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佐々木章太さん(ささき・しょうた) ジビエ肉狩猟&流通&加工業
第3話 「新しい流通形態」(全5話)

People / PioneerFeb. 17, 2016

このままでいいのか?





ギラギラと燃える闘志を保ったまま、実家のレストランに戻った佐々木さん。
客席50席以上、1日の平均客数は約200人。厨房を兄と2人で担当することになりました。プロのアイスホッケーになるはずだった兄も、紆余曲折を経て料理人として実家で働いていました。

まずは厨房の改革。レトルト食品はもちろん、加工品を極力使わないレシピに変更し、カフェ主体の店から、徐々にフランス料理で培った知識や技術を生かせるようなレストランへと変革していきます。

このとき、佐々木さんを悩ませていたのは「北海道、十勝のこの店でしかできないことは何か」という問題。
「地元の人たちと和気あいあいやって、成長せずに終わるなんて耐えられませんでした。せっかく今まで誰にも負けまいと辛い修業を積んできたのに、このまま埋もれるのかという恐怖心もありました。もっと『ギラギラやりたい』と思ったのです」

ところがある晩、常連客とした会話が、そんな毎日を激変させます。

「東京でどんな料理を作っていたんだと聞かれて、ジビエの話になったんです。どこそこからこんな野生肉が来た、鹿もよく扱ったと話すと、『鹿が来るって言っても、一頭丸ごと毛付きで来るわけではないべ』『骨も皮も外したことないか。そんなら近々、持ってきてやるよ』と……。そのお客様はハンターだったんです」

ブルーシートの向こう側





そして翌日。ディナー営業まっただ中という時に、店の前に一台の車が止まります。
ハンターであるお客さんが、仕留めたばかりの鹿を一頭、持ってきたのでした。

「フットワークの軽い方ではありましたけれど、翌日に、予告なしに持ってきてくれたのには、もう、ぎょっとしました(笑)」

店は住宅街の中。動物の死体をご近所さんに見せるわけにはいかないので、空いていた店のテナントに慌てて引きずり込んで、ブルーシートをかけました。

「でも、店に戻ってオーダーを受けながらも、ブルーシートの下が気になるわけですよ。どうなっているだろうって。初めて、肉になる前の現物に向き合ったこともあり、気持ち的にもすごく、引いていました。ショックだったんでしょうね」

営業終了後、常連客に教えられて、鹿の皮をはぎ、骨を外し、肉にしていきます。所要時間は1時間半。屠りたての生温かい鹿の匂いの中、強い衝撃を受けながらも、様々な関心や疑問、興味が湧き上がってきました。

血だらけになると覚悟したものの、意外と血が出なかったこと。
弾が首に当たっていれば、内臓もきれいに取り出せること。
放血処理が肉質に影響すること。

「後々に役立つことを、あの一晩で教わりました」
しばらく夢に出てくるほどの濃密な一晩。しかし、仕事へと発展するのはまだ先の話です。

最初は「勉強」のつもりだった





「まだ硬いから、1週間ぐらいしたら食べられるよ」という常連客の言葉の通り、解体から3〜4日後に焼いて食べてみると、今まで食べてきた鹿と桁違いにおいしい。地元・十勝にこんなにおいしい食材があることを初めて知りました。

お世話になった御礼の気持ちを込めて、「ビストロ・ド・ラ・シテ」の関根社長にも送りました。
「とてもおいしくてビックリした。東京のレストランは皆、ジビエに困っているから協力してくれないか」
これが、ビジネスの原型となります。

送り先は、シテとシテ出身者のレストラン。「ル・マノワール・ダスティン」「しらとり」「ザ・ジョージアンクラブ」を含めた計4軒。
4軒ともなると、ハンターも知人だけでは賄えません。また食品衛生法により、捕獲したイノシシや鹿を食肉として流通させる場合には、都道府県の条例で定められた食肉処理場での解体、処理が必要になります。

「猟師さんとの個人的な関係で、屋外で処理した野生肉を使っているレストランもあると聞きますが、衛生上の問題など、何かあったらお世話になったお店や一流店の先輩たちに申し訳が立たない。合法的な形で流通させたかったので、保健所と相談してテナントを処理場に改造し、認可をとってスタートさせました」

