ワンランク上のグルテンフリーパンに挑戦。花酵母でふわっと焼く「ひよこ豆 × 米粉パン」
ヴィーガンパンレシピ 東京・恵比寿「オーガニックジャンキー」
2025.06.06

text by Miyo Yoshinaga(recipe) / photographs by Sai Santo
ヴィーガンパン専門店の登場とともに、植物性の食材のみで作るパンのレシピが注目されています。動物性の旨味や油脂によるマスキングがなく、発現性を高めたい素材の味がダイレクトに伝わるというメリットを生かし、パン好きも満足するヴィーガンパンを焼く、職人たちの知恵と工夫に迫ります。
今回はオーガニックレストランのシェフが作る、グルテンフリーの米粉パン。
東京・恵比寿「オーガニックジャンキー」村上 傑規(むらかみ・ひでき)

米粉のパンで、大地の再生を
僕はね、料理も製パンも、独学なんです。大学で建築を勉強した後、しばらく世界を放浪して、戻ってきてからは雑誌を作っていました。いろんな特集を組んでね。「おいしさってなんだろう?」「(おいしさの理由といわれる)まごころってなんだろう」みたいなものを探す旅、とかね。取材を続けてたら、食の探求が楽しくなってきて、2009年に南麻布でオーガニックのレストランをオープン。今は恵比寿に移転して、レストランの向かいに信頼する作り手の食材を集めたグロッサリー兼グルテンフリーのベーカリーを営んでいます。


オーガニック食材を扱うのは地球を少しでも綺麗にしたいから。田畑を無農薬にすることは、河川や海を守ることに繋がる。米粉のパンを焼く理由は、日本の農地の半分は米だからね。無農薬栽培の米をおいしく食べることは、大地を再生させることになる。
日本は瑞穂の国だからか、米粉パンを米粉100%で作ろうとしがちだけど、フランスやイタリアではグルテンフリーの粉選びがもっとフラットです。トウモロコシ粉やそば粉、キャッサバ粉や栗粉、テフ粉・・・と多彩。うちでも、生地のベースにひよこ豆やそば粉を混ぜて、ハーブや雑穀、カカオパウダーなどミックスしながら5種類のフレーバーのパンを焼いてます。どれもそのままでももちろん、フレーバーに合わせたサンドイッチもおいしい。
トウモロコシ粉×米粉のパンは、オレガノを加えてるからイタリア系の料理、トマト味とかはぴったり。ひよこ豆粉×米粉のパンはフェヌグリークを加えて、スパイシーで温かみのある香り。ひよこ豆の香ばしい甘さも魅力。ファラフェルとか中東やインドのスパイスの利いた料理と相性抜群です。


米粉はパンに使う場合、粘りが少ない品種で吸水率が低いものが一般的。でも僕は素材の味を出したいから無農薬栽培のササニシキを製粉して使っています。膨らみはパン用の米粉より弱いけど、配合と製法で対応できる。本当はたくさん試してみたいけど製粉するにはある程度の量が必要だから、一度粉にすると使い切るまで時間がかかるからね。
多様なアプローチで
生地の水分を保持
発酵には花酵母を使用。2024年に開催された「おいしい米粉パンコンテスト」で、グランプリを受賞したパンに使われていたんです。保水性が高く、食感がよくなる。あと麹パウダーとドライイーストで補強しています。
米粉パンの課題はなんといっても焼成後の老化の速さ。翌日にはガッチガチになるから食べられない。そのために高加水の生地にして大量のスチームで焼成。さらに、超ハイクオリティの冷凍庫も導入しました。熱々のところからマイナス20℃で一気に凍らせるから、水分が出ない。だから食味も落ちない。うちではその日に焼いたパンもすべて一度冷凍をかけてから店頭に並べます。
今は店舗販売が中心だけれど、いずれは卸を増やしていきたい。一日何千個も焼けると、年間で何十トンもの量になる。それだけ田んぼも農家も守れる。一反の米の収量は無農薬なら約350キロ。だから350キロ買って販売できれば「よし、これで1反!」ってスタンプラリーのように集めることが、僕の人生のテーマです。
「米粉のハードパン ひよこ豆」材料と作り方
[材料] (400×300×45mmの型1台分)
米粉・・・760g
ライススターチ・・・300g
ひよこ豆粉・・・540g
塩・・・18g
フェヌグリーク(「エヌ・ハーベスト」)・・・8g
ココナッツオイル(香りのない有機ココナッツオイル「ココウェル」)・・・130g
水・・・1250g
酵母液・・・200g
麹パウダー(米麹「マルカワみそ」)・・・4g
ドライイースト(モラセス培養ドライイースト「アリサン」)・・・10g
サイリウム・・・8〜10g
<酵母の特徴>

