標高差で飲み比べる!“山のワイン”アルト・アディジェの魅力
「ダ・オルモ」北村征博シェフ×「資生堂パーラー ザ・ハラジュク」本多康志さん
2022.07.07
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【PROMOTION】
text by Yumiko Ito / photographs by Atsushi Kondo
スイスとオーストリアと国境を接するアルプス山脈の南側、イタリア最北端のワイン産地であるアルト・アディジェ地方。ピエモンテやトスカーナとはまた違う、知る人ぞ知る高品質なワインの魅力をソムリエ、本多康志さんと、料理人「ダ・オルモ」の北村征博さんがナビゲート。山のワインを標高差で飲み比べ、暮らしに根付いたワインと料理の食べ合わせを紹介しながら、旅するようにアルト・アディジェワインの魅力を紐解きます。
目次
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東京・原宿「資生堂パーラー ザ・ハラジュク」店長兼ソムリエ 本多康志さん
1974年生まれ。調理師専門学校を卒業後、都内レストラン各店勤務を経て、2000年「資生堂パーラー」に入社。2001年「レストラン ファロ資生堂」の開業と同時にソムリエに就任。2009年「第3回 JET CUP イタリアワイン ベスト ソムリエ・コンクール」にて優勝。2017年にイタリアの最北端、アルト・アディジェ地方へ視察に訪れ、唯一無二のワイン産地に魅了される。
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東京・神谷町「ダ・オルモ」北村征博シェフ
1975年生まれ。広尾「ラ・ビスボッチャ」などを経て2000年に渡伊。ロンバルディア州(1年)、エミリア=ロマーニャ州(1年)、トレンティーノ=アルト・アディジェ州「シューネック(Schöneck)」で1年修業し、2003年帰国。都内2軒のシェフを経て2012年9月独立。もっとも感銘を受けたトレンティーノ=アルト・アディジェ州の料理を軸に、アラカルトとコースで郷土の味を伝える。
アルプス山脈の南向きバルコニー
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標高200~1000mに連なるブドウ畑。イタリアのワイン生産量におけるシェアは1%未満ながら、標高差と複雑な土壌に合わせて栽培するブドウは約20種にわたる。©IDM-Südtirol Wein- Tiberio Sorvillo
本多康志さん(以下:本多) 北村シェフはなぜ修業先にアルト・アディジェを選ばれたのですか?
北村征博シェフ(以下:北村) 僕がイタリアで修業していた20年前は、同じように修業している日本人がたくさんいたので、絶えず人と違うものを見たいと思っていたんです。
本多 僕も1度訪れたことがありますが、イタリアとはまったく文化圏が違いますよね。
北村 第一次世界大戦まではオーストリア領だったので、独特のアイデンティティが今もありますね。料理も豚の血を練り込んだタリアテッレとか、牛の脾臓をペーストにしてパンに挟んだ揚げ物とか、それまで見たことのないイタリアが体験できました。
本多 アルト・アディジェは平地が少なくて、国内でもっともブドウの栽培面積が狭いのですが、品種の数はいちばん多い。その理由が標高差で、地形による気候条件の違いがいかにワインの味に影響するかがとてもわかりやすいエリアなんです。
北村 そうなんですね。
本多 今日は標高の高い畑で造られるドイツ系の品種から徐々に下って、アルト・アディジェの土着品種の赤へ向かって飲み比べしていきましょう。
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ソムリエ本多さんセレクト! アルト・アディジェを体感する3本
DOC Alto Adige, Riesling, Aristos 2019/Cantina Valle Isarco(徳岡)
DOC Alto Adige Valle Isarco, Kerner 2020/Abbazia di Novacella(ヴィントナーズ)
DOC Alto Adige, Müller Thurgau 2020/Cantina Bolzano(モトックス)
*()内は輸入元、以下同
北村 最初はイサルコ渓谷ですね。僕はこの産地から東にいった町のレストランで修業していたので、とても懐かしいです。
本多 「シューネック」ですよね。僕も一度行ってみたいレストランです。この「カンティーナ・ヴァッレ・イサルコ」は協同組合で、リースリングの畑は標高600~800mで栽培されています。
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北村 味わいは、かなりスムーズですね。
本多 標高が高いと日照量が多いので熟度は高いのですが、すっきりとした酸の高さを生かして辛口に仕上げられています。
北村 協同組合と聞くと、安くて大量生産のワインを思い浮かべる人が多いと思うのですが、アルト・アディジェはそういうイメージとはずいぶん違いますよね。
本多 アルト・アディジェで生産されるワインの7割は13の協同組合が造っていて、よいブドウができれば高く買うというシステムがあるところも他と違うところだと思います。ワインも清潔感があって、きれいな造りという印象がありますね。
