プラントベースの始め方02
スペインの即席調味料で仕上げる ヒヨコ豆とホウレン草の煮込み
大阪 「アマ・ルール」
2021.11.25
photographs by Jun Kozai
連載:プラントベースの始め方
健康や環境への配慮から、植物性の食材を主体とする“プラントベース”な食事法が注目されています。肉や魚や乳製品に頼らずとも「おいしい」料理を作る知恵は、世界各地に存在します。身近なレシピからおいしくプラントベースを始めるヒントを紹介します。
教えてくれたシェフ
大阪 「アマ・ルール」中村篤志シェフ
野菜と油で作る、即席調味料
中村さんはサン・セバスティアンの「ルイス・イリサール」で19歳から2年、スペイン料理の基礎を学んだ。授業ではバスクに限らずスペイン各地の郷土料理を一通り実習する。アンダルシア地方のヒヨコ豆とホウレン草の煮込みを習った時のこと。担当の先生がこんなひと言を言った。
「スペイン料理は、マハーダの料理と言ってもいい」
調味料が少ないと言われるスペイン料理にあって、マハーダはまさに調味料的な役割を担う。「ニンニクをすり潰したものがベースで、料理によってスパイスやハーブを変えて、煮込む際に加えます」。ちょっとした自家製の即席調味料といったところか。さらにこの料理では、仕上げにも別の即席調味料が登場する。オリーブ油にニンニクとピメントンの香りを移した熱々の香味オイルだ。
「煮込みやスープの最後に加えて味を調える"レフリート"という調理法です。中国料理では仕上げに少量のゴマ油で味をまとめますが、あの感覚に近いかもしれません」。レフリートは少量加えることもあれば、ヒヨコ豆とホウレン草の煮込みのように、料理全体が赤く染まるくらいたっぷり加えることもある。スペイン料理の赤はトマトではなく、ピメントンで作られていることが多いのは、このレフリートの技によるところが大きい。
<植物性食材だけでおいしくなるコツ>
1 煮込みの仕上げにピメントンの香味オイルをかける。
2 ピメントンは長時間煮込むと香りが弱まり、苦味が出るので、仕上げに合わせてオリーブ油にニンニクとピメントンの香りを移し、最後にジャーッと加える。
スペインの即席調味料「マハーダ」の作り方
「スペイン料理はマハーダの料理」という先生もいたほど、伝統的な調味のワザ。ベースはニンニクをすり潰したもので、料理に合わせてスパイスやパセリで風味をつけ、煮込みに加える。とろみが欲しい時にはパンをプラス。
[材料]
ニンニク・・・4片
パン・・・50g(1㎝厚さ6 ~ 7枚)
クミン・・・3g
赤ワインビネガー・・・適量
E.V.オリーブ油・・・適量
[作り方]
1.フライパンにE.V.オリーブ油とニンニクを入れて弱火にかけ、10分程かけて香りを引き出したら、ニンニクを取り出し、パンをきつね色にこんがりと揚げ焼きする。
2.モルテロ(なければすり鉢)で1のニンニクとパン、クミンを加えてすりつぶし、赤ワインビネガーでもったりとしたペースト状にする。
「ヒヨコ豆とホウレン草の煮込み」の作り方
[材 料 (作りやすい分量)]
茹でヒヨコ豆・・・150g
ホウレン草・・・5株
マハーダ・・・大さじ山盛り3
E.V.オリーブ油、塩・・・各適量
〈レフリート〉
E.V.オリーブ油・・・大さじ3
ニンニク・・・1/2片
ピメントン・・・大さじ1
<ヒヨコ豆の下準備>
豆500g は一晩水に浸す。水切りした豆と、新しい水3~4L、クローブを刺したタマネギ1個とローリエ1枚、オリーブ油、塩を各少量加えて、弱火にかけ、柔らかくなるまで煮る。
[1]ホウレン草を塩茹でする
塩とオリーブ油を加えた湯でホウレン草を茹で、ザルにあげる。水にはさらさない。
[2]豆、ホウレン草、マハーダを煮る
ヒヨコ豆(茹で汁も)とホウレン草、マハーダを入れ、水をひたひたになるまで加え、蓋をして中火で10~15分煮る。
[3]レフリートを作る
レフリートを用意する。小さなフライパンにオリーブ油と一度潰してからみじん切りにしたニンニクを入れ弱火にかける
香りが立ったら、ピメントンを加えて香りを移す。
[4]レフリートを混ぜ合わせる
2に熱々の3をかけ、全体を混ぜる。
◎アマ・ルール
大阪府大阪市北区堂島2-1-16
フジタ東洋紡ビル1F
☎06-6451-8383
11:30 ~ 14:00LO
17:30 ~ 24:00LO
日曜休
※新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため要請に合わせて営業時間が変わることがあります。
(雑誌『料理通信』2017年9月号掲載)