントン、ジャガイモを包丁で割り入れて加える。

[3]白ワインを加えて煮る
白ワインを加え、アルコールを飛ばしたら水をかぶるくらい加えて、ローリエを入れ、蓋をして煮る。

[4]カツオを揚げ焼きする
カツオは1cm幅に切り、塩をふる。小麦粉を薄く付けオリーブ油で表面を揚げ焼きする。

[5]カツオを加える
ジャガイモに火が完全に入る手前でを加え、蓋をして5 ~ 10分煮る。塩で味を調える。

スペインの土鍋、カスエラで煮込む「マルミタコ」。バスク語で“from the pot”の意味で、タコはまったく関係ないです。

スペインの土鍋、カスエラで煮込む「マルミタコ」。バスク語で“from the pot”の意味で、タコはまったく関係ないです。



イレーネ

◎イレーネ
東京都中野区新井1-2-12
K’sポート101
☎03-3388-6206
17:30~21:30ラスト入店
月曜休
Facebook:@スペイン郷土料理イレーネ

※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。

(雑誌『料理通信』2017年9月号掲載)

海洋資源を保護し、持続的に利用する
今日からできる気候変動へのアクション

気候変動へのアクション

国連広報センターが「SDGメディア・コンパクト」に加盟する日本のメディア有志とともに、気候変動対策のアクションを呼び掛けるキャンペーン「1.5℃の約束 – いますぐ動こう、気温上昇を止めるために。」を実施しています。料理通信はこのキャンペーンに参加し、食にかかわる気候変動への取り組みを国内外から紹介しています。

海洋生態系による「ブルーカーボン」が温室効果ガス排出対策として期待されています。海の資源を守り、大切に使うことは気候変動対策につながることから、6月は、海洋保全について考え、アクションを起こすきっかけになる記事をお届けします。

●ActNow! 今すぐできる『10の行動』

「ActNow」は、個人レベルでの気候アクションをグローバルに呼びかける国連のキャンペーン。どんなことが気候変動の抑制に役立つのか、身近な行動を10項目挙げています。「環境に配慮した製品を選ぶ」では地産地消が、「廃棄食品を減らす」では食品を廃棄せず使い切ることが気候変動の防止に役立つとされています。

環境に配慮した製品を選ぶ
私たちが購入するあらゆるものが地球に影響を及ぼします。あなたには、どのような商品やサービスを支持するかを選択する力があります。自身が環境に及ぼす影響を軽減するために、地元の食品や旬の食材を購入し、責任を持って資源を使ったり、温室効果ガス排出や廃棄物の削減に力を入れていたりしている企業の製品を選びましょう。

廃棄食品を減らす

廃棄食品を減らす
食料を廃棄すると、食料の生産、加工、梱包、輸送のために使った資源やエネルギーも無駄になります。また、埋め立て地で食品が腐敗すると、強力な温室効果ガスの一種であるメタンガスが発生します。購入した食品は使い切り、食べ残しはすべて堆肥にしましょう。

(国連・ActNowキャンペーン:気候変動の抑制に対して個人でできる『10の行動』より)
イラスト:Niccolo Canova

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