北村 ドイツ語が日常で、民族的にもゲルマン系なので、生真面目さが味に出ている気がします。
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1軒のブドウ農家が所有する畑は平均1haと小規模なため、昔から協同組合でのワイン造りが盛ん。
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ゲルマン気質とラテン気質を併せ持つ生産者によって、量より質を優先するワイン造りが行われている。
本多 ケルナーはレモンやグレープフルーツの柑橘系の香りに、軽い苦味も後に少し感じます。リースリングよりは柑橘系の果実味がストレートに出ますよね。
北村 確かに感じます。おいしいですね。
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本多 樽を使わず、ステンレスだけで醸造したワインでもバターとの相性がよく感じます。アルト・アディジェでは料理にビネガーやレモンはあまり使いませんか。
北村 レモンはあまり使いませんが、ビネガーはよく使います。油脂はバターが多くて、あとはヒマワリ油とグレープシード油。逆にオリーブ油をあまり使わないんです。
本多 白なので魚のカルパッチョでもいいのですが、火を入れた料理、たとえば、バターで焼いたムニエルのような料理にレモン代わりではないけれど、ケルナーを合わせるとすっきりしそうです。
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北村 現地では身の赤いマスを、薄めたワインビネガーでマリネして、白ワインとスパイスと香味野菜のだしで煮て、最後に温めたバターをかける料理があります。店ではヤマメで作っていますが、バターとビネガーと白ワインの酸味を合わせた料理はこの土地らしい味ですね。
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本多 ミュラー・トゥルガウは香りを嗅ぐと、白コショウっぽさとかウイキョウのような香りもあります。
北村 ハーブっぽさがすごくありますね。
本多 アルト・アディジェのハーブだと、シブレット系ですか?
北村 はい。あとチャービルですね。料理の仕上げに加えると、香りが引き締まって、アルト・アディジェらしい皿になります。
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年間300日が晴天。日照時間、降水量ともワイン造りに理想的な気候に恵まれる。
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風通しがよく、日中は地中海からの暖かい空気が運ばれ、夜は気温が下がる。©IDM Sudtirol-Alto Adige-Florian Andergassen
本多 ここまですべてドイツ系の品種でしたが、色はやや黄色みがかって、イタリアらしい熟度の高さがありました。日照量の多さがよくわかりますよね。
北村 酸も特徴的でした。完熟するまで待って、なおかつ酸が残るのはなぜですか。
本多 一つは雨が少なく日照量が多いこと。夏の昼はガルダ湖から暖かい風が運ばれ、盆地のように日中は35℃以上になることもあります。しかし夜はアルプスの冷たい空気で気温が下がる。その寒暖差が骨格のしっかりとしていながら、ふくよかさのあるワインが出来る要因ですね。
海の土壌をもつ山のワイン
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ソムリエ本多さんセレクト! アルト・アディジェを体感する5本
DOC Alto Adige, Pinot Bianco, Passion 2017/St.Pauls(モナカ)
DOC Alto Adige, Sauvignon, Sanct Valentin 2020/St.Michele Appiano(モンテ物産)
DOC Alto Adige, Gewürztraminer, Nussbaumer 2020/Tramin(フィラディス)
DOC Alto Adige, Schiava, “Sonntaler” 2018/Kurtatsch(VinoHayashi)
DOC Alto Adige, Pinot Nero, Mason 2017/Manincor(飯田)
本多 次は少し下って、標高300~500mに移ります。ピノ・ビアンコはアルト・アディジェを代表する大切な品種です。北村シェフも現地でよく飲みませんでしたか。
北村 仕事が終わると、毎晩、店のマネージャーに選んでもらった地元のワインを飲んでいたんですが、ピノ・ビアンコにはもっとサラッとした印象を持っていました。
本多 今日選んだのはリゼルバタイプなので、よりふくよかでリッチかもしれません。アルコールも14度と高めですが、酸が高いので、引き締まった感じがします。香りは熟したリンゴや洋梨のようですね。
北村 向こうで飲んでいたときに印象的だったのが、ワインに塩味(えんみ)を感じたことなんですよね。
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本多 アルト・アディジェは山のワインと言われますが、海底が隆起してできた土地なので、海の土壌なんですね。しかも大陸と大陸がぶつかった境目なので、標高やエリアによっていろんな土壌が入り組んでいる。地質の視点から飲んでも面白い産地なんです。
