日当たりのいい場所に置くだけ。「自家製乾物」
【DIYレシピ】「南風食堂」三原寛子さん
2023.09.04
text by Noriko Horikoshi / photographs by Hide Urabe
連載:DIYレシピ
塩蔵、乾燥、発酵・・・調理メソッド&テクニックを身に着けて、普段買っている食べ物を一から作ってみると、自分で味を作る喜びや安心感を得られます。天日に干したり、発酵させたり、自然の力にゆだねるレシピは、人間本位ではない生き方を学ぶ処方箋。シンプルな材料と道具で作れる自家製アイテムをシェフに教わります。今回は切って干すだけの「自家製乾物」を。野菜を大量に消費したいときにもおすすめです。
目次
教わるテクニック:天日干し
教えてくれた人:「南風食堂」三原寛子さん
材料を切って、日の当たる場所に置くだけ!
タイトルもずばり、『乾物の本』を著書に持つ三原寛子さんは、言わば“その道のプロ”の人。賢人直々に教えを乞うとあって、勇んでメモを構えていたならば。「材料を切って、日の当たる場所に置く。ベランダでも、部屋の中でもOK。ただそれだけです」
端折って言えば「切って干す」。たったの5文字! ハードルが高いと決めてかかっていた自家製の乾物作りが、ぐっと近しいものに思えてきた。
「旬の野菜や果物はおいしいけれど、一度に使いきれないのが悩みのタネ。余った分は乾物にして保存すれば、『早く使いきらなきゃ』というストレスから解放されます。そのまま使える“切り干し”サイズだから、さっと一品作りたいときのレパートリーも広がって、一石二鳥です」
三原流の乾物は、とにかく彩りが美しい。赤カブ、パプリカ、プチトマト、イチゴ、金柑、キウイ。ありがちな茶系ばかりでない、原色の鮮やかさに気分が上がる。カラカラになるまで干したら、保存袋に。半乾きのレア状態を、そのままサラダや和えものに使ってもいい。干し加減を好みに合わせて調整できる自由度の高さは、自家製なればこそ。少々鮮度が落ちていても心配ご無用。逆に水分が早く抜けて、仕上がりは上々だ。
切る手間の代わりに、火を入れてから干すのが向く素材も。ホタテなどの魚介類は、塩茹でしながら煮汁を絡ませる下処理を。傷みにくくなり、干し上がりの風味もぐんとアップする。
「しばらくおくと、表面にちりちりと細かいシワが寄ってきて、カワイイなあって(笑)。育ててる感が味わえるのが、またいいんです」
晴れの日の楽しみが、またひとつ増えた。
自家製乾物の極意
1 パプリカなど色鮮やかな野菜を乾物に
2 余りそうな食材を干して保存
3 室内でも、夜間でも、オーブンでも!
材料と作り方
[材料](すべて適量)
<干し野菜>
パプリカ(赤、黄)
大根(白、赤など)
ニンジン、プチトマト、エノキ
※キュウリ、シイタケ、マイタケなどキノコ類もOK
<干し貝柱>
ホタテの貝柱
<ドライフルーツ>
キウイ、イチゴ、金柑
※バナナ、マンゴー、パイナップルなどもOK
[作り方]
[1]野菜や果物を切る
野菜、果物を適当な大きさに切る。イチゴやパプリカ、トマトなど水分を多く含む野菜は、切った後、ペーパータオルで表面の水分を拭き取る。
[2] 干す
竹ザルなどの上に並べ、日当たりのよい場所に置く。屋外に干す場合は風で飛ばないようカバーをつける。
[3]向きを変えて均一に乾かす
日に当たるほうが早く乾くので、途中で向きを変える。ザルの上で置き場所を変えるとカビが出にくい。
[4]乾燥させる
少しずつ水分が抜けていく。食材、切り方によって乾き方、乾く速度に違いが出る。日当たりがよくない場合は、90℃のオーブンで乾燥させてもよい。
[5]完成のタイミングはお好みで
半乾き、しんなり、カラカラ・・・乾き方を見守りながら、段階で変わる食感や風味を楽しみ、用途を広げる。
[6]貝柱は塩茹でしてから干す
貝柱は、大さじ1/2の塩を加えた水80mlで茹でて汁気がなくなるまで煮詰める。乾きやすいように、竹串に刺して1週間程度乾かす。
[7]完成
◆仕込み時間:2~7日程度 ◆保存方法:常温。冷凍してもよい
<道具のポイント>
ネット付き干しザル:1台あれば重宝のネット付き竹ザル。普通のザルでも問題ないが、使う前に天日に当てて十分に乾燥させ、カビ防止を。
脱酸素剤:保存はチャック付きの冷凍・冷蔵バッグで。脱酸素剤を入れ、空気をしっかり抜くこと。冷凍保存ももちろんOK。
料理の展開例:
左)雑穀と乾物のタブレ・・・天日干しの乾燥野菜4種(プチトマト、パプリカ、大根、エノキ)を使ったタブレ。水で戻さず、雑穀とドレッシングの水分で適度な歯応え、柔らかさに。
右)ホタテのベトナム風おこわ・・・干して滋味が増したホタテを、ご飯と一緒に炊き込んで。ニョクマムの旨味も隠し味にほんのり。干し貝柱はスープ、お粥の具材に使っても美味。
(雑誌『料理通信』2018年4月号掲載)
掲載号はこちら
関連リンク