「ラトリエ モトゾー」藤田統三シェフに教わる
ガルバーニ サマーリコッタ・デザート活用術
1970.01.01
text by Mieko Sueyoshi / photographs by Tsunenori Yamashita
シェフからパティシエまで、世界中のプロに愛される「ガルバーニ」のチーズ。
中でもフレッシュで上品な口溶けが特徴のリコッタは、暑くなるこれからの季節に、デザートとしても活躍の幅が広がります。
今回は日ごろからガルバーニのチーズをデザートに取り入れているというイタリア菓子店「ラトリエ モトゾー」の藤田統三シェフに、リコッタチーズの魅力が詰まった夏のデザートを、2品教わりました。
爽やかなリコッタの軽さが決め手
夏のリコッタ 塩・トマトティラミス
「リコッタが持つ塩気は、イタリア菓子にとってとても重要です」と藤田統三シェフ。
乳清を煮詰めて作るリコッタチーズは、低脂肪でミルキーな甘さが特徴だが、中にほんのり感じる塩気は製品によって濃淡がある。シェフが長年愛用しているガルバーニは「どちらかというと塩気が濃い。このしっかりした塩味が、お菓子の輪郭をくっきりと引き立たせます」。
一品目のデザート、塩・トマトティラミスは、イタリア菓子の定番・ティラミスの夏バージョン。
「体が塩を欲する夏だからこそお菓子にも塩味を効かせました。ナトリウム過多にならないよう、カリウム豊富なトマトを組み合わせてバランスをとっています」。ティラミスは通常、マスカルポーネを使うデザートだが、「暑いこれからの時期は、より口当たりの軽いチーズがいい」と、コクがありながら、さらりと食べられるフレッシュなリコッタを取り入れた。
作り方は、トマトジュースのシロップを染み込ませたビスキュイの上に、リコッタチーズのムースを重ね、上にトマトフレーク、シロップ漬けのトマト、バジル、結晶塩を飾るだけ、ととてもシンプル。塩、砂糖、粗挽き黒コショウを加えたムースは、リコッタ特有の滑らかな口あたりはもちろん、塩気とキレの良い甘味、ピリッと効いた黒コショウがシロップ漬けの甘いトマトと好相性だ。
さらに香ばしいトマトフレークと爽やかなバジルの香りが、夏らしいアクセントに。リコッタチーズのムースは、今回のレシピの他にも、フルーツやナッツ、チョコレートと組み合わせれば、それだけでデザートの一皿になり、またカポナータに添えるなど、料理のお供としても活躍する。たくさん作って、夏ならではの組み合わせを楽しみたい。
<RECIPE>
(材料)下辺5×上辺7cm四方のカップ6個分
<リコッタのムース>
板ゼラチン ※1……3g
A
ガルバーニ リコッタ……250g
グラニュー糖……40g
塩……1g
黒コショウ(粗挽き)……0.4g
卵白(2個分)……60g
グラニュー糖……40g
レモン汁……6g
<仕上げ>
サヴォイアルディ ビスキュイ(市販で可)……6本
トマトジュースシロップ ※2……150g
ミニトマト(レッド、イエロー各2)……各6個
トマトフレーク……適量
ミニトマトのシロップ漬け ※3……6個
バジル(フレッシュ)……小さめの葉6枚
結晶塩……少量
(作り方)
1. リコッタのムースを作る。ボウルにAを合わせ、グラニュー糖が均一に溶け込むまで泡立て器で混ぜ合わせる。
2. 溶かしたゼラチンを加えて混ぜる。
3. 別の油気のないきれいなボウルに卵白を入れ、砂糖をひとつかみ加えて泡立て器でふっくらと泡立てる。
4. 残りの砂糖を加えて混ぜ、キメの細かいメレンゲを立てる。レモン汁を加えてさらに混ぜる。
5. 2に4を潰さないよう加える。ヘラ等で全体をさっくりと混ぜ、滑らかになったら容器に移し、冷蔵庫で2~3時間冷やす。
(仕上げ)
1. サヴォイアルディ ビスキュイを長さ半分に切って容器の底に並べて敷く。トマトジュースのシロップを流し、浸み込むまで約5分待つ。
2. スライスしたミニトマトをカップの側面に断面が見えるように貼り付ける。
3. リコッタのムースをスプーン等で加える。
4. トマトフレークを散らし、ミニトマトのシロップ漬けをのせ、バジルと結晶塩を飾る。
Point
チーズ、トマト、塩と、イタリア料理を思わせる食材の組み合わせはデザートとしても新鮮。塩気の濃いガルバーニのリコッタにさらに塩を加えることで、味がぼやけず、輪郭のはっきりした仕上がりになる。
