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JOURNAL / JAPAN

【ようこそ発酵蔵へ】筑後平野の自然と伝統が醸す豊かな味「味噌」

福岡・柳川「鶴味噌醸造」

2024.03.18

福岡・柳川「鶴味噌醸造」

text by Noriko Hane / photographs by Sakura Takeuchi

連載:ようこそ発酵蔵へ

写真で巡る発酵の世界。丁寧に時間をかけて微生物と向き合い、日本の伝統食を次代へつなぐ蔵、生産者を訪ねます。稲作や麦の生産が盛んな福岡の水郷の町で、150年以上味噌づくりを行う「鶴味噌醸造」を訪ねます。

大正期に建てられたレンガ造りの蔵は現在も現役。味噌の熟成蔵として活用している。

大正期に建てられたレンガ造りの蔵は現在も現役。味噌の熟成蔵として活用している。

できあがったばかりの米麹。

できあがったばかりの米麹。

麹と大豆、塩が混ざり、味噌のもとができたら、混ぜながら空気を抜き、その後、発酵、熟成させる。

麹と大豆、塩が混ざり、味噌のもとができたら、混ぜながら空気を抜き、その後、発酵、熟成させる。

飲食店への卸しのほか、小売りも行う。細かいニーズに応えるため、充填はすべて手作業で。

飲食店への卸しのほか、小売りも行う。細かいニーズに応えるため、充填はすべて手作業で。

水面に映える熟成蔵、通称「並倉」は国の有形文化財に登録されている。

水面に映える熟成蔵、通称「並倉」は国の有形文化財に登録されている。


筑後平野の自然と伝統が醸す豊かな味

水郷の町として知られる福岡県柳川市。町の中心部に巡らされた水路は、かつては物資を運ぶための重要な交通路であった。この利便性のよさから、明治3年から150余年にわたり、柳川で味噌醸造を行なっているのが、「鶴味噌」である。

この地方は筑後平野が広がり、稲作や麦の生産が盛んな穀倉地帯。鶴味噌では、まろやかな甘さの米味噌、ふくよかな旨味の麦味噌、合わせ味噌を造り、主流は合わせ。米と麦、両方のよさを融合した奥行きのある味と豊かな風味が幅広い層に受けている。

歴史ある蔵だが、今では機械に任せる部分が大半。とは言え、味噌醸造の要である製麹は変わらず手掛ける。米麹の場合は地元・福岡県産米を、麦麹に使う裸麦は愛媛県産を中心に使用。蒸した米や麦に麹菌をつけて発酵させ、3日かけて麹を造る。職人の目と手で状態を見極める、機械任せにできない工程だ。味噌を熟成させるのは大正時代に建てられた3棟のレンガ蔵。通気性がよく、夏でもひやりとしていて、温度湿度を一定に保ちやすいことから、現在も現役で活躍している。

「鶴味噌」では味噌の普及にも力を入れる。フランスやアジア他20ヶ国へ商品を輸出するほか、味噌調味料やフリーズドライなど、より手軽に味噌を食べるための商品開発にも意欲的だ。味噌醸造という伝統を軸に、若い世代や時代に即した味噌のあり方を果敢に攻める。

100%国産原料の「無添加 合わせ 鶴」648円/500g、一番人気の白系「白秋合わせ」572円/1kg、赤系「やながわミックス」680円/1kg、焼肉のタレのように使える「相撲味噌」346円/150g。

右から、100%国産原料の「無添加 合わせ 鶴」648円/500g、一番人気の白系「白秋合わせ」572円/1kg、赤系「やながわミックス」680円/1kg、焼肉のタレのように使える「相撲味噌」346円/150g。



◎鶴味噌醸造
福岡県柳川市三橋町江曲216
☎ 0944-73-2166
https://www.tsurumiso.co.jp/

(雑誌『料理通信』2019年4月号掲載)

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