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FEATURE / MOVEMENT

多彩な顔を持つシャブリの魅力

vol.2 もっと自由に!家飲みシャブリ

2019.10.04

text by Megumi Nishida / photographs by Hide Urabe

シャブリはすっきり辛口で……だけじゃないんです!
たとえば家飲みなら、きんぴら、から揚げ、すし、ステーキ、グラタン……。それぞれに合う1本が見つかります。4つのアペラシオンを手がかりに、いざシャブリ再発見の旅へ!





家飲みシャブリを指南いただいたのはこのお二人。
◎ COOK SPECIALIST 松田美智子さん
“醤油の代わりに梅干しを使って、シャブリとの相性を意識しました”


ホルトハウス房子氏に師事。1993年より「松田美智子料理教室」を主宰。美しく作りやすい料理レシピで評判。



◎ WINE SPECIALIST 鳥山由紀夫さん
“一般的にイメージするシャブリとは、かけ離れた味わいも多いですよ”


外苑前「アミニマ」オーナーソムリエ。乃木坂「レストラン・フゥ」、恵比寿「サリュー」を経て独立。





枠に囚われず、色んな組み合わせを試して

シャブリというと、酸がストレートでフレッシュな、いわゆる「すっきり辛口」というイメージがありますが、家飲みではどんな料理に合うのでしょうか。



シャルドネの単一品種から造られるシャブリは、ブルゴーニュの最北に位置。セラン川を挟んだ対岸に畑が広がり、4つのアペラシオンに分類される。



鳥山 実はシャブリは、アペラシオンや造り手によってスタイルにとても多様性があるワインなんです。柑橘系の酸がフレッシュなものから、蜜のように濃厚なタイプまで。ですから料理とのマッチングも無限大と言えるでしょう。日本では魚介類に合うと言われますが、現地では豚の加工品、ジャンボンペルシエやアンドゥイエットと合わせるのが定番。例えば広く知られる牡蠣に合わせるにしても、シャブリなら生牡蠣、リッチなプルミエ・クリュやグラン・クリュならグラタンに、と生産者から教わったことがあります。

なるほど、現地ではいろいろな楽しみ方をしているのですね。では日本の食卓ではどうでしょう。まずはプティ・シャブリからお願いします。

1.PETIT CHABLIS
最もカジュアルなアペラシオン。意欲的なワイン造りをする生産者も多い。



プティシャブリ × レンコンのきんぴら風
叩いた梅干しをゴマ油で香ばしく炒ってから、砂糖と白ワインで炒め煮に。油で炒めた香ばしさと梅由来の梅由来の柔らかさが、シャブリの持ち味と呼応する。



鳥山 プティ・シャブリは、シャブリとは土壌の異なる、標高の高い畑から造られます。このワインはレモンやオレンジなどの柑橘系フルーツを感じるフレッシュなタイプ。アペリティフとしてもいいですね。

松田 この爽やかさを活かしたくて、ゴマ油で炒って酸をやわらげた梅干しとレンコンを合わせたきんぴらを用意しました。このプティ・シャブリも風味づけにちょっと足して。

鳥山 ワインのフレッシュな酸と、梅の風味がよく合いますね!

松田 きんぴらは家庭料理の定番だから、招かれた人もほっとするでしょう? でも醤油ではなく梅干しを使うというところに、ワインとの相性を意識したおもてなし感を出してみました。

鳥山 シンプルなサラダとも合いそう。プティ・シャブリは、動物性のものはもちろん植物性の食材もおすすめです。味付けも出汁でしっかりではなく、調味料で軽快に。フルーツとも合うと思いますよ。

松田 このワインで桃のコンポートを作ってみたいわ。

次はもっとも広く飲まれているシャブリです。

2.CHABLIS
日本で最も親しまれるライン。広範囲に畑があり味わいも様々。



シャブリ × ヒラメの手毬寿司
塩で〆たヒラメの薄造りで、軽い酸の酢飯を茶巾に絞った。作り方も簡単でおもてなし向き。ワイン温度の上昇に合わせて、黄身酢を柚子胡椒に替えても面白い。



鳥山 広範囲に畑があるシャブリは味わいも様々。この造り手は、一般的に縦長のタンクで行う発酵を、横長のタンクを使ってワインと澱の接触を多くすることで、旨味のしっかりあるタイプに仕上げています。

松田 このシャブリは酸が穏やかで飲みやすかったので、青魚や鮪などの強い味わいの魚ではなく、やさしい味わいのヒラメを選びました。ポイントはまろやかな甘さの酢飯。酢がたちすぎると、このワインのやさしい酸とは合わないと思ったので。

鳥山 一点の曇りもないほどバッチリ合いますね! シャブリの産地は海から遠いけれど、大昔は海底だった場所なので、ワインと魚のミネラルに共通点がある。両者が合わさることで旨味の相乗効果も出ています。

松田 開けたワインの温度の変化に合わせて、爽やかでまろやかな黄身酢から、同じ酸味でもより複雑な風味の柚子胡椒に替えても面白いわね。こういう変化を楽しめるのも家飲みのいいところじゃないかしら。

