私がこの店を「分煙」にした理由。 ――人気店主が語る「分煙」ホスピタリティ―― <番外編>店舗デザイン・設計・施工会社の視点 「山翠舎」にきく、小さい店の分煙の工夫。
1970.01.01
photographs by Hide Urabe
店づくりの際に「分煙」はどのように検討され、実現されているのでしょうか?
特に制約の多い個人店は?飲食店を多く手掛けて、料理人からの信頼も厚い、店舗デザイン・設計・施工の株式会社山翠舎に聞いてみました。
「たばことどう向き合うかは時代の要請でもありますので、みなさん、真剣に考えていらっしゃいますね」と語るのは山翠舎社長の山上浩明さんだ。
「分煙」が安心をもたらす。
「東京のような都市部では家賃も高く、必然的に物件の規模が小さくなる。経営が成立する客席数と厨房スペースを確保したら、それだけで目一杯というケースも少なくありません。スペースを確保するのはなかなかむずかしいですね」
山翠舎が手掛けた中では、「ワイン割烹 神楽坂 宙山」が喫煙室を設けている。神戸たん熊北店出身の大野浩宣料理長による美しい料理が個室やカウンターで味わえ、接待需要も多い日本料理店である。
喫煙室は限られたスペースをやりくりした半畳ほどの空間だが、心置きなくたばこを吸える場があることで、接待相手が喫煙者であっても、安心してもてなせると好評だ。店にとっては、この部屋があることで逃さずに済むお客様は少なくない。
◎ワイン割烹 神楽坂 宙山
東京都新宿区神楽坂6-65 アミシュマン神楽坂2F
☎ 03-6265-0044
11:30~13:00LO(火-金は要予約)
17:30~22:30LO(日21:00 LO)
月曜休
東京メトロ神楽坂駅、都営線牛込神楽坂駅より徒歩5分
あの手この手の「分煙」対策。
大きなお金をかけずに実現できる分煙方法もある。大切なことは非喫煙エリアから喫煙エリアへ空気の流れを作ることだ。
山翠舎がデザイン・施工を請け負った高円寺の居酒屋「魚貝 ののぶ」は10坪弱の小体な居酒屋。古木が醸し出す雰囲気が情趣たっぷり。店主の土田宣隆さんは悩んだ挙句、禁煙にはしない道を選んだ。「喫煙されるお客様はまず吸えるかどうかを確認してから入店します。吸えないとなると、入らずにお帰りになることが多い。うちのような小さな店にとって、それは大きな痛手です」。
では、10坪弱という限られた空間で、吸う人、吸わない人をいかに共存させるか。土田さんはまず、強力な空気清浄機を設置した上で、小上がりを喫煙、カウンターが禁煙を基本とした。但し、状況次第でカウンターの中でも吸ってもよい席を設けた。「蚊取り線香を使って店内の煙の流れをチェックしたんですね。換気扇や扉の関係で店内にも風上・風下がある。小上がり満席時にはカウンターの風下に座っていただくんです」
◎魚貝 ののぶ
東京都杉並区高円寺南4-8-5 KYビル1F
☎ 03-4291-7875
17:00~23:30
水曜休
JR高円寺駅より徒歩3分
分煙の方法はいろいろ。できることから取り組もう。
相談を受ける立場の山上さんたちにとっても、分煙はますます向き合わねばならない課題と言える。「個々の事例に合わせて解決策を見出していきたいですね。補助金の制度(*1)が活用できると、分煙に取り組みやすい。そういった補助金の活用も積極的に提案しています」
(*1)分煙のための補助金の例
○厚生労働省「受動喫煙防止対策助成金制度」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000049868.html
受動喫煙防止対策を推進することが目的の、中小企業事業主を応援する制度。1 施設あたり最大200万円まで助成される。
○東京都「外国人旅行者の受入れに向けた宿泊・飲食施設の分煙環境整備補助金」
http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/tourism/kakusyu/syukuhaku/
宿泊・飲食施設事業者を応援する制度で、1 施設あたり最大3 0 0 万円までの補助がある。
◎株式会社山翠舎
東京都渋谷区広尾3-12-30 1F
☎ 03-3400-3230
長野本社
長野県長野市大字大豆島4349-10
☎ 026-222-2211
【実践編】 吸う人も吸わない人も快適な環境に。
ここまでご紹介してきたように、「分煙」か「禁煙」かは、現代の店づくりにおける重要なテーマのひとつです。「分煙」を体系的に知り、吸う人も吸わない人も共に快適に過ごせる環境づくりについて考えてみませんか?
◎分煙に関するお問い合わせ
日本たばこ産業株式会社