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SDGs

FRaU × 料理通信コラボイベント vol.1レポート

~食を通じてつながる世界~サステナブルな未来を耕すために。

2019.03.29



2030年の世界の姿

これまで本サイトでも、国内外での取組み状況をご紹介している〝SDGs(エス・ディー・ジーズ)〞は、2015年9月に国連サミットで採択されたSustainable Development Goals(=持続可能な開発目標)の通称です。今、私たちが生きる世界は、飢餓、経済格差、気候変動など、もはや国単位では解決できない地球規模の課題に直面しています。先進国も途上国も垣根を越えて協力し、より良い未来をつくっていこうと世界中で多様なメンバーが協議し、2030年までに達成したい17の目標(Goals)を、3年がかりでまとめたものです。

海外では脱石油、再生可能エネルギーへのシフト、海洋汚染防止策としてのプラスチックゴミ削減、LGBT関連の法改正など、SDGsへの実質的な取り組みがすでに行われつつあります。しかし日本ではSDGsの認知度が15%と低く(電通ジャパンブランド調査2018)、企業や社会の取り組みも世界に大きく遅れをとっているのが実情です。

同データによると、日本では女性、とりわけ40代女性の認知度が低いとの結果が出ています。少し意外な気がしませんか? 子育てや仕事で社会の様々な問題に直面しているこの世代の女性こそ、SDGsの意義を実感しやすいはずなのに。課題があまりに包括的、全体的であるがゆえに、自分の問題として捉えにくいという側面があるのかもしれません。

そんな中、講談社の女性誌『FRaU』(2019年1月号)が「世界を変える、はじめかた」と銘打って、1冊丸ごとSDGsをテーマにした特集号を刊行しました。エシカルなファッションや、モノの製造背景を知ることがエシカルな買い物につながることなどを提案し、女性がこの問題を身近にとらえるきっかけづくりをしたのです。



1冊丸ごとSDGs特集の『FRaU』1月号とMarutaのキッチンが表紙の『料理通信』3月号。

そして今回、誰にとっても身近な「食」を切り口に、SDGsを体感するイベントを料理通信社と『FRaU』共催で開催することに。両メディアで募った参加者の女性24名が、『料理通信』でもお馴染みの一軒家レストラン「Maruta(東京・調布市)」に集い、ゲストスピーカーのトークも挟みながら3時間に渡って食事を楽しみ、会話を交わしました。



SDGs特集号発刊に至る背景を紹介するFRaU編集長 関龍彦さん。



プレゼンテーションに真剣に耳に傾ける参加者の皆さん。大きなテーブルを囲み、アイスブレイクを交えながら会話が始まる。



「知る」ことで実践できる

Marutaは「薪、シェア、循環、ローカルファースト」をテーマに、空間緑化を手がける会社経営者の田丸雄一さんが、自社の植木栽培地を転用して開いた異色のレストランです。田丸さんはゲストスピーカーとして、植物を扱う仕事を通じて日頃感じている気候変動のこと、ゲリラ豪雨やヒートアイランド化への対処として店の敷地の7割を庭と畑の緑地にしたことなどを語ってくれました。「レストラン」という形でSDGsを実践する田丸さんのアイデアは、参加者にとってこれからの店選びを考えるきっかけになったかもしれません。

この日に供された料理の野菜は、地元や近隣の生産者から仕入れたもの。Marutaの庭に自生するハーブも要所で使用されていました。参加者は皆、ローカルフードの新鮮で鮮烈なおいしさに感激しつつ、食と地域と環境が密接につながっていることを実感した様子。



Marutaオーナー田丸雄一さん(右)と牛肉卸し「㈱東京宝山」代表の荻澤紀子さん。

メインディッシュは、熊本・阿蘇で草原を活用した放牧と国産飼料100%であか牛を育てる井信行さんの「くまもとあか牛」の薪焼きです。肉の卸元である荻澤紀子さんも、ゲストスピーカーとして参加者と肩を並べテーブルに。荻澤さんは、サシの入ったA5牛肉を頂点とする旧来の日本の牛肉文化とは異なる価値基準を提示し、生産者とともに牛の肥育・流通に取り組んでいます。
井さんの放牧型粗飼料による肥育はサシが入りにくいけれど、牛が草を食べることで植物や土壌の新陳代謝が促され、肥育用に草を刈り取り、野焼きをしてという草地管理によって、景観が保たれ、水源涵養も担うことを説明してくれました。

どんな生産者がどこでどんな風に育てた素材かを知って食べることは、誰もができるSDGsの実践法です。田丸さん、荻澤さんの取り組みは社会的に意義があるだけでなく、おいしさに結実しているからこそ人々が喜んで実践する、好循環が生まれるのでしょう。







