レモンの酸が澄みわたる。きび砂糖100%の「タルト・オ・シトロン」
これからの砂糖の話をしよう① パティシエ編 東京・幡ヶ谷「Equal」
2026.03.26
【PROMOTION】text by Rieko Seto / photographs by Masahiro Goda
嗜好面でも健康面でも、低糖が加速していくなか、いま「おいしい」をつくるプロたちは、甘味をどう捉えているのでしょう。サトウキビの風味が生きた、きび砂糖を使うジャンルの異なるプロたちの視点を通じて、これからの甘味のあり方を考えます。
初回は、東京・幡ヶ谷「Equal」の後藤裕一シェフが、ウェルネオシュガー「きび砂糖®」100%でつくるレモンタルトに挑戦。きび砂糖が生み出す自然な余韻と、澄みわたるレモンの酸味は、驚きの発見の連続でした。
目次
- ■「砂糖づかい」で菓子に加わる、パティシエの“色”
- ■ベーシックな中に生まれる、味わいのメリハリ
- ■「タルト・オ・シトロン」の材料
-
■「タルト・オ・シトロン」の作り方 <生地を作る>
- ■「タルト・オ・シトロン」の作り方 <アパレイユを作る>
- ■「タルト・オ・シトロン」の作り方 <イタリアンメレンゲを作る>
- ■「タルト・オ・シトロン」の作り方 <組み立てる>
東京・幡ヶ谷「Equal」後藤裕一
大学在学中に「オテル・ドゥ・ミクニ」に入店。「キュイジーヌ[s]ミッシェル・トロワグロ」を経て渡仏し、「メゾン・トロワグロ」でシェフ・パティシエを務める。2015年、代々木八幡に「PATH(パス)」を、19年、幡ヶ谷にパティスリー「Equal(イコール)」を開店。
「砂糖づかい」で菓子に加わる、パティシエの“色”
「砂糖はお菓子屋の仕事にとって、必要不可欠であり、最も根本的な素材」と語るのは、東京・幡ヶ谷「Equal(イコール)」のオーナーシェフ、後藤裕一さんだ。甘味はもちろん、食感や焼き色をもたらし、保存性を高めるなど、お菓子作りで砂糖が果たす役割は非常に大きい。
一方で、「当たり前にありすぎて、何も考えずに使われていることが多い素材」とも。小麦粉であればいろいろ使い分けたり、ブレンドしたりする人が多くみられるが、「砂糖はまるでそれ一択かのようにグラニュー糖が使われていることがほとんど。もっと踏み込んでみてもいいのかな、と思います」と、語る。
後藤さん自身もメインとして使用しているのはグラニュー糖だが、そこに自分の“色”を加えるアイテムとして他の砂糖を使用している。スパイス使いの感覚で使い分けたり、グラニュー糖の配合の一部を置き換えたりして、自分の菓子に表情をつける。なかでもお気に入りなのが、ウェルネオシュガーの「きび砂糖」だ。
「きび砂糖は、精製途中の糖液を取り出して作られている砂糖なので、まろやかな甘さとコク、豊かな風味が魅力的です。それでいて風味が濃すぎず、主張しすぎないけれど主張がある。その塩梅が絶妙なんです」。「Equal」のお菓子が目指す、親しみある味わいを生むうえでも、非常に活躍する素材だという。
きび砂糖に求めるのは、同じ糖でも黒糖のようにわかりやすくて直接的な味の表現ではなく、小麦粉や卵のように、あくまでもベーシックな素材の範囲で自然に醸し出される、やわらかな味の表現。
「絵画でも、何の画材を使って描かれているか見る人には分からないように、パッとわからない部分でクリエイションを発揮したい」と、後藤さん。
グラニュー糖は甘さや風味がシャープに力強く押し寄せるのに対し、きび砂糖はじんわり広がって後を引く余韻へと繋がる。そのバランスを取りながら、グラニュー糖の一部をきび砂糖に置き換えて、主素材とグラニュー糖の間を繋ぎ、味わいを調整するのが、後藤さんがよく行う、きび砂糖使いのテクニックだ。
ベーシックな中に生まれる、味わいのメリハリ
今回はそこから一歩推し進め、他の砂糖を一切ブレンドすることなく、きび砂糖だけで作る「タルト・オ・シトロン」に挑戦。「はじめは本当にできるのか心配な部分もありましたが、やってみたらいいことがたくさんあって、驚きでした」と、後藤さん。