リコッタが氷菓に変身! 伊伝統菓子を気軽に味わう
ナスのパスティッチョ セミフレッド仕立て
アマルフィにある「ドン・アルフォンソ」が発祥とされるナスのパスティッチョは、ドライフルーツを混ぜ込んだリコッタを甘く煮たナスで包み、チョコレートソースで覆ったデザートだ。
初めて藤田シェフがこのデザートに出会ったのは、とあるイタリアンレストラン。「デザートにナス?」と驚き、感銘を受けたシェフが今回、アレンジを加えて作ったのがこの一皿だ。
ポイントは、リコッタを一晩十分水切りして粉糖、練乳、E.V.オリーブ油と混ぜ合わせ、濃厚なベースの味を作る点。そこに水切りして出たホエーで溶いたプチドリップ(とろみ付け剤)とリキュールでマリネしたドライフルーツを混ぜ込んで凍らせる。ナスはどんなナスでも作れるが、今回は、シナモンシロップで1時間ほどじっくり煮ても煮崩れしないよう、身質のしっかりした米ナスを選んだ。
食べる数分前に冷凍庫から出し、表面の霜を拭き取ってからチョコレートソースをかけて仕上げる。艶やかなドーム型のチョコレートに隠された美しくカラフルな断面にまず魅せられ、食べれば甘いナスとミルキーなセミフレッド、唐辛子の刺激を加えたチョコレートソースとの組み合わせに、新鮮な驚きを隠せない。「リコッタに練乳とE.V.オリーブ油を加えることで、甘いナスや唐辛子粉を入れたチョコレートに負けない濃密な味わいが生まれます。上質で新鮮なリコッタだから、狙い通りの味が作れる。それがガルバーニを愛用する大きな理由ですね」。
<RECIPE>
(材料)直径6cmのドーム型8個分
ガルバーニ リコッタ……250g(水切り後は約220g)
粉糖……60g
米ナス(大)……約2本
レモン汁……適量
A
水……500ml
グラニュー糖……250g
シナモンパウダー……適量
練乳……60g
EVオリーブ油……30g
プチドリップ……2g
ドライフルーツのリキュールマリネ(オレンジピールやレーズン等お好みで)……100g
(仕上げ)
B
チョコレート……適量
赤唐辛子パウダー……少量
飾り用のチョコレート※1……適量
オレンジピールパウダー※2……適量
ピスタチオ(細かく刻む)、ラズベリー(手でちぎる)……各適量
(下準備)
1. ボウルにザルを重ね、ペーパータオルで包んだリコッタチーズを置く。上に底面が平らな鍋やボウルをのせ、一晩水切りする(出たホエーは取っておく)。水気が切れたら、粉糖を加えて均一になるまでヘラ等で混ぜる。
2. 米ナスは、ヘタを取って皮を剥き、厚さ5~6㎜にスライスする。容器に水適量とレモン汁を合わせ、ナスを浸して灰汁を抜く(約1時間)。
3. 鍋にAを合わせて沸かし、2を加えて弱火に落とす。ナスがしっとりするまで炊けたら、取り出して汁気を切る。
(作り方)
1. ボウルに練乳とE.V.オリーブ油を合わせて泡立て器で手早く混ぜながら乳化させる。
2. 粉糖を混ぜた水切りリコッタと合わせ、しっかり混ぜる。
3. リコッタから出たホエーの一部(10g程度)にプチドリップを溶かし、2に混ぜ合わせる。
4. ドライフルーツのリキュールマリネを加えて混ぜる。
5. ドーム型の側面に縦に貼り付けるように米ナスのシロップ煮を敷き込み、4を流し込む。
ナスで包み込み、底になる部分の隙間をナスで埋めて冷凍庫で2~3時間、凍るまで冷やし固める。
(仕上げ)
1. 凍ったナスのセミフレッドを室温に出し、表面が溶けてきたら型から外し、皿に盛りつける。
2. Bを混ぜ合わせたチョコレートソースを全体にかけ、上に好みの大きさに割ったチョコレートの板を数枚差し込む。
3. 周囲に、オレンジピールパウダーとピスタチオを散らし、ラズベリーを添える。
Point
とにかくリコッタの水分をしっかり切ること。ペーパータオルで包んだ上に平らな鍋で重しをのせ、一晩かけて水切りをする。
今回のレシピ2品に使用しているチーズは、ガルバーニ リコッタ 250gです。
デザートを教わったシェフ
「ラトリエ モトゾー」藤田統三シェフ
「デザート、と難しく考えず、夏らしく味わえる食材の組み合わせを選びました。上品な甘さとコクがあり、塩気の輪郭もはっきりしている「ガルバーニ」のリコッタは、料理同様、野菜との組み合わせも抜群。重ねるだけ、固めるだけ、のシンプルな工程で、広がりのあるデザート作りを楽しめます」