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JOURNAL / JAPAN

日本 [千葉]

CLUB REDといすみ市がタッグを組んだ1日限りのスペシャルレストラン

2018.03.15

いすみ市でのスペシャルレストランは昨年に続き3回目の開催。


日本最大級の若手料理人コンペティション「RED U-35」上位入賞者と歴代審査員による食のクリエイティブ・ラボ「CLUB RED」。「美食の街」を目指す千葉県いすみ市とタッグを組み、いすみ市の料理人や生産者とともに講習会や体験会など様々なイベントを開催しています。
2月11日、いすみ市内の「割烹 かねなか」にて、いすみの食材を味わう一日限りのレストラン「いすみ CLUB RED RESTAURANT Special」をオープンしました。

日本のサンセバスチャンを目指して

東京駅から特急「わかしお」に乗っておよそ70分。
ローカル線「いすみ鉄道」や「大原はだか祭り」でも知られる千葉県・いすみ市は、太平洋、里山や川に囲まれ、豊かな自然と食材に恵まれた地域。その環境を生かし、2016年から「食」をテーマにした町興しに取り組んでいる。

親潮と黒潮が交じりあい流れの急な海では身の引き締まった上質なタイやサワラが育ち、「器械根」と呼ばれる広大な磯場で獲れる伊勢海老は甘味が強い。その伊勢海老を食べて育つ真ダコもまた、軟らかく甘味のある肉質が特徴だ。
また、農業では、献上米でもあったブランド米「いすみ米」をはじめ、野菜やフルーツなど多品目が生産されている。
多様な農水産物はそれぞれ品質の高さを評価されているが、どれも知名度は低く、価格も伸び悩んでいるのが現状だ。
そうした中で、いすみ市は「サンセバスチャン化計画」を掲げ、一流の料理人へのアプローチを始めた。
スペイン・バスク地方の都市サンセバスチャンのように、将来はいすみの食材を求める料理人が市内にレストランやオーベルジュを開き、いすみの食を求めて世界中から人が集まる美食の街を目指す。

その計画をサポートしているのが「CLUB RED」だ。若い才能を発掘すると共に、優秀な料理人が自店の厨房の枠を越えて活動する機会を提供。日本の食の未来に貢献すべく、地方自治体や企業と連携して様々な取り組みを行なっている。

これまでも、CLUB REDメンバーがいすみの食材を体感する「いすみ LABO」や新名物料理の開発、市内のお寺を貸し切って開催したスペシャルレストランなど、いすみ市とともに多くのイベントを開催してきた。

いすみ市でのスペシャルレストランは昨年に続き3回目の開催。


この日、CLUB REDからは東京「レストラン ラ フィネス」の杉本敬三シェフ、大阪「ポンテべッキオ」の山根大助シェフ、東京「Wakiya―笑美茶樓」の脇屋友詞シェフなどが参加。
会場である「割烹 かねなか」の中村一俊シェフをリーダーとして、総勢8名のシェフが腕を振るった。

また、会場の設営や客席でのサービスはプロジェクトメンバーであるいすみ市内の生産者が担当。
参加者にいすみの食材の魅力を解説しながら料理をサーブした。

メンバー全員で最終ミーティング。会場設営と仕込み作業は前日深夜まで及び、当日も朝早くから準備を進めた。

市内の牧場でチーズやジェラート販売、カフェを運営する「高秀牧場ミルク工房」の髙橋温香さんもメンバーの一人。「いすみ市では海にも山にも豊かな食材があり、農家、漁業、酪農、養蜂、養鶏、酒造……と、市内で作っていないものはないんじゃないかというほど。私の店でも、自社の牧場の乳製品と市内でとれたフルーツや野菜、酒粕などを使ってジェラートを作っています。『いすみ LABO』プロジェクトは一流の料理人の方々から直接意見を聞ける貴重な機会であるだけでなく、地域の異業種の生産者と連携してイベントを行ったり意見交換会を開くことで、みんなでいすみの魅力を掘り下げ、広めていこうとしています」

夫婦で無農薬有機栽培の野菜を育てる「農園 タロとあき」の青木昭子さんは「いすみは里山と海が入り組んでいるので、山からの栄養が海にも届くし、反対に海からは潮風に乗ってミネラルが運ばれてくる。千葉県の中でも温暖な気候で、農業がしやすい地域だと思います」と話す。「『いすみ LABO』のつながりで、福岡県の「蓮双庭」平賀シェフや東北地方にも野菜をお送りするようになりました。遠くの方にも知ってもらえて嬉しいです」



