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“小さな食料政策” 進行中。
第2回 「料理人の可能性を社会にひらく」

People / Life InnovatorAug. 9, 2018

私の肩書

「真鍋さんって、何をしている人かよくわからないですね」と言われる。

説明するのも手間なので、わりとスルーするのだけど、個人的には、これからの世の中ひとつの肩書きで生きていけるほど甘くないと思っている。

私の食関係の仕事での肩書は、「支配人」。

これは、Nomadic Kitchen という活動を東京の料理人たちとはじめた際に、eatrip を主幹する野村友里に命じられた肩書である。

「じゃあ、真鍋くんは支配人ね」と。

つまり自分で名乗った肩書きではないのだが、私は、この肩書に悩まされ続けた。
みなさんは、「支配人」と聞くとどのような立場をイメージするだろう。

料理人を中心としたこの非常に不定期な活動は、正直、料理人たちの「気分」によるところが大きかった(と私は思っている)。東京以外の地域のつくり手たちと時間をかけて関係性をつくり、そのつくり手を軸に、非日常性の高い食事会を催す。







東京の名のある料理人たちがこぞって地方に行き、オシャレで、美味しい食事会を催し、ただ去っていくという地域を消費するような構図にしないよう、色々気を使いながら、地元の人たちとを時間をかけて関係性をつくり、物事を組み立てていった(つもり)。そんな中で、色々な矛盾を抱えながらこの活動の意義や自分自身の役割を見出すのに苦しんだ。

ある時、尊敬する編集者の方に悩みを話したところ、「料理人は、料理に集中したいんだから、それ以外の物事をつくるのがあなたの仕事だよね」と言われた。当たり前の話なのだが、ストンと腹に落ちたのを覚えている。

「支配」という言葉からは、自分の勢力下に物事を配し、治めることを想像してしまうが、私がやっていることは、アンコントーラブルな料理人(クリエイター)たちを影で「支え」いろいろな物事に気を「配る」ことだなと思い、妙に納得がいったのである。







食の仕事とは別に、プロデューサーという立場で広告業界でも働いているが、編集者やカメラマン、デザイナーなど、様々なクリエイターとプロジェクトベースで共同で物事を作り上げていくのが常だった。クライアントの要望に対して、想像を超える結果を出すために、クリエイターの能力を存分に引き出すということが、プロデューサーには求められる。

料理人をクリエイターと考えると、プロデューサー同様「支配人」という立場も同じではないか。私の役割は、料理人の力を存分に引き出し、彼らの創造の場を厨房から更に拡張していくことではないかと思うようになった。



不純な動機

「Chef in Residence(シェフ・イン・レジデンス)」のプログラムって、どうやってはじめたんですか?とよく聞かれる。

こんなもの、計画してたらできなかったと思う。

シェフ・イン・レジデンスとは、私たちが勝手にはじめた、国内外の料理人による神山での中長期滞在型のプログラムだ。住む場所と食事を提供。お金のやりとりは一切ない。

滞在中に一緒に農業をやったり、食にまつわる色々なイベントを企画する。神山以外の場所でポップアップなどもやる。四国をはじめとする各地の器など、食にまつわる作家を一緒に訪ねたりもする。







観光的な面で言えば、神山を拠点に四国や京都などの西日本を比較的安価に旅することができるメリットがある。お金を介在させないからこそ、普通に観光で日本を訪れるだけではできない経験が成立しているのではないかと思う。

この構想自体は、神山に引っ越した当初(4年くらい前)からなんとなくあった。地元で長年まちづくりの活動している NPO法人グリーンバレーが、アーティスト・イン・レジデンスを始めて今年で20年。その前代表理事の大南信也さんが「料理人がアーティストのように、この町に滞在するようになったら、もっと面白いことになるわな」と言っていたの覚えている。私は、それをただ実行に移しているにすぎない。

はじまりの動機は、とても不純だった。






昨年、私たちが営む食堂『かま屋』で料理人があと一人必要だったが、採用がうまくいかず苦戦していた。高齢化率50%以上、人口約5,500人の田舎に移住したい腕のある料理人はそんなにいない。日本でいないなら「海外の料理人の方が面白いし、早いんじゃね」ということで、早速、カリフォルニアのオークランドで、地元のオーガニック食材を使った大人気のラーメン屋 『RAMEN SHOP』を経営する旧知の友人の Sam White に連絡した。彼は新店の準備でニューヨークのブルックリンに住み始めていて「ちょっと周りに聞いてみる」と返信があった。

