エネルギーの巡りを高める「夏の薬膳 トウモロコシのスープ」
スローレシピ
2025.07.22

photographs by Hide Urabe
連載:スローレシピ
材料をイチから用意し、時間をかけて、料理すること自体をゆっくりと楽しむ。それが“スローなレシピ”。時短とは真逆の価値観の先に、とびきりの味が待っています。今回は、猛暑とエアコンの冷えで疲れた体を癒す「夏の薬膳 トウモロコシのスープ」です。
目次
教えてくれた人:東京・西早稲田「旧雨」前田克紀さん

大学で中国文化を学んだ後、調理師専門学校を卒業。東京・根津の中国料理店「古月」山中一男氏の下で研鑽を積み、高級営養薬膳師の資格を取得。2012年に支店だった店を引き継ぎ、「古月 新宿」オーナーシェフに。おいしく食べて心身ともに健やかになる料理を提供。2023年9月をもって閉店し、西早稲田で「旧雨」をオープン。
崩れたバランスを食事で整える
スーパーに行くと、並んでいる食材を無意識に薬膳の効用で分類しています。その日、その時の体に必要なものを取り入れることは、僕には染みついている感覚です。
「薬膳」とは、すなわち“食養生”。中医学にのっとり、食事療法を兼ねた料理法です。中医学では体のある要素が過剰になったり、不足したりする状態を病気と呼びます。その崩れたバランスを、食事で整えるのです。
今回は夏の体によい組み合わせを。薬膳は独特の組み合わせが魅力です。エネルギーとなる食材は鶏肉、そのエネルギーを巡らせる役割が陳皮とショウガ。冬瓜とトウモロコシは体の水分を排出させ、エネルギーの巡りを良くする環境を整えます。
動物性タンパク質、野菜、味の出る乾物・ドライフルーツ、ハーブ・スパイス、4つから1つずつ加えれば味がまとまり易い。塩はお好みで最後に。煮込む前に塩を加えると効果が狙えないといわれます。トウモロコシは早く味が落ちるので、できれば朝採りを。すぐ使わない場合は冷凍し、そのまま使います。
健康情報に従って、同じものを食べ続けることは、薬膳から考えればおかしなこと。だってその食材を集中して食べれば、当然体のバランスは崩れるでしょう? 手軽に薬膳、日本でも広まってほしいです。
<薬膳の知恵> 土鍋を使う

水分の蒸発が少ない、口径の小さい土鍋を使うのがベスト。熱伝導が早すぎる鉄鍋は避けた方がよい。50分~1時間ゆっくりと加熱し、飲んだ端から体に染み込む味わいを作る。
「夏の薬膳 トウモロコシのスープ」の材料と作り方

[材料](2人分)
鶏手羽先・・・200~240g
冬瓜・・・80g
トウモロコシ・・・1/2本
ニンジン・・・60g
陳皮・・・適量
ショウガ・・・2片
水・・・400~450ml
好みのタレ(ポン酢や酢醤油、ショウガ醤油など)・・・適量
[作り方]
[1]トウモロコシは芯ごと使う

トウモロコシは1.5㎝の輪切りにする。
[2]ニンジンは皮つきで

ニンジンは皮付きのままひと口大の乱切りにする。冬瓜はワタを除き、皮を剥いてイチョウ切りにする。
[3]鶏肉は骨付きを使う

手羽先は関節部分で切り分ける。
[4]動物性タンパク質は下茹でする

3を沸騰した湯に入れて2~3分茹でる。
[5]アクをよく洗い流す

ザルにあげ、流水で表面に付着したアクをよく洗い流す。
[6]1時間、静かに煮る

土鍋に、材料すべてを加えて強火にかけ、沸騰したら水面が揺らがない程度の火加減にし、アクを除き、蓋をして50分~1時間程度煮る。スープと具を分けて器に盛り、好みのタレを添える。

薬膳では「消化器官の中で余っている水分を除き、働きを助ける」と言われる食材の組み合わせ。旬のトウモロコシを芯ごと煮込み、体に染み入るすっきりした力強い味を作る。汗をかいて潤いが欲しい場合は、陳皮をレモンに、鶏を豚にかえると良い。具は好みのタレで。
(雑誌『料理通信』2017年7月号掲載/本文はウェブサイト用に一部調整しています)
東京・新宿「旧雨」の店舗情報
◎旧雨
東京都新宿区西早稲田2-3-21 ケイビル1F
☎なし
17:00~21:00
日曜、月曜休
Instagram:@kyuuu_waseda
※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
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