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RECIPE

素直においしく、身体も楽な生地 「なたね食パン」

ヴィーガンパン・レシピ03 神奈川・藤沢「関次商店 パンの蔵 風土」

2024.04.04

素直においしく、身体も楽な生地。「なたね食パン」

photographs by Hide Urabe

連載:素材を生かすヴィーガンパン

ヴィーガンパン専門店の登場とともに、植物性の食材のみで作るパンのレシピが注目されています。動物性の旨味や油脂によるマスキングがなく、発現性を高めたい素材の味がダイレクトに伝わるというメリットを生かし、パン好きも満足するヴィーガンパンを焼く、職人たちの知恵と工夫に迫ります。

神奈川・藤沢「関次商店 パンの蔵 風土」
店主 岩田和憲さん

店主 岩田和憲さん

保育園給食室での勤務でパン作りに目覚める。富ヶ谷「ルヴァン」、つくば「ベッカライ・ブロートツァイト」でパン作りを学び、2018年に独立。


砂糖、乳製品不使用

店主・岩田和憲さんが「自分や家族も毎日食べたい」を形にしたパンである。好きなパンでも食べ終わった後に身体が重たくなるものもあった。自分が焼くなら食後も楽なパン作りをしたいと、自分なりの材料選びと製法で、今は有機栽培小麦に自家培養酵母などを使ってパンを焼く。

なたね食パンはしっとりふわふわ。でも口どけは軽く、麦の香りを残してしゅわっと消える。トーストすればいよいよ軽く、香ばしさ満点。ほんのり甘いが、巷で流行るリッチなタイプとは一線を画す。謳いたいのは麦の香りと軽さだ。

「湯種にした時の香ばしい香りと甘さが格段にいい」と、カナダ産小麦を採用。そのよさをシンプルに出したいから、香りの強いホップ種は避け、レーズン種とオーガニックイーストを併用する。軽さの秘密は、油脂分として使う菜種油だ。食感がしっとりし、植物性で消化も早い。かくして、素直においしい、身体も楽な生地が出来上がる。

何より、このパンを焼き手の自分が毎日健やかに焼き続けることも大事。一人で厨房を回す分、作業性も考える。仕込む生地は全6種類。なたね食パンは丸パン、バナナを練り込んだ「バナナ缶」と、3つのアイテムに展開する。


<植物性だけでおいしくなるコツ>


1 レーズン種とオーガニックイーストで小麦の香りと甘味を引き立てる
2 菜種油でしっとり軽い食べ心地に

「なたね食パン」の材料と作り方

[材料](粉6㎏仕込み/計12本)
全粒粉(ムソー・カナダ産有機栽培)・・・5.4kg(90)※
湯種
 熱湯・・・1.2kg(20)
 ムソー・カナダ産有機栽培強力粉・・・0.6kg(10)
レーズン種・・・180g(3)
水・・・3.6kg(60)
オーガニックイースト・・・6g(0.1)
塩・・・108g(1.8)
菜種油・・・360g(6)

