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佐藤英之さん(さとう・ひでゆき) 地産品加工スペシャリスト
第1話「家の存続をかけて」(全5話)

People / PioneerApr. 21, 2016

どこに住むか、どう働くか





Iターンして、起業する。
その土地の資源を生かした、その土地でしか実現できないビジネスモデルがある。
豊かな自然に囲まれ、ワークライフバランスを自分でコントロールしながら暮らしたい。
仕事が目的であれ、住環境が目的であれ、そんな選択をする人たちの生き方が最近、注目されています。
Photographs by Masahiro goda,Text by Kyoko Kita




たった一つしかないもの





父の代から東京に住む佐藤英之さんの場合、その目的は「家を継ぐ」ことでした。
大分県の城下町、竹田市にある父方の実家は、有形文化財に登録されるほど歴史ある建物です。「喜多屋」の屋号を掲げ、江戸時代に藩営の武家宿として造営されて以降、明治時代に入ってからも、郵便電信事業に水路やトンネルの開墾事業、酒造業に養蚕・製糸業など、町の中心的役割を担ってきました。
しかし40年ほど前に、叔父が喫茶店を営んでいたのを最後に、その暖簾は埃をかぶっていました。

祖母の葬式の日、この家を継ぐ者がいなければ、いずれ誰かの手に渡ることを知ります。
「7代前から歴史を紡いできた家。
戦争で早くに夫を亡くした曾祖母が一人で守ってきた家。
たった一つしかないこの家をなくしてしまってよいのか」。
佐藤さんは、家を守るべく、竹田に移り住むことを決意しました。

竹田を食べる調味料





移住から3年目の2008年、喜多屋は復活を遂げます。それは、佐藤さんが企画から製造・販売まですべて一人で手掛ける加工食品の店。
ここで商品の一部をご紹介しましょう。

「和TaRu」は、卵を使わず、和素材で作ったタルタルソース。百選に選ばれる名水を使い地元の豆腐屋が作るとろっとした豆乳をベースに、自家製の切り干し大根の漬物を加え、味噌や柚子で風味を整えています。この商品は、料理通信主催「第3回 全国お宝食材コンテスト」の選定品にも選ばれました。

「マイルド スイートチリソース aroii(アロイイ)」は、竹田市の特産であるカボスとサフランを使い、甘味、辛味を控えめに、日本人の食卓に馴染むよう作られました。

「ナバ・ナ・ピクルス」は原木干し椎茸のピクルスです。原木干し椎茸は大分県の特産品。栄養価が高く、味わいも優れていながら、戻す時間や調理の手間を惜しむ人が増え、消費量が減っています。そこで小粒の原木椎茸を、スパイスやハーブを利かせたピクルスにしました。

いずれも植物性素材にこだわり、化学調味料は無添加。野菜は竹田市内を中心に、佐藤さんが「この人から買いたい」と思ったものを直接仕入れています。

レシピの開発はもちろん、パッケージデザインも、ネットショップの開設&運営もすべて自前です。
畑を回り、野菜を仕入れ、切ったり混ぜたり。瓶の消毒も、ラベルを貼るのも、発送手配も、もちろん一人。
どんなにがんばっても、1日100~150本が限界。
「手作りの延長線上でやってきました」。

東京というステージに立つ





そうして、6年。
「まだ成功した、なんて言える状況ではないんです」と佐藤さん。しかし、「恵まれたことに、売るチャンスで悩んだことはない」とも言います。
発売以来、東京や大阪、九州の百貨店の催事では常連に。三越伊勢丹の“「ほかにはない新しい価値」をプラスした商品を発信する”「オンリー・エムアイ」でも取り扱いがあります。

数えきれないほどの商品が生まれては消えていく時代、その引き合いぶりに、羨望の眼差しを向ける生産者は少なくないでしょう。
東京で認められるということは、日本で認められるのと同じこと。そして、世界に繋がる入口に立つということ。
どの業界でもそうであるように、東京進出は、多くの作り手にとって、大きな目標なのです。

竹田に移住するまで、食とはまったく関係のない仕事をしていた佐藤さん。
知識も経験もない、そのハンディを克服する鍵となったのは、“よそ者の視点”でした。
移住者だからこそ見えてきた、地域の宝。
東京出身だから表現できた、都市で求められる味やデザイン。
喜多屋復活にかけた、試行錯誤の軌跡をたどります。




佐藤英之(さとう・ひでゆき)
1974年、東京生まれ。広告代理店、大学生協での勤務を経て、西表島に移住。ホテル業に就いた後、カヌーのネイチャーガイドの会社を起業する。2005年、大分県竹田で、江戸時代には武家宿、明治以降は郵便電信事業などで町の中心的役割を担ってきた父方の実家「喜多屋」の相続を決意し、移住。農業地域である竹田の魅力を発信するため、地元の食材に付加価値を付けて加工品を製造・販売。竹田の活性化を目指す。





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