持ち寄りパーティにも使えるプラントベースのおつまみレシピ2種 ピンチョス&ディップ
プラントベースの始め方25
2022.12.12
text by Kyoko Kita / photographs by Tsunenori Yamashita
連載:プラントベースの始め方
健康や環境への配慮から、植物性の食材を主体とする“プラントベース(Plant Based)”な食事法が注目されています。肉や魚や乳製品に頼らずとも「おいしい」料理を作る知恵は、世界各地に存在します。身近なレシピからおいしくプラントベースを始めるヒントを紹介します。
教えてくれたシェフ
東京・南青山「パーラー エイタブリッシュ」和田仁美さん
食べ手目線を意識 見た目と味で気分を上げる
目にも鮮やかな色とりどりの野菜。どんな味か好奇心をくすぐる、形も調理法も様々なフィンガーフード。「エイタブリッシュ」のパーティボックスは、そのビジュアルでまず人の心をグッと掴む。ケータリングというより、まるでギフトだ。
ボックスは、ガーデンサラダ、グリル&スチーム野菜、サンドイッチ&ブレッド、前菜からメインディッシュにもなるフィンガーフード、マフィン&バナナブレッドの5種類。仕入れ状況により内容は変わるが、「どのボックスを組み合わせても満足していただけるよう、食材の重複を極力避け、味の起伏を意識しています」とシェフの和田仁美さん。もちろんすべて、動物性食材を一切使わないヴィーガン料理。さらにオーダーがあれば、サンドイッチを玄米の巻きずしにしたり、醤油の使用を避けるなどグルテンフリーにも対応する。スイーツに至っては常時、小麦不使用だ。ベジタリアンの外国人も多い外資系企業のランチミーティングや、食トレンドに関心の高いモデルや演者がいるスタジオのロケ弁、アパレルメーカーの展示会の食事など、その需要は広がりを見せる。
代表(2019年当時)の清野玲子さんが、前身となる「カフェエイト」をオープンさせたのが2000年。ケータリングを始めたのは、その4年後のことだ。日本におけるヴィーガンレストランの先駆けでありながら、ケータリングに目を付けたのも早かった。「来店するお客様以外の方にも食べてもらいたいという思いで始めました」。デザイナーでもある清野さんは当時、ロケ弁を頼む側の立場だった。その時の苦い経験から自店のケータリングで大切にしたのは、「食べる人の気分を上げること」。それは見た目の美しさであり、食材そのもののおいしさや、味わいのバリエーションを楽しんでもらうことでもある。
たとえばガーデンサラダ一つとっても、年中同じ定番の葉物が入っているわけではない。生産者から直接届けられる無農薬野菜は旬が短いため、その内容は時期によって異なり、ユニークな在来種が加わることも。季節の果物もふんだんに使い、瑞々しい酸味と甘味を添える。また動物性食材は不使用でも、それを意識させない食べ応えや満足感は、レストランクオリティそのものと言える。肉の代わりに豆類を多用する。揚げる、焼く、蒸す、漬ける、包むなど調理法の変化で楽しませる。随所にスパイスを利かせて風味のアクセントにする。ナッツチーズや豆腐マヨネーズなど自家製の調味料も味わいの幅を広げるのに欠かせない存在だ。
「ケータリングがきっかけでレストランに来てくださったり、その逆もよくあります」。“上がる”ケータリングは、店に好循環を生んでいる。
<植物性食材だけでおいしくなるコツ>
1 スパイスを使って冷めてもおいしい味付けに
2 野菜×野菜で、素材の個性を生かす
3 豆腐はしっかり水切りして使う
肉を使わないフィンガーフード
「テンペと野菜のグリル ピンチョス仕立て」の作り方
[材 料](8人分)
*タヒニソース(2カップ分)
A
タヒニ(練りゴマ)・・・1カップ
E.V.オリーブ油・・・大さじ3
菜種油・・・大さじ2
B
レモン汁、ショウガ(すりおろし)・・・各大さじ2
ニンニク(みじん切り)・・・小さじ1
醤油・・・大さじ2
塩・・・ひとつまみ
テンペ(3㎝角)・・・8個
木綿豆腐(水切り/3㎝角)・・・8個
C
醤油・・・大さじ2
酒・・・小さじ1
コリアンダーパウダー、チリパウダー・・・各小さじ1/3
E.V.オリーブ油・・・小さじ1
片栗粉・・・適量
マッシュルーム・・・8個
パプリカ(3㎝角)・・・8個
塩、BBQスパイスミックス、タヒニソース*・・・各適量
[1]
タヒニソースを作る。Aをボウルに入れ、木べらでよく馴染ませ、Bを加える。泡立て器に持ち替え、水大さじ4を少しずつ加えながら混ぜる。塩、コショウ(分量外)で味を調える。
[2]
テンペと木綿豆腐に、混ぜておいたCを絡め、片栗粉をまぶす。
[3]
たっぷりのE.V.オリーブ油(分量外)を引いたフライパンでテンペ、木綿豆腐、マッシュルーム、パプリカを軽くソテーし、塩を振る。
[4]
天板に並べて、250℃のオーブンで約7分焼く。
[5]
BBQスパイスミックスを振りかける。
POINT:通常BBQスパイスミックスはオーブンに入れる前に散らすが、香りをしっかりと立たせ、見た目も鮮やかにするため、ケータリングの場合は焼き上がりに振る。
[6]
串に刺し、ボックスに盛りつけてからタヒニソースをかける。
こんがりとソテーしたテンペと木綿豆腐、グリル野菜に、エイタブリッシュオリジナルのBBQスパイスでパンチを効かせ、冷めてもおいしい仕上がり。
マヨネーズいらずの2種のディップ。「豆腐クリームチーズ」&「ブロッコリーと粒マスタードのディップ」
「豆腐クリームチーズ」の作り方
[材 料](作りやすい分量)
木綿豆腐(水切りしておく)・・・1丁
レモン汁・・・大さじ2
ニンニク(みじん切り)・・・小さじ1
塩、コショウ・・・各適量
E.V.オリーブ油・・・大さじ4
[1]
フードプロセッサーに木綿豆腐、レモン汁、ニンニク、塩、コショウを入れて滑らかになるまで撹拌する。
[2]
フードプロセッサーを回しながら少しずつE.V.オリーブ油を加え、塩、コショウ、レモン汁で味を調える。
濃厚滑らかなディップは、豆腐でできているとはわからないほど、クリームチーズそっくりのクリーミーなディップ。しっかり水切りするのがポイント。
「ブロッコリーと粒マスタードのディップ」の作り方
[材 料](作りやすい分量)
ブロッコリー(小房に分ける)・・・1株分(約250g)
E.V.オリーブ油・・・50ml
レモン汁・・・10g
塩・・・5g
粒マスタード・・・20g
[1]
ブロッコリーを茎が軟らかくなるまで塩茹でする。冷水に取り、水気をよく絞る。
[2]
1、E.V.オリーブ油、レモン汁、塩をフードプロセッサーに入れてペースト状にする。粒マスタードを加えて軽く混ぜる。
野菜で野菜を食べるためのディップ。ブロッコリーの自然な甘さと粒マスタードの酸味が、グリル&スチーム野菜の個性を優しく受け止める。
◎パーラー エイタブリッシュ
東京都港区南青山5 -10-17 2F
☎03-6805-0597
10:00~18:00
不定休
東京メトロ表参道駅より徒歩5分
https://www.8ablish.com/
※新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため要請に合わせて営業時間が変わることがあります。
(雑誌『料理通信』2019年12月号掲載)
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