<材料の特徴 オリジナルの米粉>

<配合の特徴 ひよこ豆>

<目指す「焼き上がり」と「断面」>

【工程表】
ミキシング
粉類・油は常温、水の温度38℃
泡立て器で混ぜ合わせた後、ハンドミキサーで3分
サイリウムを加える
↓
発酵
40℃・87%で約1時間
↓
焼成
表面にひよこ豆粉を振る
プログラム設定したコンベクションで50分
↓
冷却
−20℃ 30分
【作り方】
[1]液体類と油を合わせる

ボウルに38℃の水、酵母液、麹パウダー、ドライイーストを加えて泡立て器で混ぜ溶かす。ココナッツオイルを加えて混ぜる。POINT:グルテンフリーパンにはよく米油が使用されるが、あえて融点の高いココナッツ油を選ぶことで保湿性を高める。
[2]サイリウム以外の粉類を合わせる

別のボウルに米粉、ライススターチ、ひよこ豆粉、塩、フェヌグリークを入れて泡立て器で混ぜ合わせる。
[3]酵母を加える

[1]を一気に加える。
[4]混ぜ合わせる

泡立て器で、粉類が溶けてドロドロの状態になるまで混ぜる。
[5]ミキシング

全体をよく混ぜ合わせるため、ハンドミキサーで3分間撹拌する。
[6]サイリウムを加える

サイリウムを加える。ダマになりやすいのでスプーンで少量ずつ振りかける。POINT:米粉はグルテンがないためサイリウムで生地に粘りと弾力を与える。発酵で出るガスを抱き込んで膨らむ骨格をつくる。

ゴムベラに持ち替えて、生地をボウルに擦り付けてサイリウムのダマを潰すように混ぜる。
[7]型に流す


型に生地を流し入れ、表面をドレッジで平らにならす。
[8]発酵

40℃・ 87%のドゥコンディショナーに入れる。1時間が目安だが、30分ごとに様子を見る。型の5mmほど下まで膨らめば発酵完了。

発酵が完了した生地。
[9]焼成

表面にひよこ豆粉(分量外)を茶こしで振る。

240℃に予熱したコンベクションオーブンに入れる。
<焼成プログラム>
30秒:240℃/スチーム量0ml
15分:160℃/250ml
20分:180℃/100ml
15分:210℃/40ml
[10]焼き上がり・冷却


マイナス20℃の「アートロックフリーザー」に30分入れて冷却する。
[11]カット

販売する大きさ(500g)に切り分ける。
【展開:ひよこ豆のパンの豆腐カツサンド】

「ひよこ豆のパンの豆腐カツサンド」の材料

「ひよこ豆のパンの豆腐カツサンド」の作り方


1cm厚にスライスしたパンにオーロラソースを塗り、フリルレタス、ムング豆のマッシュを載せる。

キャロットラペとオーロラソースをトッピング。オーロラソースは豆乳で作ったヴィーガンマヨネーズとトマトソースを半々に合わせたもの。

豆腐カツには北アフリカの唐辛子ベースのピリ辛トマトソース、ハリッサを塗る。

豆腐カツを載せて、オーロラソースを塗ったパンでサンドする。
◎オーガニックジャンキー
東京都渋谷区東3-23-3猪瀬ビル1F
☎090-9615-6565
月曜休 10:00~24:00
各線恵比寿駅から徒歩4分
Instagram:@organicjunkie.jp
◎キッチンわたりがらす
東京都渋谷区東3-24-14
☎03-3797-1515
月曜、日曜、祝日休
11:30~15:00 火曜〜金曜
18:30~23:00 水曜〜土曜
※ケータリング、ロケ弁の注文次第で不定休
Instagram:@kitchen_watarigarasu
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