※( )内はベイカーズパーセント。粉の総量を100%とし、その他の材料を粉に対する割合で示しています。

「なたね食パン」の材料と作り方

<材料の特徴 油脂>
菜種油でしっとり軽く、ぷるぷるに

菜種油でしっとり軽く、ぷるぷるに

食パン生地に必要な油脂分として菜種油を選び、ミキシングの最後に少量ずつ練り込む。
バターより融点が低いため食感は軽くしっとり。植物性で消化も負担が少ない。


[作り方]
[1湯種を作る

湯種を作る

ミキサーボウルに湯種の材料を入れ、フックを付けて中速で2分間回す。ボウルに上げて冷ます。
POINT:夏場は冷蔵庫で一晩冷やす。冬場は人肌程度に冷ます。

[2]液体、粉類を準備

ボウルに湯種の材料を入れ、フックを付けて中速で2分間回す。ボウルに上げて冷ます。

レーズン種と水を合わせておく。全粒粉とオーガニックイーストを混ぜておく。

[3]ミキシング

湯種のダマがなくなるまで混ぜる。

ミキサーボウルにの湯種、の液体、粉の順に入れ、フックをつけて低速で2分間回す。
POINT:湯種のダマがなくなるまで混ぜる。

[4]休ませる

生地がつながったらバンジュウに上げ、蓋をして室温で 30 分~1時間休ませる

生地がつながったらバンジュウに上げ、蓋をして室温で30分~1時間休ませる。

[5]ミキシング

ミキサーボウルに生地を戻して塩を加え、中速で5分間回す。菜種油を少量ずつ加えながら、高速で3~5分間回す

ミキサーボウルに生地を戻して塩を加え、中速で5分間回す。菜種油を少量ずつ加えながら、高速で3~5分間回す。

[6]取り分ける

1㎏分を「バナナ缶」用に取り分る

1㎏分を「バナナ缶」用に取り分る。
POINT:菜種油が入るので、プルンとして、ダレずに自立した生地感に。


[7]折り畳み、休ませる

生地を折り畳み、室温で 30 分置く。これを3回繰り返す。

生地の端にカードを差し入れて左右⇒上下と生地を折り畳み、室温で 30 分置く。これを3回繰り返す。

[8]低温長時間発酵

バンジュウの蓋をし、冷蔵庫で 12 時間以上発酵させる

バンジュウの蓋をし、冷蔵庫で12時間以上発酵させる。

[9]復温

冷蔵庫から生地を出して 30 分~1時間置き、室温に戻す

冷蔵庫から生地を出して30分~1時間置き、室温に戻す。

[10]分割

生地全体と台に打ち粉をし、取り出す。半量を 250g ずつ分割し、軽く丸めてバンジュウに戻し、室温で 30 分休ませる。

生地全体と台に打ち粉をし、取り出す。半量を250gずつ分割し、軽く丸めてバンジュウに戻し、室温で30分休ませる。
POINT:半量は丸パンに。80gずつ分割し、同様に。


[11]成形

打ち粉をした台に出し、手のひらと台の間で転がすように丸める。

打ち粉をした台に出し、手のひらと台の間で転がすように丸める。

[12]型に入れる

食パンは、1斤型に2つずつ入れる。てっぺんに1個穴を開ける。

食パンは、1斤型に2つずつ入れる。てっぺんに1個穴を開ける。

[13]丸パンの成形

丸パンも同様に丸め、プレーンはそのまま、残りは一度片面を濡れ布巾に押し付けてから黒ゴマ、ヒマワリの種、カボチャの種を塗す

丸パンも同様に丸め、プレーンはそのまま、残りは一度片面を濡れ布巾に押し付けてから黒ゴマ、ヒマワリの種、カボチャの種を塗す。

[14]最終発酵

31℃のホイロに入れ、1時間ほど発酵させる

31℃のホイロに入れ、1時間ほど発酵させる。

[15]焼成

窯入れ。上火 210℃・下火 210℃で 35 分焼成

窯入れ。上火210℃・下火210℃で35分焼成。

[16]粗熱をとる

窯から出し、型から外して粗熱をとる

窯から出し、型から外して粗熱をとる。


<生地展開>バナナ缶&なたね丸パン

バナナ缶&なたね丸パン

(左)なたね食パンの生地に黒糖と、フェアトレードのバランゴンバナナを丸ごと練り込んで焼成した「バナナ缶」。粗く混じった香り豊かなバナナと素朴な甘さの黒糖が、生地をしっとり、表情は豊かに。(右)なたね食パンの生地を丸く成形した「なたね丸パン」は、より香ばしく歯切れよい。サンドイッチのバンズ等にも用いる。ヒマワリの種、黒ゴマ、カボチャの種をまぶしたものも。


◎関次商店 パンの蔵 風土
神奈川県藤沢市本町4-5-20
☎090-2147-6314
9:00~15:00(売り切れ次第終了)
日、月、火曜休
小田急江ノ島線藤沢本町駅より徒歩10分
Instagram:@ fuudo_2019

※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。

(雑誌『料理通信』2020年6月号掲載)

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