なかでも一番の発見は、イタリアンメレンゲだ。きちんと泡立つのはもちろん、キャラメルを思わせるきび砂糖の香ばしさによって卵臭さが抑えられ、コクのある味わいに。質感はコシがあってクリーミーで、とろりとなめらかなアパレイユと違和感なくマッチ。ダレにくいというのもうれしい発見だ。仕上げにきび砂糖をふってバーナーで焦がせば、焦げの強弱が目にも舌にも変化を与え、キャラメルのような芳しさが食欲を刺激する。
一方、主役となるアパレイユは、「きび砂糖のコクとの対比が生まれるからなのか、レモンの酸味がクリアに際立つのが不思議です」と、後藤さん。そこに歯触りのよい土台の生地、パータ・フォンセの香ばしさと塩気も加わって、ベーシックながらもメリハリのある、独創性あふれるひと品となった。
「精製度の低い砂糖を選ぶという、エシカルな観点からだけでなく、『おいしさ』の意味でも、きび砂糖を使う意義は大いにあると思います。繊細な舌を持つ日本人であればなおさら、その違いを感じ取ってくれるはず」と、後藤さん。
きび砂糖が秘めるポテンシャルに触れ、職人魂を大いに刺激されたようだ。
「タルト・オ・シトロン」の材料
【材料】
■生地(4台分・1台あたり約120g)直径16×高さ3㎝セルクル
A(ホイッパーで混ぜ合わせ、塩と砂糖を溶かしておく)
牛乳・・・50g
ウェルネオシュガー「きび砂糖」・・・5g
塩(フルール・ド・セル)・・・5g
卵黄・・・10g
薄力粉・・・125g
強力粉・・・125g(薄力粉と合わせてふるう)
バター※・・・175g
※バターは1~2㎝角に切り、冷蔵庫で冷やしておく。
ドリュール(全卵を溶いて漉す)・・・適量
■アパレイユ(2台分・1台あたり約290g)
バター(1~2cmの角切り)・・・94g
レモン果汁・・・220g
すりおろしたレモンの皮※・・・3g(約2個分)
※レモンの皮は、直前にすりおろして加える。
B
全卵・・・110g
卵黄・・・44g
ウェルネオシュガー「きび砂糖」・・・165g
■イタリアンメレンゲ(作りやすい分量・1台あたり70~80g)
ウェルネオシュガー「きび砂糖」・・・200g
水・・・80g
卵白・・・100g
後藤裕一シェフの「きび砂糖」の使い方
「砂糖全体の1~5割加えて、味わいに奥行きを作るのが僕の使い方ですが、穏やかな風味で主素材の味わいを邪魔しないので、今回のようにすべてを「きび砂糖」にしても面白いお菓子が作れます。仕上げにバーナーでラフに焦がすと、食感や香りに変化が生まれます」
「タルト・オ・シトロン」の作り方 <生地を作る>
【1】バターと混ぜ合わせる
フードプロセッサーに粉とバターを入れて攪拌する。途中で数回止めて、内壁や底についた生地をゴムべらで落とす。
粉全体が黄色み帯びた砂状になり、ほぼバターの粒が見えなくなれば終了。手作業で行う場合は、バターを指先で潰すようにしながら粉となじませた後、手のひらをお椀状に丸めて両手をこすり合わせるようにして粉とバターをなじませる。
<POINT>粉に水分を加える前に油脂でコーティングしてもろもろとした食感に。バターは溶けやすいので、冷たいバターを使用すること。
【2】卵液を加え、攪拌する
1をミキサーボウルに入れて、Aを加えてホイッパーでざっと混ぜたら、ビーターをつけて低速で攪拌する。ある程度生地がまとまってきたところで手で切り混ぜ、混ざりきらずに残っている粉をざっとなじませる。<POINT>ミキサーがない場合は、手で切り混ぜる。
【3】生地を丸める
台に取り出し、手でざっとこねてひとまとまりにする。
4分割(1台120gが目安)し、手で包むようにして台の上で転がして丸め、上から軽く押さえて平らにする。ラップで包み、2~3時間以上冷蔵で休ませる。
【4】伸ばす
台に3を取り出し、多めに打ち粉(強力粉・分量外)をふって、生地の向きを変えながら、めん棒で直径約21㎝の円形にのばす。2~3時間冷蔵で休ませる。
【5】セルクルに生地をはりつける
