フレンチの名店に教わる、ワインが進む「フレンチ モツ煮込み」
スローレシピ10
2023.01.26
photographs by Hide Urabe
連載:スローレシピ
材料をイチから用意し、時間をかけて、料理すること自体をゆっくりと楽しむ。それが“スローなレシピ”。時短とは真逆の価値観の先に、とびきりの味が待っています。今月は、体も心も温まる、スローな煮込みレシピを紹介します。
教えてくれたシェフ
東京・六本木「ル・ブルギニオン」菊地美升(よしなる)さん
味噌や醤油を入れず、トマト+オレンジの皮で小粋な味に
左党ならば、モツ煮込みが恋しくなる季節ですね。自宅で挑戦したい、と思う料理好きもいるのでは。そこで今回は、「ワインに合う」モツ煮込みをご紹介しましょう。酒場などで出てくるような、味噌や醤油味の「ザ・モツ煮込み」だと和酒が欲しくなっちゃうので、今回は、赤ワインとトマトソースで煮ます。
実はフレンチでは通常、豚の茹でモツは使わない。今回のために6回試作し(苦笑)、コツ、掴みましたよ! ベースはトマトと赤ワイン、たっぷりのタマネギ。香りの要素として、ゴボウ、ショウガ、プルーン、オレンジの皮を用意します。コク出しのために豚コマ肉を加えましょう。
モツで気を付けたいのが独特のにおいです。茹でモツは炒めるうちに水が出てくるので、強めの火でしっかり飛ばしてください。一緒に炒める豚コマに、香ばしい焦げ目が付けばOK。ゴボウとタマネギも、しっかり炒めて香りを出します。鍋に赤ワインを注ぎ、鍋底に残る旨味をこそげるようにしましょう。
全てひと鍋に入れ、トマトとショウガ、プルーンを加えて中弱火で煮ます。やわらかくなるまで1時間はかかるかな。煮上がる直前にオレンジの皮を刻み入れて、チーズとコショウをたっぷりかけて出せば、香りがふんわり立ち上り、キュンとコクのある味わいに。ワインがばっちり欲しくなります!
煮込み料理には大鍋で作るイメージがありますが、小鍋でも十分おいしく炊けますよ。
「フレンチ モツ煮込み」の作り方
[材 料](作りやすい分量)
豚モツ(茹で)・・・250g
豚小間切れ肉・・・100g
赤ワイン・・・200ml
ゴボウ(斜め切り)・・・1/3本
タマネギ(くし切り)・・・1個
バター・・・大さじ1
ホールトマト(ダイスカット)・・・250g
プルーン・・・2個
ショウガ(スライス)・・・2~3片
オレンジの皮(みじん切り)・・・1片
ニンニク(つぶす)・・・1片
パルメザンチーズ、塩、黒コショウ・・・各適量
オリーブ油・・・適量
<材料のポイント>
モツとワインの橋渡し役にショウガとオレンジの皮を。プルーンは甘味とコクをプラス。黒コショウは仕上げにたっぷり挽いて、キレを出す。オレンジの皮は、内側の白い部分を削ぎ、1~2度湯がいて使うと苦味やエグミが消える。
[作り方]
[1]油とニンニクを熱する
たっぷりめのオリーブ油を鍋で熱し、つぶしたニンニクを炒め、香りを出す。
[2]香味野菜を炒める
1の鍋にタマネギとゴボウを加え、中火で炒める。塩をし、タマネギが透き通って香りが出てきたら鍋から取り出す。
[3]モツ、コマ肉を炒める
2にオリーブ油を足し、肉とモツを加えて中強火で炒める。塩をし、出てくる水分が飛び、焦げ目が付くまで炒める。
[4]赤ワインを注ぐ
赤ワインを注ぎ、鍋底についた旨味をヘラでこそげ落とす。
[5]香味野菜を戻す
2で取り出した野菜を鍋に戻し、全体に炒め合わせる。
[6]水とホールトマトを加える
ホールトマトを加え、ひたひたの水を注ぐ。
[7]蓋をして煮る
スライスしたショウガ、5㎜幅程度に刻んだプルーンを加える。蓋をして弱火で1時間以上煮る。途中、アクが出たらすくい取る。
[8]オレンジの皮を加える
煮上がる直前にオレンジの皮を刻み入れ、ひと煮立ちさせる。器に盛りつけ、仕上げにパルメザンチーズと黒コショウをふる。
モツの旨味やコクはそのままに、オレンジの香りがふんわり香り、トマトとプルーンの甘味とキュンとした酸味がワインと抜群の相性。
◆煮込み時間:80分 ◆トータル調理時間:80分
<生モツを使う場合の下処理>
[1]茹でこぼす
生モツは、水から中火で10分ほど茹で、流水で表面のぬめりを洗い流す。1~2回繰り返す。
[2]においの元を落とす
刃先でモツの表面の白い汚れ(においの元)をさっとこそげ落とし、使いたい大きさにブツ切りにする。
◎ル・ブルギニオン
東京都港区西麻布3-3-1
☎03-5772-6244
11:30~12:30LO
18:00~19:30LO
水曜、第2火曜休
東京メトロ、都営地下鉄六本木駅より徒歩4分
https://le-bourguignon.jp/
※新型コロナウイルス感染拡大等により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
(雑誌『料理通信』2016年1月号掲載)
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