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FEATURE / MOVEMENT

日本 [埼玉] 日本の魅力 発見プロジェクト ~vol.1埼玉県 秩父地域~

「ちちぶ」、新たなる挑戦。-ちちぶ銘仙館-

2017.03.02

text by Rei Saionji / photographs by Hide Urabe

紀元前には初代の国造により伝えられていたとされる養蚕と機織りの技術が、平地が少なく稲作には適さなかった「ちちぶ」で暮らす人々の生活を支えていた。鎌倉時代には、関東の武士たちが旗指物(戦場で目印となるよう背中にさしていた旗)を丈夫な「ちちぶ」の絹で作るようになり、江戸時代には、幕府の衣冠束帯用に秩父絹が採用されるなど、秩父絹はその丈夫さから全国的に有名なトップブランドとなっていく。明治の世になると、高品質な秩父絹は、欧米、特にフランスのリオンを中心とする絹市場でその価値を認められ、ヨーロッパの絹織物の原料として輸出されるようになる。






他方で、輸出に適さないセカンドラインの絹糸を使って織られるようになったのが秩父銘仙である。当初は、縞模様が中心だった秩父銘仙は、明治後期に開発された、簡単に緯糸(よこいと)で仮止めされた経糸(たていと)の上にプリントし、仮り止めの緯糸をほぐして抜きながら織っていくという『ほぐし捺染(なっせん)』の技術によって変わっていく。その特徴は、リバーシブル。そして、セカンドラインという手軽さと、海外のデザインや、画家の卵が手がけたデザインを採用するなど、大胆でアヴァンギャルドな柄のプリントが評判となり、昭和初期には、東京のモダンガールや女学生など、当時のファッショニスタに愛好され、おしゃれで手頃な普段着の着物として全国的に大流行した。





驚くことに、玉虫色の光沢のある着物があるのも、秩父銘仙の特徴である。いわば『原宿系のkawaiiファッション』のはしりであった秩父銘仙は、着物を着る機会がめっきり減ってしまった今日、秩父銘仙の着物としてよりも、小物類が中心となっている。しかし、着物を新たな自己表現のファッションとして日常に取り入れようとする『原宿系』の若者も増えており、その動向が世界から注目される今、秩父銘仙の新たな伝統が作られていく予兆が感じられる。



ちちぶ銘仙館
埼玉県秩父市熊木町28-1   西武秩父駅から徒歩5分

アメリカ人建築家によって考案された大谷石積みの外装や昭和初期の面影が残る建物を利用してできた「ちちぶ銘仙館」では、秩父銘仙の製法や魅力を十分に知ることができる。体験コーナーも充実しており、実際に、型染め、高機(たかはた)を使った手織り体験、藍染を体験することができる。





※本プロジェクトは、経済産業省関東経済産業局が実施する「平成28年度地域とホテルコンシェルジュが連携した、新たなインバウンド富裕層獲得のための支援事業」と連携して、グランド ハイアット 東京 コンシェルジュ/明海大学ホスピタリティ・ツーリズム学部教授 阿部佳氏のアドバイスを得て実施しています。



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