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RECIPE

春を感じる味わい。「春キャベツのすりながし」

レスキューレシピ【キャベツ編】

2023.04.06

春を感じる味わい。「春キャベツのすりながし」

photographs by Masahiro Goda

連載:レスキューレシピ

日本の食品ロス量は年間570万トン*と言われています。生鮮食品においても、豊作で余ったり、規格外、傷、スレがあって売り物にならず、行き場のない食品が日々廃棄されているのです。生産者が丹精込めて作った食材を無駄にしないための食材活用レシピをシェフに教わります。今回はキャベツを使ったレシピを紹介します。
*農林水産省「日本の食品ロスの状況(令和元年度)」

目次






教えてくれたシェフ:東京「白金高輪 わたなべ」渡邊大将さん

東京「白金高輪 わたなべ」渡邊大将さん

完全予約制の日本料理店「白金高輪 わたなべ」店主。山梨県出身。喫茶店を経営する父、実家が和菓子店の母を持ち、食が身近にある環境で育つ。高校卒業後、ワーキングホリデーでオーストラリアに滞在。帰国後、東京・学芸大学「件」などを経て2014年三軒茶屋に和食店「鈴しろ」を開店。2019年に同店を閉店し、2021年に現店をオープン。

「食材」×「だし」のバリエーション

例えばうだるような暑い日はキリッと冷えたトウモロコシのすりながしで喉を潤す。凍えるような寒い日はほっこり甘いカブをみぞれ仕立てにして体を温める。ある時はじっくり炒めたタマネギの華やかなコクで、次の料理への期待を膨らませる。

僕にとってすりながしは季節を感じながら、味わってもらうもの。だから体にダイレクトに響くと思う。「あぁ、もうそんな頃か」と、繊細な四季の移ろいを感じてもらえたら嬉しいです。

すりながしのネタは尽きません。バリエーションが豊富なんです。まず素材を考える。旬の野菜、魚介、そして調理法。素材の味わいを最も引き出す方法は何か。炒めるか茹でるか、焼くか。

次にだし。だしはかつおと昆布の一番だしが基本ですが、牡蠣やアサリなどの貝類でほのかな潮の香りを、いりこのだしでグッと骨太な味に仕上げるのもいい。撹拌の道具は家庭用ミキサーで十分。口当たりが気になる場合は漉して、最後は必ず一度火にかけて味を均一にします。

すりながしは、他の料理にも展開が可能です。味わいが強いネギのすりながしは香ばしく焼いた焼き鶏にかけてソースにしたり、白子のすりながしは素麺を入れてにゅうめんに、ご飯を入れて雑炊にもできる。コクのあるすりながしは、具を入れても負けない面白さがありますよ。

新タマネギ×いりこと昆布だし、春キャベツ×アサリだし、トウモロコシ×昆布だし、カブ×かつおと昆布だし。

旬の素材をしみじみ味わえる和のスープ、すりながし。素材の味わいを引き出す調理法、だしを組み合わせ、バリエーションは豊富に広がる。写真右上から時計回りに、新タマネギ×いりこと昆布だし、春キャベツ×アサリだし、トウモロコシ×昆布だし、カブ×かつおと昆布だし。


春キャベツ×アサリだしで作る「すりながし」材料と作り方

[材料](作りやすい分量)
キャベツ(ざく切り)・・・1/2個
太白ゴマ油・・・適量

・アサリだし(作りやすい分量)
アサリ・・・500g
水・・・1L

[作り方]
[1] アサリを砂抜きせず煮出す

アサリを砂抜きせず煮出す

鍋にアサリと水を加えて煮立て、アクを引き、弱火で10分煮る。アサリを取り除く。この場合、砂はスープに出てこない。

[2] 春キャベツは炒めて青臭さをとる

春キャベツは炒めて青臭さをとる

フライパンに太白ゴマ油を引き、キャベツを加えて中火で軽く炒める。

[3] アサリだしで炊く

アサリだしで炊く

アサリだしに炒めたキャベツを加えて煮る。キャベツが透き通ってきたら火を止め、粗熱をとる。

[4] ミキサーにかける

ミキサーにかける

ミキサーにかける。鍋に入れて再び火にかけ、塩で味を調える。

「すりながし」

やわらかくて淡い甘さが魅力の春キャベツには、同じ春が旬のアサリだしを。あえて砂抜きせずにだしを引き、旨味をアップ。ほんのり潮の香り漂うおだやかな味わい。ゴマを散らして。


「白金高輪 わたなべ」店舗情報


白金高輪 わたなべ

◎白金高輪 わたなべ
東京都港区白金1-29-9 ライオンズマンション白金東 1F
☎ 03-6277-1733
17:00~24:00(完全予約制)
不定休 
各線白金高輪駅から徒歩1分

※新型コロナウイルス感染拡大等により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。

(雑誌『料理通信』2019年4月号掲載)

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