その数週間後、Sam から紹介されたのが、Dave Gould だった。




業界の限界



当初は、Dave を初回の料理人として 2018年3月頃に立ち上げようと考えていたシェフ・イン・レジデンスだが、川本真理さんというイタリア料理人が、年始早々から神山に来たいということで、慌ててプログラムがスタートしたという無計画な経緯がある。また先述の Sam から突然連絡がきて、ニューヨークの ISA や Estela などの有名レストランでスーシェフを務めた Danny Newberg という料理人も川本さんと同時期に滞在するというドタバタ劇で始まった。









現在滞在中の Dave Gould は凄腕の料理人だ。

ニューヨークのブルックリンのレストランでおそらく地元で知らない人はいない『Diner』や『Marlow & Sons』、最近では 『Wyth Hotel』でも有名なAndrew Tarlow が経営するレストランのひとつ『Roman's』というイタリアンレストランで、立ち上げから8年間シェフを務めたキャリアを持つ。

彼が神山に滞在して約半年。このプログラムに参加する3人目の料理人になるが、ニューヨークの料理人 Dave と Danny の両者にほぼ共通して言えるのは、レストランというシステムに限界を感じ(嫌気がさして)神山に行き着いたということである。

ニューヨークのレストラン業界は、激しい競争の上で成り立っていると聞く。
(東京も同じか)

すべての店とは限らないが、飲食業界はブラックになりがちな労働環境の中で、人を採用し、トレーニングし、時にクビにし(アメリカでは)、店を運営していかなければならない。ローカルでフレッシュな厳選した食材にこだわって料理を出すが、農場を訪れる時間すらなく、店と自宅を往復する生活が続く。シェフ絶対主義の店も多く、配下で働く人間の自由はかなり抑制されていると聞く。レストラン業界の闇は深く、そういった状況が繰り返されていると。







Danny は言う。

“The whole industry is fucked.”

 (レストラン)業界全体が崩壊している 


  “Everyone thinks that their favorite restaurant is fine
—but your favorite restaurant is a deep dark place.”

みんな自分のお気に入りのレストランは大丈夫と思っている
ー でもあなたのお気に入りのレストランが、深く暗い場所なんだ。

引用:The Most Exciting Restaurant In New York Isn’t Even A Restaurant



自分の店をもって何になるのか。

レストラン業界で繰り返される、そのループの中に入ることはせず、新しい「何か」を見出すために、料理人たちは神山に来て活動しているのだと思う。
彼らは、一流のシェフであるにもかかわらず、とても OPEN だ。自分たちの知識を惜しみなく教え、また地域からも教わるという、「学び合い」の精神が強いように思う。深く、暗い、閉ざされた場としてのレストランが、彼らのような料理人たちによって「学び合い」の場として開かれていくのではないか。そんな可能性を感じている。

私の役割は、シェフ・イン・レジデンスの活動テーマ「小さな食料政策|Small Food Politics 」を軸に、彼ら=料理人の力を、レストランの厨房やお皿の上にだけに留めず、社会へと接続していくことにあると改めて思う。(彼らは望んでないかもしれないが)

Dave は9月末で一旦帰国、11月にまた神山に戻ってきて年明けまで滞在予定。
Danny は2019年春に来日予定。その他、短期では多数の料理人が入れ替わり来てくれる予定。

前段だけで長くなってしまったので(汗)、料理人たちによる具体的な活動については、次回に。シェフ・イン・レジデンスについてご興味あるかたは、こちらの記事をご一読いただきたい。





真鍋 太一(まなべ・たいち)
1977年生まれ。愛媛県出身。アメリカの大学でデザインを学び、日本の広告業界で8年働く。その後、アメリカで就職するが、挫折して帰国。空間デザイン&イベント会社JTQを経て、WEB制作の株式会社モノサスに籍を置きつつ、グーグルやウェルカムのマーケティングに関わる。2014年、徳島県神山町に移住。モノサスのプロデュース部 部長とフードハブ・プロジェクトの支配人を兼務。
http://foodhub.co.jp/











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