食品ロス削減に寄与するサービス
NTTドコモecobuy
2019.11.06
text by Kyoko Kita / photographs by Shinya Morimoto
スーパーの棚に並んでいる牛乳、奥から取りますか? それとも手前から取りますか?
普段何気なく取っている買い物での行動が、実は食品ロスの問題に繋がっている。そんなことを意識させてくれるアプリをNTTドコモが開発し、国内外から注目を集めています。
食品ロスとは、食べ残しや賞味期限切れ、型崩れなど、食べられるにも関わらず捨てられてしまう食品のこと。世界では8億人もの人が飢餓に苦しむ中、年間に生産される食料の3分の1に当たる13億トンが廃棄されています。それによって排出される温室効果ガスは全体の8%を占めるなど、環境への負荷も甚大です。このような状況を踏まえ、SDGsでは 2030年までに食品ロスの半減を目標に掲げています。
日本でも今年10月に「食品ロス削減推進法」が施行されました。平成28年の調査では年間646万トンの食品ロスが発生したと推計。これは東京都民1年分の食料に相当し、国民全員が毎日お茶碗1杯分(139g)の食べ物を廃棄していることになります。一般家庭での食品ロスは289万トンと全体の4割を超え、スーパーやコンビニなど食品小売業による廃棄も67万トン、消費者が関わる現場で起きている食品ロスが全体の半数にのぼることがわかります。
お得に社会貢献
食品ロスの削減を目指す取り組みは各国で進み、スマートフォンを使ったサービスも開発されて日本でも一部導入されています。しかしそのほとんどは飲食店や小売店が対象でした。そんな中、NTTドコモが開発し、来年4月にリリース予定の「ecobuy」は、食品ロス削減のカギを握る一般消費者向けに作られたアプリ。賞味期限に近い食品を購入したユーザーにポイントを付与するサービスで、お得感を得ながら社会貢献できる仕組みになっています。
アプリを登録した人には、普段利用しているスーパーなどの導入店舗から、賞味期限が迫ったecobuy 対象商品の通知が届きます。ユーザーは店頭でその商品を購入し、レシートの画像と賞味期の情報を ecobuy にアップロードすることでポイントを獲得できます。
ポイントはNTTドコモが提供しているdポイントだけでなく他社サービスとも交換できるのが消費者にとっては大きなメリットです。さらに、賞味期限までの残り期間が一定になると、食品を食べたかどうかのアナウンスが届きます。回答が「食べた」であればフードロス削減に協力したことへのお礼のメッセージが届く他、将来的には優良ユーザーに対して自治体からゴミ袋やエコバッグのプレゼントも。一方、まだ対象商品を食べ切れていない場合は、それを使ったお勧めのレシピが届き、手付かずのまま賞味期限を迎え廃棄されるのを防ぎます。
目的は消費者の意識を変えること
本格稼働を前に昨年1月、都内のスーパーで実証実験が行われました。対象商品に指定したのは、賞味期限が短く廃棄されやすい牛乳や卵、切り身の魚、生菓子などの約30品目。1 カ月間の実験の結果、アンケートへ回答いただいた参加者のうち92%が継続を希望しました。その理由として、「お得にポイントが貯められるから」(51%)だけでなく、38%の人が「社会問題に貢献できるから」と回答しています。
狙いはそこにありました。
「消費者の意識を変えることが目的のサービスです」と開発リーダーであるNTTドコモの遠藤正道さん。「ポイントが貯められるというお得感から始めた人も、利用するうちに食品ロスに対する問題意識が芽生え、自発的に賞味期限の短い商品を手に取ってくれるようになればと考えています」。
またこのサービスは、スーパーなど小売店にとってもメリットが大きいことが実証されました。これまで賞味期限切れまでの日にちや時間ごとに何度も値引きシールを重ね貼りしていた商品でも、アプリ内でポイント付与数の変動がわかるため、値引きシールを何度も貼り直す手間がなくなりました。将来的には各商品ラベルメーカーと協業し、商品が店頭に並ぶ前にラベルにQRコードが印字されているという世界観も目指しています。
また販売個数も前年比で15%増え、廃棄される可能性のあった約3割もの食品が ecobuy 商品として消費者の手に渡り、廃棄に関わる時間やコストの削減に繋がっています。 焼却コストや環境への負荷を抑えられるという意味では、自治体、さらには国、地球レベルでも価値ある取り組みであることは言うまでもありません。
全体最適な技術で叶えるエコな未来
「今後は交換できる他社ポイントの種類を増やしていきたい」と遠藤さん。ポイントの利用先をdポイントに限定しないのは、自社の利益以上に社会問題の解決を上位目的に考えているから。「独自のポイントを発行しているコンビニなどでもメリットを感じてもらえる仕組みが必要ですね」。店舗側の作業や利用者への説明を効率化させる工夫も課題として挙げています。
将来的には、今後普及が予想される電子レシートと連携させ、利用者が商品情報をアップロードせずとも自動でポイントを申請できるようにすることや、対象商品を拡大し、家庭の冷蔵庫の在庫管理をサポートできるようにすることも視野に入れています。利便性の向上だけでなく全体最適を目指す開発努力がエコな未来を叶えようとしています。
【PR】問い合わせ先
◎ 株式会社 NTTドコモ
ecobuyサービス担当
ecobuy-flw-ml@nttdocomo.com
<NEWS>
料理通信社が主催するSDGsカンファレンスに、NTTドコモがブース出展します。
本記事で紹介しているecobuyなど、NTTドコモが自社技術と強みを活かし社会課題の解決に向けて開発したサービスを紹介します。ぜひご参加ください!
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11月27日(水)開催 ‟食×SDGs” Conference-Beyond Sustainability- #1