テーブルセッティングも生産者であるメンバーの手で。「高秀牧場ミルク工房」の髙橋温香さん(右)と、「農園 タロとあき」の青木昭子さん。


料理を提供するのは「はちべえ農園」の松崎秋夫さん。いすみ米のほか、蜜蜂(クロマルハナバチ)による受粉でイチゴを栽培している。


いすみの美味を味わい尽くす

今回は大原漁港に揚がった旬の船上活け〆サワラやサクラダイ、市内の菜の花やトマト、乳製品、豚肉などを使い、6皿のコースを作成。
中村シェフとCLUB REDメンバーの静岡「つま恋リゾート 彩の郷」の内海亮シェフや北海道「炭火割烹 菊川」の菊池隆大シェフが共同で開発した日本料理メニューとデザートに合わせ、杉本シェフ、中国料理の巨匠脇屋シェフ、イタリア料理の巨匠山根シェフの料理が供された。





「Wakiya―笑美茶樓」の脇屋友詞シェフ。
厨房では、いすみの料理人とCLUB REDメンバーが全員で調理にあたった。


参加者に向け、料理について説明する「レストラン ラ フィネス」杉本敬三シェフ。



中でも山根シェフが担当した「タコ飯」は、いすみ市の新名物としてプロジェクトを通してずっと開発を続けているメニュー。「究極のタコ飯」を目指し、これまでにもいすみ市内の料理人とCLUB REDのメンバーが組んで様々な「タコ飯」を考案・提供してきた。今回は、イタリアン風タコ飯。タコの蒸し汁で硬めに炊いた米に、タコのやわらか煮とトマトやオリーブが利いた野菜のソース、菜の花、柚子などを混ぜて紙で包み、蒸しあげた。



「究極のいすみタコ飯 包み焼き」
タコのだしを吸ったご飯は噛みしめるほどに旨味が広がる。ほろ苦い菜花と柚子の香りで優しく、爽やかな後味。


「タコもそうだけど、いすみのハマグリや伊勢エビはすごく立派で質も良い。大阪の人にもいすみ市を知ってもらいたいと思って、自分の店でいすみ食材フェアや、講習会をしています」と山根シェフ。


プロジェクトの開始当初からたびたびいすみ市を訪れ、生産者との交流を深めてきた。
「いすみには良い食材がたくさんあるのに、地元の人たちがその価値に無頓着だった。プロジェクトを通して、たとえば今まで野締めにしていたタイを神経締めにするとか、より商品価値を高めて適切に売っていくという意識ができてきている。いすみの食材はさらに良くなっていきますよ」

「いすみ大使」を務める杉本シェフは2016年に初めていすみ産の伊勢エビに出会い、そのおいしさに驚いた。「全く臭みがないんです。気に入ったのでその場で『20匹くらい店に送ってください』と頼みました」。その後市内の生産者を見て回り、いすみの食材の素晴らしさを広めたいと自ら「いすみ大使」に名乗り出た。





「特急で1時間余りの距離にもかかわらず、東京でいすみを知る人はまだ少ない。名産地とされている地域にも劣らないような高品質の食材がいくつもあり、それを外に向けて発信していくのはもちろんのこと、小さな地域だからこそできるエコノミー・エコロジーな取り組みを地元の生産者さんたちと一緒に進めていきたいです」
いすみ市とCLUB REDの活動は今後も続いていく。



提供された料理から

「“いすみの宝物”日本料理の五法で楽しむ船上活〆鰆」(中村一俊with CLUB RED members)
ねっとりとして旨味の強い生のタタキ、ふんわりと滑らかな舌触りの真空低温調理など、サワラの魅力を様々に堪能できる。


「いすみの朝掘り筍 菜の花畑」(中村一俊with CLUB RED members)
香ばしい筍餅と瑞々しい筍を菜の花とともに。添えてあるのは脱皮したての伊勢海老(脱皮エビ)で、まだ薄く柔らかい皮も食べられる。


「極上の一品 いすみ鯛の煎り焼き」(脇屋友詞)
しっかりと味の濃いタイに貝柱のうまみが効いたソースが絡む。軟らかく蒸した白菜や菜の花も滋味深い。


「いすみ豚の特製ロースハムのバタしゃぶ」(杉本敬三)
「バタしゃぶ」は杉本シェフのオリジナルメニュー。いすみ豚のハムを小鍋で温めた濃厚なバターソースにくぐらせ、生卵とポン酢で食べる。ギリシャ風ピクルスや薬味を添えて。


「落花生の葛切り 石野さんのトマトと高秀さんの蜂蜜アイス」(中村一俊with CLUB RED members)
葛切りはコクのある落花生粉と黒蜜で。「FARM YARD いしの」石野篤史さんのフルーツトマトを使ったコンポートには、ショウガのジュレ、高秀牧場の髙橋さんが作成した蜂蜜の香りの滑らかなジェラートを添えて。


毎週日曜日開催の大原漁港 港の朝市に出店している「みどりや」のイチゴ大福。「はちべえ農園」のイチゴを使用している。






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