会が進むにつれ初対面の参加者同士の会話も自然と弾んできました。勤め先で行っているゴミの分別のこと、地方を旅して知った農村の過疎化、SDGs先進国オーストラリアに滞在して知ったカーボンフリー対策など、様々な意見が活発に交わされました。中には就活中の大学生もいて、SDGsをどう自分ごととして捉えればよいかわからなかったけれど、今日参加して自分にできる身近なことから、まずは会社選びに役立てたいと話してくれました。



料理家、教員、自治体職員等、様々な業界から集った参加者から多様な意見が飛び交う。



参加者からの質問に応えるMaruta石松一樹シェフ。



会の口開けにFRaU編集長・関さんは参加者にこう語りかけました。「これからいただく料理、そしてテーブルを囲む方たちとの会話は、きっと素敵な体験になるはずです。どうぞたくさんの素敵を持ち帰り、一人でも多くの女性と共有してください。素敵なものは必ず人に伝わる伝播力があります」と。
きっと参加者の何倍もの人達が、自分にできる身近なSDGsについて考え始めるのではないでしょうか。






まさに、「おいしさに結実しているからこそ、好循環が生まれる」。そんな様子が参加者の笑顔こぼれる表情から伝わったお料理の数々をご紹介します。





まずはMarutaのガーデン体験からスタート。



薪で沸かした湯で淹れるシソ茶を片手に、畑で料理に使うローリエを収穫。

・スナック
薪焼きブリオッシュ 発酵燻製バター 自家製パンチェッタのパウダー

薪火がテーマのMarutaらしいスターター。香ばしい薪焼きブリオッシュに薪火燻製香をたっぷりまとわせた発酵バターをのせて。



・サラダ
近隣農家 Ome farm 北山農園の葉野菜 自家製プレザオラ ホエー

大鉢でサーヴされたサラダを皆でシェア。オーガニック野菜の鮮烈で力強い味に牛肉生ハムとチーズのミルキーさが好相性。



・スープ
セラーノの生ハムの出汁 三鷹産白菜 バターミルク

生ハムの非可食部分でとった出汁で白菜をポタージュに。バター製造時に残る液体(バターミルク)の柔和なコクが調味料。



鶏だしのパエリヤ

庭の薪炉で豪快に炊き上げるMaruta名物のスパイシーなパエリヤ。



老鶏の滋味深い出汁を米がたっぷりと吸い込んでいる。



・薪焼き
井信行さんのくまもとあか牛 パプリカのペースト 焼きピクルス

メインとして井信行さんのくまもとあか牛をチョイス。国内伐採木の薪火で絶妙な火入れをする石松シェフ。



しっとりときめ細やかな肉質とまろやかな味わいが参加者を魅了。



お料理とあわせてサーブされた自家製ノンアルコールドリンク。
(左)林檎、塩レモン、柑橘、庭のハーブ 林檎をスライスして少量の砂糖で発酵を促し、柑橘、バルサミコ、貴腐ワインビネガーを合わせる。(右)発酵ブルーベリー、ハスカップ、紫とうもろこし、オークチップ ブルーベリーとハスカップに砂糖を入れ潰してジュースを出し、オークチップを入れて発酵。漉して紫とうもろこしを煮た汁を入れる。



・デザート
三鷹のセロリのクランブル 柑橘 庭のローリエのアイス

アツアツのクランブルの甘い香りに、歓声が沸く。



セロリの強い香りを甘味で引き立て、柑橘の酸味でバランスをとった一品。庭のローリエで香りづけしたアイスをのせて。



閉会後に全員で記念撮影。テーブルでの参加者交流、意見交換が有益だったという声が多くあがる。



これからも食を通じてつながる世界、サステナブルな未来のための取り組みを続けていきますので、どうぞお楽しみに。






◎ Maruta
東京都調布市深大寺北町1-20-1
☎ 042-444-3511
営業時間:12:00~15:00(LO13:00)
※ランチは土・日・祝のみ 
ディナ 一部18:30~、二部19:30~(完全予約制・ドアオープン30分前)
定休日:月・火
https://www.maruta.green/





ゴールとのつながり


3

健康と福祉   旬でローカル、新鮮な食材を選ぶこと。


7

エネルギー   できるだけ電気、ガスを使わない。薪火を有効活用。


11

まちづくり   地域の生産者とつながりを持つ。あか牛を放牧し地域資源を循環させる。


12

つくる責任 つかう責任   廃鶏もおいしく命をまっとうさせる。


13

気象変動   旬でローカルな食材を選ぶことで、地球の負担を減らす。


15

陸の豊かさを守ろう   生物多様性を大切にした食材選択。庭づくり。


17

パートナーシップ   一人より皆で協力して学び、考え、行動する。






  

<OUR CONTRIBUTION TO SDGs>
地球規模でおきている様々な課顆と向き合うため、国連は持続可能な開発目標 (Sustainable Development Goals) を採択し、解決に向けて動き出 しています 。料理通信社は、食の領域と深く関わるSDGs達成に繋がる事業を目指し、メディア活動を続けて参ります。



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