北村 酸の中に塩味が溶け込んでいる感じがあるから、少し何か食べたくなるんですよね。そういうときはスペックとかパンをつまんでいました。今日も用意したので、つまみながら進めましょう。
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本多 「サン・ミケーレ・アッピアーノ」のソーヴィニヨン・ブランは、20年以上前から日本にも入っています。色は淡くて、香りにシブレットのような青さと爽やかさがあります。
北村 瓶の形も独特な見た目で、僕もよく憶えています。
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本多 年によってアルコールが14.5度以上と高くなるときもあるのですが、酸味のポテンシャルが高くアルコール感とのバランスをとってくれます。
北村 このパンと一緒に飲むと、スパイスの香りがパーンと広がりました。
本多 クミンの香りとも相性がいいワインですね。
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本多 「トラミン」のゲヴュルツトラミナーは、マスカットの種を食べたときのような青っぽさがありながら、トロピカルフルーツのような暑い国の果物の香りやバラの香水のような華やかさもあります。
北村 香りのインパクトが強いですね。ワインだけでも十分楽しめるので、どんな料理に合わせたらいいのか、すぐには思いつかないなぁ。
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本多 熟度もあるので、ニョッキとかチーズを使ったものやフルーツのピッツァに合わせてもいいと思います。この間、ピクルスを多めに入れたタルタルソースを添えてエビフライと合わせたらとてもよく合いました。甘酸っぱいものと相性がいいと思います。
北村 チーズにジャム系を組み合わせたものも合いそうですね。
本多 スキアーヴァはアルト・アディジェの土着品種で4つくらいクローンがあります。これはスキアーヴァ・グリージャといって、スミレっぽさがありますね。
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北村 こういうタイプは大好きです。料理と合わせると存在感が発揮されるイタリアらしいワインです。
本多 アルコールは11~12度と低めでタンニンも軽いので、白を飲んでいる感覚とあまり変わらないですよね。コショウ系の香りやスモーク感もあります。
北村 ところでアルト・アディジェは昔、赤の産地でそれが白に移行したと聞いたのですが、気候が変わったからですか? それともこの土地には白が合うと思って植え替えたからでしょうか。
本多 どちらかといえば後者だと思います。アルト・アディジェは、南チロルと言われるようにオーストリア領のときは、国の中で最南の地域だったので、暖かい赤の産地と見られていたのですが、イタリアに入ったことで北の産地に逆転したんですね。
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北村 なるほど。
本多 19世紀の半ばには、フランスからシャルドネやソーヴィニヨン・ブランなどの外来種がすでに持ち込まれていたこともあり、世界レベルのワインが白で造れるのではないかと考えて、チャレンジしたのだと思います。
北村 そういう分析があった上で、白に転換したんですね。
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本多 自社畑を持つワインエステート「マニンコール」のピノ・ネロです。すごくきれいですね。鰹節じゃないけど、ちょっとスモーキーな感じもあります。
北村 余韻に残る感じが、心地よいですね。
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本多 昔はもっと色が抽出された、アルコール度数の高い濃いピノ・ネロが多かったのですが、いまは色も明るく、酸もとてもきれいです。仔牛のローストや軽い煮込みと合わせるとおいしそうです。
北村 現地では根セロリをピュレにして牛や鹿の肉と一緒によく食べるので、合うかもしれません。
イタリアの中の外国人、という意識
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ソムリエ本多さんセレクト! アルト・アディジェを体感する2本
DOC Alto Adige, Pinot Grigio, Porer 2017/Alois Lageder(ジェロボーム)
DOC Alto Adige, Lagrein, Rieder 2017/Castelfeder(パンタ・レイ)
本多 ここから標高200~300mに入ります。「アロイス・ラゲデール」もワインエステートで、自社畑はビオディナミだそうです。
北村 ピノ・グリージョはなぜ標高が低い畑に植えられるのですか。
本多 糖度が高くなりすぎるからです。温かいところを好む早熟な品種でフレッシュで爽やかな酸を残すため、ゆっくり成熟させる必要がないというのも理由です。
北村 確かに熟した感じもありますね。
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本多 ピノ・ビアンコに比べて酸はやわらかめですが、リッチさもあって親しみやすさもある。海外で人気の高い品種ですよね。このワイナリーはデメテール*の認証もとっています。
