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JOURNAL / JAPAN

日本 [東京]

有機農法で東京の畑の存在価値を高める

未来に届けたい日本の食材 #05有機栽培の野菜

2021.06.07

変わりゆく時代の中で、変わることなく次世代へ伝えたい日本の食材があります。手間を惜しまず、実直に向き合う生産者の手から生まれた個性豊かな食材を、学校法人 服部学園 服部栄養専門学校理事長・校長、服部幸應さんが案内します。

連載:未来に届けたい日本の食材

text by Michiko Watanabe / photographs by Daisuke Nakajima


東京・立川の住宅地に囲まれるように広がる山川農園の畑は、70 アールのうち15 アールが2019年、有機JAS認証を受けました。東京には、有機栽培の農家がまだまだ少ないなか、BLOF(ブロフ)理論を用いた有機栽培を実践している山川敬記さんを訪ねました。
太くてずっしりと重い黄ニンジンを手にする山川敬記さん。「いずれは、お客さんにカゴとハサミを渡して、畑から直接、野菜を収穫して販売できるようにしたいですね」。
このあたりは、作土層が浅く、大雨などの時には染み込まない土地なんです。それが、こうやって土の中に棒を刺すと、ほら、2メートルぐらい入っちゃう。これは土に入れた酵母菌などの微生物が関係しています。ニンジンを抜いてみましょうか。普通なら円錐形ですが、うちのは円筒形でしょ?太くて、ずっしり重い。1本で一般的なニンジンの3本分くらいあります。葉菜類も根がまっすぐに伸びる。土が軟らかいから、収穫の時も抜きやすい。

東京は有機栽培の農家が少ないんです。始めたくても身近に相談できる人がいないし、そもそも周りに大規模な稲作や酪農をやっている人がいないので、循環型の農業も難しい。
そんな中、ブロフ理論(生態系調和型農業技術理論)の存在を知り、これなら、自分の畑でも有機栽培が実践できるのではないかと、取り組み始めました。

畑はまず土壌診断をして、足りない肥料を施すことから始めます。植物性の堆肥やアミノ酸肥料の他に、酵母菌や納豆菌も一緒にまいて、その後、マルチ(ビニールシート)をかけます。こうして酸素のない状態を作ることで、発酵を促していくのです。
強い土を作って、栄養価の高い丈夫な野菜へ。酵母菌、納豆菌をプラスしてマルチで覆うことで、発酵が進み、フカフカに。また熱で雑草の種も死滅する。日照時間が少ない時も、成長に影響が出ないよう、土作りの段階で炭水化物の多い肥料や堆肥を施すことも栄養価の高い丈夫な野菜が育つ条件になる。
数日経つとマルチが膨らみ、土の中が発酵しているのがわかります。マルチで覆っているので、発生した二酸化炭素は外に出られず、下へ下へと向かい、それによって土はフカフカになります。

夏であれば、さらに土中温度が上がるので、雑草の種を死滅させたり、病気の予防にもなる。ちょっと人間の体と似てますね。発酵食品で体の働きがよくなるように、微生物を活性化させて、強い土を作っているわけです。
軽く2メートルはある棒を、土に刺してみせる山川さん。微生物によって、土が深いところまで耕されていることがわかる。
植物は光合成によって成長に必要な炭水化物を手に入れています。しかし、光合成ができるのは天気のいい日に限られるので、悪天候が続くと、炭水化物が不足して成長不良を起こします。
有機栽培への移行には3年かかる。写真はライ麦の緑肥。収穫が終わった後の畑を乾燥から守る役割もある。

ブロッコリーはふつう1個採りだが、山川さんは脇芽を残して、1株からなるべく長く収穫できるように栽培している。
ブロフ理論では、炭水化物の多い肥料と堆肥を施すので、光合成ができない時は、根が土から炭水化物を吸収して成長を続けます。蓄えが土にあることで、ビタミンなどの様々な活性物質も継続的に生み出せますから、栄養価の高い丈夫な野菜に育つんです。

将来的には八百屋感覚でお客さんが畑に来て、収穫、購入できる「町の家庭菜園」にしたいですね。有機栽培の野菜を通して、東京ならではの新しい農業の価値を発信していけたらと思います。
ケールやホウレン草、カブ、ルーコラ、カラフルミニトマト、多色なカリフラワーなど少量多品種で栽培し、野菜セットをレストランや一般家庭に販売。仲卸にも出荷している。




◎山川農園
me.llamo.montana.rio@gmail.com 
( 雑誌『料理通信』2020年5月号 掲載)






















































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