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RECIPE

旬の野菜を長く楽しむプロの技「カボチャのコンフィチュール」

【DIYレシピ】「ラ・ヴィエイユ・フランス」木村成克シェフ

2023.11.06

身近な野菜を主役に!「カボチャのコンフィチュール」

text by Kei Sasaki / photographs by Masahiro Goda

連載:DIYレシピ

塩蔵、乾燥、発酵・・・調理メソッド&テクニックを身に着けて、普段買っている食べ物を一から作ってみると、自分で味を作る喜びや安心感を得られます。天日に干したり、発酵させたり、自然の力にゆだねるレシピは、人間本位ではない生き方を学ぶ処方箋。シンプルな材料と道具で作れる自家製アイテムをシェフに教わります。今回は果物より手に入りやすい野菜を使ったコンフィチュール。シンプルな工程ながらコツが満載です。

目次






教えてくれたシェフ:「ラ・ヴィエイユ・フランス」木村成克シェフ

教えてくれたシェフ:「ラ・ヴィエイユ・フランス」木村成克シェフ

大阪府生まれ。日本での修業を経て、1987年渡仏、ストラスブール「パティスリー・ネゲル」へ。パリ「ラ・ヴィエイユ・フランス」で親方のルネ・エルマベシエール氏に師事し、日本人初のシェフ・パティシエ就任。1998年帰国後、数店のシェフを経て、2007年、修業先の名を掲げた現店オープン。本場仕込みの伝統菓子が並ぶ。


コンフィチュールを身近な“野菜”で作る

野菜のコンフィチュール、ありかも。木村成克シェフがそう気付いたのは修業時代、フランス南西部のある店でタマネギのコンフィチュールを食べた時だったという。

「フォワグラ料理の付け合わせだったんですが、強い旨味にタマネギの自然な甘さが合うんですよ」 見よう見真似で作ったのが「意外とイケた」ものだから、以降、野菜はコンフィチュールの材料に。年間で計4、5種類をラインナップしている。

カボチャのコンフィチュールの材料は、砂糖、バニラ、生クリーム、シナモンとベーシック。「作り方も簡単。茹でて、ペーストにして、砂糖を加えて炊くだけですわ」と、笑うが、作業には“コツ”が詰まっていた。茹でる時に火が強いと、周りだけが早く柔らかくなり過ぎ、水っぽくなってしまうから、沸騰しない火加減をキープ。ペーストを炊く時は、「余分な水分を飛ばす」イメージで。濃度がある分、焦げやすいので、とにかく混ぜ続けること。もちろん弱火が鉄則だ。

「バターを加えてもいいけれど、生クリームだけのほうが流動性が高くなる。どんなテクスチャーにしたいか、瓶詰めの状態で常温保存できるようにするか否かで、材料も作り方も変わってきます」

仕上げに加えるシナモンは、風味付けというより味を「締める」役割だという。実際、炊いている時は豊かな香りが漂うが、完成品に過度なスパイシーさは感じない。優しい甘味とコクが、ぴったりと一体化したおいしさだ。

「ヨーロッパでは塩蔵品と同じ保存食。きちんと作れば日持ちし、旬を長く味わえます。プロが作れば、流通に乗らない野菜に新たな価値を付けられる。農家を支える意味でも意義があるんです」


自家製「野菜のコンフィチュール」の極意


1 果物より手に入れやすい“野菜”で作る
2 とれ過ぎた野菜はコンフィチュールに!
3 甘さ控えめ、チーズにも合う。

材料と作り方

材料と作り方

[材料](100ml瓶17個分)
カボチャ(ペーストにした状態)・・・2050g
砂糖・・・705g
生クリーム(35%)・・・448g
シナモン・・・1g
バニラビーンズ・・・1本
バニラ(リキッド)・・・1g

道具のポイント

道具のポイント

銅鍋がベスト
コンフィチュールを炊くのは熱伝導性と蓄熱性に優れた銅鍋。乳製品を使う際は、ステンレスコーティングされたもので。

[作り方]
[1]カボチャを切る

カボチャを切る

カボチャは種とわたを取って皮を剥き、適当な大きさに揃えて切る。

[2] カボチャを煮る

カボチャを煮る

鍋にカボチャとひたひたに浸かる量の水を入れて火にかける。中~弱火で柔らかくなるまで煮る。途中でアクを取る。

[3]水けを切って、ペースト状にする

水けを切って、ペースト状にする

ザルに上げて水気を切る。ミキサーで撹拌し、滑らかなペーストにして計量する。

[4]カボチャペーストを炊く


カボチャペーストを炊く

銅鍋に分量のカボチャと残りの材料を加える。鍋を中火にかけ、ゴムベラでの字を書くように混ぜる。
POINT:焦げ付きやすいので混ぜ続ける。

[5]ぽったりする濃度まで炊く

ぽったりする濃度まで炊く

フツフツと沸く程度の火加減で、絶えず混ぜながら煮詰める。ぽったりする濃度になったら火から下ろす。

フツフツと沸く程度の火加減で、絶えず混ぜながら煮詰める。ぽったりする濃度になったら火から下ろす。

この状態を目指す。保存性を高めるためにも余分な水分をしっかり飛ばし、かつ、滑らかさも残る濃度に。ヘラですくってゆっくり落ちる程度。

[6]瓶に詰める

瓶に詰める

殺菌した瓶に、が熱いうちに瓶の9分目まで詰める。蓋をして逆さにして冷ます。

[7]長期保存する場合(脱気)


長期保存する場合(脱気)

コンフィチュールを詰めて蓋をして、65℃のオーブンで1時間加熱して脱気殺菌する。またはゆるめに蓋をして鍋に入れ、半分浸かる量の湯を注ぎ、20分ほど煮る。瓶を取り出し、蓋をしっかり閉めて瓶を逆さにして冷ます。


仕込み時間:1時間
食べごろ:すぐ
保存方法:常温で6カ月

「カボチャのコンフィチュール」の展開例

「カボチャのコンフィチュール」の展開例

アイスとカボチャのコンフィチュールをライスペーパーで巻いたデザートは、マダム考案の1品。ひんやり食感の中にカボチャの自然な甘さ、ミントの清涼感、ナッツの香ばしさがあり、後味すっきり。


東京・千歳烏山「ラ・ヴィエイユ・フランス」の店舗情報


◎ラ・ヴィエイユ・フランス
東京都世田谷区粕谷4-15-6
グランデュール千歳烏山1F
☎03-5314-3530
10:00 ~ 19:30
月曜休(祝日の場合は翌日休)
京王線千歳烏山駅より徒歩8分
https://www.lavieillefrance.jp/

(雑誌『料理通信』2018年4月号掲載)

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