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RECIPE

1時間かけて、 野生の味を呼び起こす「蒸し百合根」

プラントベースの始め方38

2024.01.15

text by Kaori Shibata / photographs by Sai Santo

連載:プラントベースの始め方

健康や環境への配慮から、植物性の食材を主体とする“プラントベース(Plant Based)”な食事法が注目されています。肉や魚や乳製品に頼らずとも「おいしい」料理を作る知恵は、世界各地に存在します。身近なレシピからおいしくプラントベースを始めるヒントを紹介します。

教えてくれたシェフ
東京・芝「江戸前 芝浜」海原大さん

逗子「日影茶屋」新橋「心米」などを経て、16年に芝「太華」を開店。薄めのだしで炊いた「芝煮」の味が忘れられず、江戸料理を独学で学び始める。21年6月に移転。「江戸前 芝浜」としてリニューアル。


時間は贅沢に、
調味料はミニマルに。

「芝浜」という落語がある。江戸時代の魚の行商人が主人公で、海の身近だった江戸・東京の庶民生活が偲ばれる話だ。江戸時代、芝にも小さな市場があり芝浦でも魚やエビなどが採れた。

3年前、芝にオープンした和食「太華」(現「江戸前 芝浜」)主人の海原大(ひろし)さんは、江戸前の魚として人気のあった芝エビを偏愛し、料理本や浮世絵、学者との交流から江戸の日常料理を研究している。当時の料理本にレシピの記載はないので、ある情報全てを総動員し想像力で補う。結果、再現料理とは異なる、新次元の江戸料理になっているのではと思う。

「庶民の料理は、調味料も贅沢なものは使えなかったはず」と、主に使うのは塩、酒、鰹節、味噌。醤油、みりん、砂糖は江戸時代後期に広がるが、これらは極力使わない。ミニマルな調味料使いにより、素材細部の味わいがあぶりだされる料理が特徴的だ。

「蒸し百合根」は、普段は脇役の百合根を、一気に主役級の味に引き上げる一品。塩は一度に振らず、ひとひらずつ軽く押しつける。

シンプルで奇をてらわなくとも、時間の意味ある使い方を追求すれば、料理の新境地は、まだ開けるのでないか。その一端を、現代人の知らない新しい江戸料理は教えてくれる。

<植物性食材だけでおいしくなるコツ>


1 均等に火が入るように、重ならないように並べる
2 白から透明、さらに黄味がかるまで蒸す


「蒸し百合根」の作り方

[材 料 (1人分)]

百合根・・・1個

【作り方】
【1】一つずつ鱗茎を外し、水洗いしてオガクズを丁寧に除く。

【2】ザルに一枚ずつ重ならないように、均等に並べ、1時間蒸す。

10分経過__色は白いまま

味わいは淡泊だがホクホクの食感を楽しむなら、この状態で十分美味。

40分経過__全体が透き通る

この段階で食感はホクホク→ねっちりへ。

60分経過__ほんのり黄味がかる

ここでぐっと百合根の野生的な味わいがせり出てくる。塩(分量外)をひとひらずつ軽く押しつける。



◎江戸前 芝浜
東京都港区芝2-22-23 冨味ビル1階
☎03-3453-6888
17:00~23:30
木曜休
http://www.taika-shiba.com/

※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。

(雑誌『料理通信』2019年4月号掲載)

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