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RECIPE

乾き物とは思えない極上の旨味「ブイヤベース風スープ」

フェーズフリーな食材レシピ:乾物・缶詰

2024.03.14

乾き物とは思えない極上の旨味「ブイヤベース風スープ」

photographs by Kiyu Kobayashi

連載:フェーズフリーな食材レシピ

乾物や缶詰など、常温で長期保存でき、ビタミンやミネラルなど栄養価も高い食材は、備蓄食品にも向く優れもの。普段の食事で使い慣れておくことで、「いざという時に賞味期限が切れていた」「食べ慣れない味で食が進まない」という問題も避けられます。「いつも」と「もしも」をつなぐフェーズフリー*な食材を、おいしく活用するレシピ。今回はアウトドアで重宝する乾物や缶詰を活用したレシピを紹介。防災に通じるアウトドア・テクニックも必読です。

目次







常備したい食材:乾物・缶詰
教えてくれた人:料理家・蓮池陽子さん

蓮池陽子さん

山とアウトドアを愛する料理家。商品開発、フードコーディネート、ケータリングを行う。バウルーを使ったホットサンドレシピ本、『アウトドアでホットサンド』(山と渓谷社)など料理本を多数手掛ける。アウトドアの知見を活かし、防災のプロと共に防災ワークショップも開催。

汎用性の高い道具&食材を使う

登山やトレッキングでは荷物を最小限にするために、道具も食材も厳選しなくてはいけません。例えば、最近人気のシェラカップは、食器にも鍋にもなる登山者の定番アイテムです。キャンプなら玉じゃくしや計量カップとしても使えます。何役も兼ねる道具を選ぶと荷物が減らせますよ。

食材も同様に、用途に広がりがあるものを選びたい。乾物のような軽くて、常温でも傷みにくい保存食類は便利。下味を付けた肉を凍らせて保冷剤にしたり、米を浸水させて持参したり、現地での調理の手間、時間を減らすために事前の仕込みもポイントです。

アウトドアではBBQなど「焼く」調理が多くなりがちですが、火加減が難しい面も。「茹でる」調理にすると失敗が少なく、洗いものも楽になります。制約のある環境で、快適に調理するためには、従来の用途、方法にこだわらない、発想の転換が大事なのです。

「ブイヤベース風スープ」材料と作り方

【材料(作りやすい分量)
あたりめ(2~3㎝の長さに切る)・・・20本程度
焼きエビ・・・10g
サフラン・・・ひとつまみ
ニンニク(潰す)・・・1かけ
オリーブ油・・・大さじ1
タマネギ(中、1㎝角に切る)・・・1/2個
アサリの水煮・・・1缶
白ワイン・・・50ml
ジャガイモ(1㎝のさいの目)・・・2個
トマトピュレ・・・120ml
ミニトマト(半分に切る)・・・10個
塩、コショウ・・・各適量
イタリアンパセリ(みじん切り)、アイオリ*、バゲット・・・各適量
*マヨネーズ大さじ2~3、すりおろしたニンニク1/2片を混ぜ合わせる。

【アウトドア・テクニック1】
コンビニ食材をだしに活用。乾きものはストック食材としても重宝。

あたりめ、アサリの水煮缶、干しエビなど、コンビニやスーパーで買える食材でも、手軽に“いいだし”が取れる。うま味調味料を使わずとも、手軽にできるだしの取り方を覚えておきたい。

【アウトドア・テクニック2
乾物を活用する。

軽くて劣化しない乾物は強い味方。切干大根はサラダに。油麩はコクが出る。おでんにも◎。わかめは料理をボリュームアップ。塩昆布は旨味、酸味のあるゆかりはスパイス替わりに。

【作り方
[1]乾物を戻す
熱湯(500ml)にあたりめ、焼きエビ、サフランを入れて30 分ほどおく。

[2]香味野菜を炒める
鍋にニンニク、オリーブ油を入れて弱火にかけ、香りが出たらタマネギを加えて炒める。

[3]アサリとワインを入れる
タマネギがしんなりしたら、アサリと白ワインを加え、アルコールを飛ばす。

[4]具材を入れて煮る
1、ジャガイモ、トマトピュレ、塩少量を加え、ジャガイモが軟らかくなるまで煮る。

[5]トマトを加え味を調える
トマトを加え軽く煮て、塩、コショウで味を調える。

[6]仕上げ
器に盛り、イタリアンパセリをふり、アイオリ、バゲットを添える。

生の魚介は入っていないのに旨味たっぷり。あたりめのポテンシャルの高さに唸る。ごはんで雑炊、リゾットにしても◎。 

「ビーフクリームパスタ」材料と作り方

【材料(作りやすい分量)
パスタ(乾燥)・・・150g
牛挽き肉・・・150g
タマネギ(みじん切り)・・・1/3個
マッシュルーム(薄切り)・・・4個
白ワイン・・・50ml
生クリーム・・・150ml
水・・・150ml
レモン汁・・・小さじ1弱
オリーブ油・・・大さじ1
塩、コショウ・・・各適量

【アウトドア・テクニック3】
パスタは茹でずに水に浸ける! 水の節約にもなる。


パスタは、乾麺を茹でなくてはならないため、アウトドアでは敬遠されがちだが、水に1時間程度浸けると(写真下)、茹でる工程が不要になる。調理時間も短縮され、少量の水で調理できるのでアウトドア向き。出来上がりも、生麺のようなモチモチした食感に。1日程度、冷蔵保存できるので、事前に仕込んでもよい。

【作り方】
[下準備]
パスタは、バットや袋に入れ、かぶる程度の水に1~2時間浸ける。

[1]食材を鍋に入れる
牛挽き肉に塩少量を混ぜる。鍋(または深さのあるフライパン)にオリーブ油を熱し、肉、空いている部分にタマネギ、マッシュルームを入れる。

[2]肉を焼き付ける
中火にして時々野菜を混ぜながら、肉に焼き色をつける。

[3]ソースの材料とパスタを加える
肉を裏返して少し焼いたら、白ワインを加え、肉を崩しながら混ぜる。生クリーム、水、塩少量、水を切ったパスタを加える。

[4]煮る

パスタを混ぜつつ、麺の色が変わるまで中火で加熱する。レモン汁、塩、コショウで味を調えて火を止める(麺の色が変わってから30秒~1分で完成が目安)。水分が足りないようなら水を少量加える。

[6]仕上げ
器に盛りつけ、マッシュルーム、イタリアンパセリ(ともに分量外)を飾る。

防災食にもなる時短&エコパスタ。リッチなクリームソースがモチモチのパスタによく絡む。

*フェーズフリー(Phase Free)は、防災の専門家として活動を続けてきた佐藤唯行氏が2014年に提唱した考え方。

(雑誌『料理通信』2020年11・12月合併号掲載)

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