シチリアおじさんの昼飲みの友。牛くず肉サンド「フリットラ」
レスキューレシピ【捨てないレシピ編】
2023.03.23
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photographs by Sai Santo
連載:レスキューレシピ
日本の食品ロス量は年間570万トン*と言われています。生鮮食品においても、豊作で余ったり、規格外、傷、スレがあって売り物にならず、行き場のない食品が日々廃棄されているのです。家庭内で料理中に出る端材や余らせがちなパーツも、新たな魅力を見出し、活用法を考えることで捨てる量を減らせます。食材を無駄にせず、おいしく食べるための活用術をシェフの技に学びます。
*農林水産省「日本の食品ロスの状況(令和元年度)」
目次
教えてくれたシェフ
神奈川・厚木「フィーコディンディア」横井拓広さん
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シチリア郷土料理店「フィーコディンディア」オーナーシェフ。1970年神奈川県生まれ。調理師学校、製菓学校を卒業後、パティシエとして7年間経験を積んだ後、27歳で料理の世界へ。伊・シチリアや「トラットリア・ダ・トンマズィーノ」などで修業後、2009年現店開店。
残りものが“ごちそう”に大変身
シチリアの市場で大人気の屋台飯です。昼時になるとおじさんたちが店の周りをぐるりと囲んで、まるで親鳥からエサを欲しがるヒナたちみたいに群がるんです。
フリットラは牛のくず肉煮込み。肉を解体する時、パーツに分けますね。そこから残った血管やアキレス腱、骨に付いた肉片なんかを、焼いて煮込むんです。使う部位はその時々で違うから、コリコリしたり、ねっちりしたり、食感は様々。これがかみしめるほどに旨いの。温かいフリットラはカゴに入れて布に包まれていて、店の人は素手で取り出し、パンに挟む。そのまま食べる人は手にペーパーを敷いて店の人に差し出す。
レシピは教えるのもはばかられる程、超シンプル。肉を強火で焼いて水から煮るだけ。肉の部位は軟骨とか牛スジとかゼラチン質のあるものをバランスよく入れると味も良く、食感も楽しい。強火で香ばしさを出して。脂が多く出るから、捨ててから煮込みます。やわらかくなったら一日寝かせて完成。寝かせると肉から染み出た旨味が再び肉に戻り、味もなじむ。
パンはシチリアのゴマをふったパン。甘くない塩味のシンプルなものです。ややドライで歯切れがよいと、かみしめる肉とちょうどよいバランスに。
現地ではどの部位も一緒に煮るから、たまに硬っ!てのも混じってて、みんなペッて口から出す。相棒はコップで飲む赤ワインで決まりです。
牛くず肉のサンドイッチ「フリットラ」材料と作り方
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[材料](作りやすい分量)
牛のくず肉(アキレス腱、牛スジ、ハツの周りの肉、血管)・・・各適量
オリーブ油・・・適量
塩・・・肉の重量の約1%の量
コショウ・・・適量
パン(1人分)・・・1個
レモン・・・1個
<材料のポイント>
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肉は、牛スジなどのゼラチン質、脂身、赤身類をバランスよく混ぜると味がよくなる。現地では軟骨類が入ることもある。
[作り方]
[1]フライパンを強火で熱する
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フライパンにオリーブ油を強火で熱し、くず肉を加える。
[2]両面に焼き色をつける
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5、6分程、両面にこんがり香ばしく焼き色が付くまでしっかり焼く。
POINT:煮込んだ時に、香ばしさが残る。
[3]脂を捨てる。
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ザルに上げて、余分な脂を捨てる。
[4]部位に分けて煮る
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火の通りにくいアキレス腱と、その他の部位に分けてそれぞれ鍋に入れ、ひたひたの水、塩を加え、火にかける。
POINT:塩加減は1%が目安。
[5] やわらかくなるまで煮る
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沸騰したらアクを引き、やわらかくなるまで弱火で煮る。アキレス腱が約3時間、それ以外が約1時間。
[6]1日寝かせる
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茹で上がったら煮汁ごと合わせて1日寝かせる。鍋に適量の煮汁と肉を入れて火にかけて軽く温める。
POINT:寝かせている間に一度外に出た肉汁が、再び肉に戻る。
[7]食べやすい大きさに切る
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6の肉を取り出し、食べやすい大きさに切る
[8]パンに挟む
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パンの中身をくりぬき、7を詰める。コショウをふり、レモンを搾る。
POINT:サクッと歯切れのよいパンを選ぶと、かみしめる肉とよいバランスに。
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牛くず肉の部位ごとに違う食感を、かみしめながら味わう。肉は強火で焼いて、しっかりと香ばしさを出す。食べる直前にコショウとレモンをたっぷりと。
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◎フィーコディンディア
神奈川県厚木市旭町1-24-16
☎046-265-0297
11:30~14:00LO
17:30~21:00LO
月曜休
小田急線本厚木駅より徒歩2分
https://ficodindia.owst.jp/
※新型コロナウイルス感染拡大等により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
(雑誌『料理通信』2020年5月号掲載)
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