内側に薄く油を塗ったセルクルに、生地をかぶせ、型の底の角までしっかり入れ込み、ひだをつくるように側面に貼りつける。オーブンペーパーを敷いたトレイにのせてラップをかけ、冷蔵庫で30分~1時間休ませる。 <POINT>生地を押し付けすぎたり、引っ張ったりして生地の厚みを変えないよう注意する。
【6】はみだした生地をカット
セルクルの上部にはみ出した生地をペティナイフでそぎ落とす。
【7】タルトストーンを敷き詰める
円形に切って縁の部分に切り込みを入れたオーブンペーパーを生地にかぶせて、タルトストーン(重石)を生地の高さいっぱいになるまで入れる。
【8】165℃で50分焼成
165℃のコンベクションオーブンで約50分焼く。 室温で粗熱が取れるまで冷ます。
【9】卵液を塗る
ドリュールを刷毛で内側に薄く塗る。165℃のコンベクションオーブンに2~3分入れて乾かし、室温で冷ます。<POINT>ドリュールを塗ることで、アパレイユが生地と密着した状態で焼き上がる。
「タルト・オ・シトロン」の作り方 <アパレイユを作る>
【1】レモン果汁にバターを溶かす
鍋にレモン果汁とバター、すりおろしたレモンの皮を入れて火にかけ、ゴムベラで混ぜながら沸騰させる。バターを溶かしつつレモンの皮の香りも移す。沸騰させる時間が長いと分量が変わるので注意。
【2】卵液を混ぜる
1と並行して、ボウルにBを入れてホイッパーですり混ぜる。<POINT>全卵だけでなく卵黄を加えることで、よりとろっとした質感になる。
【3】卵液とレモン果汁を合わせる
2に1の半量を2回に分けて加え、その都度よく混ぜる。残りを加えてよく混ぜ合わせたら、鍋に戻し入れる。
【4】アパレイユを加熱
中火にかけ、ホイッパーで混ぜながら82℃になるまで加熱する。
【5】アパレイユを漉す
網で漉してボウルに入れる。皮のエキスも絞り切るよう、ゴムべらで上からぎゅうぎゅうと押しながら漉す。
【6】生地に流し入れる
アパレイユが温かいうちに、土台の生地に7分目くらいまで流し入れる。(1台当たり280gが目安)
【7】再び165℃で12分焼成
165℃のコンベクションオーブンで約12分焼成する。アパレイユが型の高さ近くまでふくらみ、縁にぷくっと気泡が出てくる状態が焼き上がりの目安。室温で冷ましたのち、冷蔵庫で冷やす。
「タルト・オ・シトロン」の作り方 <イタリアンメレンゲを作る>
【1】きび砂糖のシロップを作る
きび砂糖と水を鍋に入れ、ホイッパーで混ぜる。強火にかけて120℃になるまで加熱する。
【2】メレンゲを泡立てる
1と並行して、卵白をミキサーボウルに入れて、中高速のミキサーで5分立てに泡立てる。1が約115℃になったら泡立て始めると、タイミングが合う。
【3】メレンゲにシロップを注ぎ入れる
1を火からおろし、ひと息置いて泡を少し落ち着かせる。ミキサーに注ぎ入れながら高速で泡立てる。しっかり泡立ってボリュームが出たら、低速に落として粗熱が取れるまで攪拌を続け、きめを整える。
【4】ツノが立つまで泡立てる
「タルト・オ・シトロン」の作り方 <組み立てる>
【1】表面の水分を拭う
冷やして置いたタルトを取り出し、表面に浮き上がった水分をペーパーで吸い取る。
【2】イタリアンメレンゲを塗る
イタリアンメレンゲをゴムべらでのせ、パレットナイフでラフにならして表情を出す。タルトの縁についたメレンゲをきれいにぬぐい取る。
【3】バーナーで表情をつける
表面全体にきび砂糖(分量外)をふるい、バーナーで焼き色をつける。均一に焼き色をつけるのではなく、メレンゲの筋がついた部分を強く焦がすなどしてニュアンスをつける。ところどころきび砂糖の小さな粒が残っていてアクセントになって美味。
◎Equal
東京都渋谷区西原2-26−16
☎03-6407-0885
10:00~17:00
月曜、火曜、水曜休
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◎ウェルネオシュガー
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