十勝のジビエシーズンは10月に始まります。10月はウサギや鳥、蝦夷鹿のシーズンは11月から翌2月。ちょうど雪が積もり、レストランから客足が遠のく季節と重なるので、仕事が終わってから解体作業に向かいました。蝦夷鹿の月齢、性別、部位による肉質の違いをじかに感じるための勉強でもあった、と振り返ります。

「食肉処理場を作るにあたって、個人事業主として登録しました。でも、ジビエ肉流通で儲けるつもりも、ずっと続ける予定もありませんでした。一頭扱うことで勉強になるし、何より厨房にいただけでは話もできないようなスターシェフに肉を使ってもらえるということだけで興奮したんです。マイナスにならなければいい、と思っていました」

3歳以下の子鹿を狙う





蝦夷鹿の流通に関して、佐々木さんが決めたことがあります。

・ハンターから買い取るときは、3歳以下の仔鹿を買うこと
・卸すときは部位ごとのキロ売りではなく、1本売りにすること

十勝は北海道の中でも狩猟が盛んな土地。ハンターの数も少なくありません。しかし、狩猟の多くはゲーム用や害獣駆除として行われたもの。狩猟の仕方や処理もまちまちで、食肉になるのは一部に過ぎません。

また、食肉として流通する際は、部位のキロ単価のみが決められており、鹿の月齢や性別での価格差はありません。解体一頭につき、同じ手間(賃)がかかるのならば、ロースやヒレといった高需要部位を多くとれる大型の鹿を選んだほうがいいはずです。

「だから、見るからに鉄が回っているようなもの、色が赤黒い肉が蝦夷鹿肉として東京の有名な業者に卸されていました。これでは、本来のおいしさは伝わらないなと」

そこに佐々木さんが持ち込んだのが料理人の視点、肉の味わいからの判断でした。

例えば0〜1歳のオス・メスの肉は淡いピンク色をしています。運動蓄積が未熟なため筋繊維が繊細で、柔らか。全く臭みがなく、ピュアできれいな味わいはグランメゾン向き。
2歳のメスは初産を迎える時期。仔鹿の繊細さと成熟感のいいところどり。
3歳のメスは初産を終えて0歳の子どもを従えています。メスの柔らかさや繊細さもありながら、しっかりとした旨みと成熟感のある風味。

「僕が狙ったのは3歳までの仔鹿。首や頭を撃っており、胴体(内臓)がきれいな仔鹿が入ったら、大きさに関わらず一頭買いするから、どんどん持ってきてくれ、と猟師さんにお願いしました」

ひとつの命を、残さず食べるために





通常の蝦夷鹿肉の流通方式だと、ロースやヒレなどの高需要部位だけが売れてしまいます。人気のない部位は賞味期限ギリギリまで冷凍庫に保管され、その後破棄されることも多いそうです。

「僕の信念は『一頭まるごとを使い切る』こと。これは、ジビエに限らず家畜や家禽も同様。レストランからの需要がないからといって、猟師・生産者さんに、この部位だけをくれとは言いたくない。それをすると、結局猟師さんに負担を押し付けることになってしまうから。一方で、矛盾するようだけど、僕の論理をお客さんに押し付けるのも違うな、と。全部位を買ってくださいとお客さんに依存するやり方は、需要があるときはいいかもしれないけれど、逆にそこが弱みになることだってある」

それなら、売れにくい部位は、自分たちでどうにかしよう。
十勝という、原料の供給地にいるからこそ変えられる、モデルケースになるのではないか?
探していた、“東京ではできない何か”のヒントを見つけました。
(次の記事へ)
text by Reiko Kakimoto




佐々木章太(ささき・しょうた)
1981年、北海道帯広市生まれ。プロのアイスホッケー選手を目指すも、家業を継ぐために飲食業界へ転身。料理専門学校卒業後、星野リゾートに就職、後に東京・西麻布のフランス料理店「ビストロ・ド・ラ・シテ」へ。2003年に帰郷し、実家レストランの経営立て直しに加わる。2004年、野生肉処理許可を取得。ジビエ肉の狩猟、流通、加工、飲食業を営む「株式会社ELEZO社」代表取締役社長。料理人の知恵と技術を生かしたジビエ肉の供給、加工品の製造でレストラン・小売店からの支持を集める。







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