*ドイツのオーガニック認証機関
本多 赤のラグラインも土着品種です。スキアーヴァとは対象的にインクのような濃い赤で、野性味のあるベリー感が特徴です。スパイシーさもあるので、鹿肉が食べたくなります。
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北村 ラグラインはガツンと強いイメージがあったんですが、これはやわらかくて、思ったイメージと違いました。鹿なら煮込みより焼いたほうがしっくりきそうです。
本多 ラグラインは、赤ワインにすると酸もタンニンも強いワインになるので、昔はロゼ用の品種だったんです。日本にもロゼが入っていますが、すごくおいしいですよ。
北村 料理と合わせて飲んでみたいですね。
本多 標高とは関係ないのですが、スプマンテも1本飲んでみませんか。アルト・アディジェの酸が生きています。
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シャルドネ、ピノ・ネロ、ピノ・ビアンコから造られたアルト・アディジェ地方のスプマンテ。
DOC Alto Adige, Brut, Athesis 2018/ Kettmeir(フードライナー)
北村 酸がしっかりしていますね。ワインが全部出揃ったので、そろそろ料理と合わせてみましょうか。伝統料理の「カネデルリ・プレサーティ」です。パンと卵と野菜に香りのあるチーズを合わせたものを焼いてから蒸し上げて、最後に焦がしバターをかけた料理です。今日はゴルゴンゾーラとフォンティーナチーズで作りました。
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本多 懐かしさを感じる味ですね。付け合わせのクミンキャベツがまたいい。
北村 僕もイタリアで初めて食べたとき、地元のお好み焼きのチーズ玉みたいな懐かしさを感じたので、そう言っていただけると嬉しいです。
本多 ピノ・ビアンコやピノ・グリージョのリッチな感じも合いますが、スキアーヴァの素朴な日常感がいちばんしっくりきました。
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北村 先日、スタッフがアルト・アディジェをまわって、赤も土着品種だけでなくメルローやカベルネの外来種をなぜ造っているのか不思議がって帰ってきたのですが、今日、その理由が少しわかりました。
本多 アルト・アディジェは畑に標高差があることで、一つの県のなかに、暑い土地の品種から冷涼な土地の品種までそれぞれに適したブドウが育つ珍しい場所なんですね。もちろん、生産者の学びの姿勢やチャレンジ精神も大きいと思います。
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北村 アルト・アディジェの人は自分たちがどこか外国人のような感覚を持っていて、足りない部分を学ぼうとする謙虚さがベースにあるんですよね。「シューネック」のシェフを見ていても感じました。
本多 その姿勢がアルト・アディジェの多様なバリエーションに表れているのですね。
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「ダ・オルモ」のスパイス入りライ麦パンレシピ
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【材料】(直系約20cm×2個分)
ライ麦粉・・・200g
0粉・・・300g
牛乳・・・400ml
生イースト・・・20g
無塩バター・・・20g
塩・・・7g
砂糖・・・7g
フェンネルシード、クミンシード・・・各3つまみ
【作り方】
1 牛乳を人肌に温めて、生イーストと溶かしたバターを加えて混ぜ合わせる。
2 ボウルに残りの材料と①をあわせて手でこねる。こね上がりは少しやわらかい。
3 ボウルにラップをふんわりとかけ、18~20℃で15~16時間一次発酵させる。
4 生地を2分割して成形し、25~30℃で1時間ほど二次発酵させる。
5 200℃に予熱したオーブンで5分焼き、160℃に下げて15~20分焼く。
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食べる時はスライスしてオーブンで軽く焼くとスパイスの香りが立つ。
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◎ダ・オルモ
東京都港区虎ノ門5-3-9 1F
☎03-6432-4073
11:30~14:00LO 18:00~21:00LO
日曜、祝日、月・土曜昼休
http://www.da-olmo.com/
◎資生堂パーラー ザ・ハラジュク
東京都渋谷区神宮前1-14-30 8F
☎03-3475-1021
11:30~15:00LO 17:30~20:30LO
月曜休(祝日の場合は営業)
https://parlour.shiseido.co.jp/shoplist/theharajuku/
「アルプスのワイン アルト・アディジェ」キャンペーン
主催:アルト・アディジェワイン委員会(Sopexa Japon)
2022年5月27日(金)~7月31日(日)までの期間、関東・関西の60店舗の飲食店でアルト・アディジェワインをグラスで楽しめるフェアを開催。詳細はコチラから