ではプルミエ・クリュはいかがでしょうか。

③ CHABLIS PREMIER CRU
キンメリジャンの含有量が多い畑から造られる高級ライン。樽熟成をさせているものが多く、リッチな味わい。



シャブリ プルミエ・クリュ × 鶏のから揚げ
鶏モモ肉を、醤油、ニンニク、ショウガで軽く下味を付け、香ばしく唐揚げに。食欲をそそる香り、揚げもののオイリーなコクが、ボディ感のあるプルミエクリュとマッチ。



鳥山 シャブリの産地は、セラン川を中心にして畑が右岸と左岸に分かれています。このボーロワは左岸にある畑。開放感のある南向き斜面に位置しているので、味わいもおおらかでコクがあります。樽の風味ともうまく調和していますね。旨味とミネラル感がしっかり最後まで残ります。さすがはプルミエ・クリュの風格。

松田 このワインのしっかりしたコクはぜったい油に合う! と思って、から揚げにしました。

鳥山 から揚げのオイリーな深みをワインのコクが受け止めて、味わいがふわっと広がりますね。

松田 今回はお醤油とニンニクと白ワインに漬け込みましたが、酸の効いたワインだったらレモンと塩だけでシンプルに。もっと濃厚なワインだったら、麹に漬けて鶏肉の旨味を引き出してもいい。から揚 げとシャブリって、いろいろな組み合わせが楽しめそう。

鳥山 樽熟成による香ばしい風味は、脂の乗った焼きサバにも合いそう!

松田 〆サバとオニオンスライスのサラダもいいわね。

から揚げや〆サバ。従来のマリアージュの枠を超えた自由がありますね。

鳥山 大切なのは、ワインと料理のトーンを合わせること。シンプルで軽快なワインには、素材感を前面に出したシンプルな料理を。煮込みや鍋料理のように、素材や味を積み重ねていく複合的な構成の料理には、ワインも複雑さのあるものを。4つのアペラシオンとさまざまなスタイルのあるシャブリは、選べばどんな料理のパートナーにもなりますよ。

松田 家飲みだと、和洋の枠を超えるだけでなく、ワインや個人の好みに合わせて料理に微調整ができる。レモンを搾ったり、オリーブ油や、たまり醤油、味噌を添えるとか。それができるのが家飲みの楽しさであり自由なところだと思います。



recipe
レンコンのきんぴら風



材料(1皿分)
新レンコン 細めを2節(200g)
ゴマ油 大さじ1
梅干し(種を抜いて叩く) 小さじ1
砂糖 大さじ1
白ワイン 1/4カップ

作り方
レンコンは皮を剥いて一口大の乱切りにする。
鍋にゴマ油を熱し、梅干しを入れて中弱火で2分ほど炒め、酸味を飛ばすように炒める。
十分に香りが出たら、レンコンを加え、中火にして全体を和えるように炒める。
砂糖、白ワインの順に加え、全体に照りが出るまで炒める。



recipe
ヒラメの手毬寿司



材料(1皿分)
ヒラメ 1柵
塩 適量

米 2カップ
水 1と3/4カップ
酒 大さじ2
昆布 3㎝角
すし酢(米酢1/2カップ、塩小さじ2、三温糖大さじ2)をよく混ぜ合わせる。

黄身酢(厚手の小鍋に卵黄3個、米酢大さじ2、みりん大さじ2を入れてごく弱火にかけ、ヘラでかき混ぜながらねっとりするまで炊き上げる)適量を上にあしらう。

作り方
ヒラメは薄く削ぎ切りにしては表面に薄く塩をしてしばらく冷蔵庫で置く。
研いだ米を10分浸水させ、15分水切りをして、分量の水、酒、昆布を加えて硬めに炊き上げる。
が炊きたてで熱いうちに飯台に小山に盛り、すし酢を加えてしゃもじで切るように広げながら混ぜながら冷ます。
の水気を抑え、縦半分に切り、2枚にする。
ラップにのヒラメを2枚ならべ、黄身酢を小さじ1杯だけのせ、その上にのすし飯をのせてラップで茶巾のように絞る。
ラップから出し、仕上げに黄身酢を中央に天に盛る。



recipe
鶏のから揚げ



材料(1皿分)
鶏モモ肉(大) 1枚
A:醤油、白ワイン 各大さじ2・ニンニク(すりおろす) 小さじ1/2
片栗粉 適量
サラダ油 適量

作り方
鶏モモ肉は皮と余分な脂を除き、繊維に沿って縦に下包丁を入れてから大きめの一口大に切る。
をボウルで20分ほど、しばらく馴染ませる。
水気を15分片栗粉をたっぷり付けてよくはたいて、中温のサラダ油で5~10分ほど揚げる。




◎ 松田美智子オフィシャルサイト
www.m-cooking.com/


◎ アミニマ
東京都渋谷区神宮前2-5-6-1F
☎ 04-2846
12:00~14:00LO(土曜のみ)、17:00~22:30LO
日曜休 東京メトロ外苑前駅より徒歩6分
https://www.aminima.jp/



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